Project/Area Number |
22K00401
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
大野 美砂 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (30337711)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | ナサニエル・ホーソーン / ピューリタン / 『七破風の屋敷』 / 『おじいさんの椅子の全歴史』 / 『アフリカ巡航者の日誌』 / アトランティック・ヒストリー / 「やさしい少年」 / クエーカー / 「ロジャ・マルヴィンの埋葬」 / 大西洋 / アメリカ植民地 / ネットワーク |
Outline of Research at the Start |
本研究は、歴史や宗教史の分野で進められてきた、環大西洋の視座からのピューリタニズム研究の成果を、17世紀アメリカ植民地を舞台にしたホーソーンの作品の分析に応用する試みである。近年のピューリタニズム研究は大西洋横断的な視座を入れることで、17世紀ピューリタンが大西洋の両岸で構築したネットワークの存在など、伝統的なアメリカ中心の研究が見落としてきた様々な点を明らかにしてきた。近年のピューリタニズム研究を生かしながらホーソーンが描いたアメリカ植民地を再検討することで、従来の研究が目を向けなかった側面を解明し、ホーソーンとアメリカ的なイデオロギーの関係を再考する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年5月には、論集『ロマンスの倫理と語り――いまホーソーンを読む理由』に収録された論文「『七破風の屋敷』における中産階級家族の形成と労働者/奴隷の表象」が出版された。本論文では、初期植民地の時代からニューイングランドで暮らしてきた古いピューリタンの一族を描いた作品を分析の対象にして、ピューリタンの家族観やジェンダー、それらがその後のアメリカの中産階級の形成に及ぼした影響を論じた。また、2022年度の終わり頃から、中央大学の髙尾直知先生と京都産業大学の中西佳世子先生とともに、ホーソーンが子ども向けにニューイングランドの歴史を語る作品である『おじいさんの椅子の全歴史』を全訳し、注をつけて出版する作業を始めた。2023年度末までに、翻訳のかなりの部分が完成しており、2024年度には翻訳文を見直しながら、注や解説を完成させ、出版社に原稿を提出できる段階まで進める予定である。2023年8月に開催されたエコクリティシズム研究学会大会シンポジウム、2024年3月に開催された日本ナサニエル・ホーソーン協会東京支部例会では、ホーソーンが編集した『アフリカ巡航者の日誌』に関する口頭発表をした。これらの発表では、15世紀末以降の大西洋において、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカを結ぶ巨大な商業ネットワークがつくられ、大西洋が統合されたひとつの空間になっていったことを明らかにした、アトランティック・ヒストリーの研究の成果を『アフリカ巡航者の日誌』の解釈に援用した。これらの発表の内容をもとにした論文を2024年度中に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度には、論文執筆や翻訳、研究発表をとおして、大西洋におけるピューリタンの活動に関する資料を集め、ホーソーンが17世紀のピューリタンについて描いた作品のいくつかを分析することができた。『七破風の屋敷』を分析した論文執筆では、17世紀アメリカのピューリタン植民地の歴史や人びとの生活、家族観、ジェンダーの問題について多くの先行研究や歴史資料を読み、ホーソーンが作品でピューリタンの家族をどう描いているかを明らかにすることができた。また、『おじいさんの椅子の全歴史』の翻訳文を作成する過程で得た情報や共同翻訳者とのディスカッションの中で考察した内容は、本研究にとってひじょうに有益なものになった。本作品は、17世紀はじめにアメリカへ渡ったピューリタンの歴史から話が始まるが、ニューイングランド植民地、特にそこでの商業活動が、中南米やアフリカを含む大西洋のネットワークの中でおこなわれたことを示す場面があり、ホーソーンが作家活動の早い段階から中南米やアフリカを含めた環大西洋の視点をもっており、ニューイングランドのピューリタンたちの商業活動を環大西洋のネットワークの中で捉えていたことがわかった。2回の口頭発表で分析の対象にした『アフリカ巡航者の日誌』は、特にピューリタンを描いた作品ではないが、研究の過程で知ったアトランティック・ヒストリーの研究は、本研究を進めていくうえでひじょうに有益なものであり、アトランティック・ヒストリーの研究者の業績から、重要な先行研究をいくつか見つけることができた。2024年度には、それらの先行研究を精査していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度にはまず、2022年度の終わり頃から続けている、『おじいさんの椅子の全歴史』の翻訳を完成させ、注や解説を付して出版する準備をしたいと考えている。また、これまでに『おじいさんの椅子の全歴史』や『アフリカ巡航者の日誌』を翻訳したり論じたりする中で得た情報や考察した内容を生かして、ピューリタン植民地を舞台にしたホーソーンの短編小説や『緋文字』を分析したい。ピューリタンの活動には複雑な背景があり、先行研究が多数あるものの、それらを理解するのは容易ではないが、2024年度も引き続き、大西洋世界におけるピューリタンの活動や交易、ネットワークなどに関する資料を集め、理解を深めていきたい。2024年10月に開催される日本アメリカ文学会全国大会で口頭発表をすることが決まっているので、そこでそれまでの研究の成果を発表する予定である。また、最新の研究動向を知り、ほかの研究者と情報の交換をするため、6月の日本ナサニエル・ホーソーン協会全国大会、8月のエコクリティシズム研究学会大会、1年に数回開催される日本ナサニエル・ホーソーン協会東京支部例会、関西支部例会などにも出席する予定である。
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