九州方言音韻現象における方言形成と方言崩壊の非対称性に関する研究
Project/Area Number |
22K00588
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02070:Japanese linguistics-related
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
有元 光彦 山口大学, 国際総合科学部, 教授 (90232074)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
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Keywords | 九州方言 / 形態音韻現象 / 動詞テ形 / 動詞タ形 / 方言形成 / 方言崩壊 / 音韻現象 / 非対称性 |
Outline of Research at the Start |
九州方言には,例えば「コッキタ」(買ってきた)のように,動詞テ形において,「テ」の部分が促音(あるいは撥音)で生起するという現象が観察される。一方,動詞タ形においても,「コータ」(買った)のようにウ音便が観察される。このように,テ形・タ形いずれにおいても,ある種の音便現象のようなものが見られるが,地域によっては,一方にしか音便現象が見られない場合がある。すなわち,「コータ」はあるが,「コッキタ」はないという地域も存在するのである。また,動詞の種類による違いもある。 以上から分かるように,動詞テ形とタ形に生起する音便現象はパラレルではないのである。この非対称性を解明することが本研究の目的である。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度(令和5年度)は,昨年度と同様,(1)方言データの収集,(2)方言形成・方言崩壊プロセスの理論化,という2点を計画していた。 まず,(1)に関しては,宮崎県北部の日向市,及び大分県南部の佐伯市のフィールドワークを実施した。これらの地域の調査では,従来の調査票を使用し,動詞テ形・タ形・否定形を中心に方言データを収集した。 次に,(2)に関しては,(1)で収集した2地点の方言データを文字化・分析した。その結果,動詞テ形において非常に興味深い分布が見られた。この分布については,さらに詳細な分析が必要である。なお,これらの方言データはデータベース化が完了している。 一方,いわゆるテ形音韻現象において,理論的に新たな方言タイプが発見された。それは,長崎県対馬・壱岐方言の動詞テ形における,「方言タイプPA#2」と呼んでいるものである。従来のフィールドワークで得られた各地域の方言タイプは記号化して,方言地図化しているが,この方言タイプは類似したものが地理的に近隣地域にも見られることが分かっている。このことからも,確定はしていないが,この方言タイプの存在の可能性があることが予測できる。言うまでもなく,この方言タイプの発見は,方言形成や方言崩壊プロセスの理論化にとって重要な貢献になると考えられる。この方言データや分析については,論文「方言タイプPA#2の発見?―長崎県対馬・壱岐方言の動詞テ形における形態音韻現象―」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度(令和5年度)の研究の目的は,(1)方言データの収集,(2)方言形成・方言崩壊プロセスの理論化,という2点であったが,特に(1)においてやや遅れが見られる。 昨年度までは新型コロナウィルス感染症蔓延のためフィールドワークを控えていたが,今年度から再開した。しかし,本研究の調査対象者は高齢者であるため,以前のようには調査ができていない。調査地域の選択や調査対象者の依頼に関しては,その地域の教育委員会等に依頼することもあり,慎重にならざるを得ない。現時点では,状況を考慮しつつ,少しずつフィールドワークを始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては,基本的に2023年度(令和5年度)と同様に,(1)方言データの収集,(2)方言形成・方言崩壊プロセスの理論化,という2点を推進していく。 2024年度(令和6年度)は,特に(1)方言データの収集に力を入れる。対象とする地域は,未調査地域である大分県北部及び長崎県北部である。これらの地域の調査を含め,フィールドワークは2025年(令和7年度)前半まで実施する予定である。 (2)に関しては,方言データのデータベース化をはじめとして,動詞テ形における形態音韻現象の記述を継続していく。これらの分析結果の蓄積に基づき,2025年度(令和7年度)には,方言形成・方言崩壊プロセスの全体像を解明する。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)