Project/Area Number |
22K00856
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
志村 佳名子 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (00759665)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 除目 / 三条西家 / 儀式書 / 故実 / 宮廷儀礼 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、日本の古代・中世に行われた官職の任命儀礼である除目の儀式内容とその作法を記す除目書の形成過程の検討から、除目儀が成立・発展した古代~中世における朝廷の政治構造の解明を目的とする。除目は専ら年官などの公家の経済的特権の側面から論じられてきたが、その儀式の実態の考察は不十分である。そこで本研究では、近年高い学術的価値が見出された三条西家の除目書をもとに、研究に有意な除目史料の整備を図り、九条家本『春除目抄』を中心とする摂関家の除目書の相承関係から、古代~中世にかけての除目儀・除目書の形成過程を明確にする。さらに、除目儀を主宰する王権・摂関家の人事権をめぐる政治構造と政務の実態を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①古代・中世の重要な宮廷儀礼の一つである除目儀の実態を分析し、②摂関家が相承する除目書と除目故実の形成過程を考察することによって、③除目儀が形成・発展した古代~中世移行期における政治構造を具体的に解明することである。 2023年度は、上記の②について、三条西家旧蔵の除目書『無外題春除目』と関係すると思われる国文学研究資料館所蔵『除目抄 下』の調査と翻刻を進めた。しかしながら、『除目抄 下』は上巻が失われ、他に有益な手掛かりとなる情報が少なく、その書誌的考察が困難なことが判明し、全容の解明には相応の時間を要すると思われる。そこで、それとは異なる視点から考察を行うこととし、中世における除目作法の総合的な故実書である『魚魯愚鈔』『魚魯愚別録』の形成(編纂)過程に考察の軸を移して研究を進めることとした。具体的には、洞院公賢撰『魚魯愚鈔』に引用される摂関家/非摂関家の除目書の内容の対比を行った。これにより、古代~中世の除目書の形成過程について、大まかな見通しを得ることができた。 また上記①に関して、除目作法と除目故実に関しての考察を行った。摂関期から院政期頃の貴族社会の言説や談話を収録した西尾市岩瀬文庫所蔵『言談抄』には、除目の竟日(最終日)に除目の責任者である執筆が、宮中の内記所に「魚類」を給うという故実が描かれており、これは実際に十~十一世紀の除目で行われていた次第であったことを確認した。この故実は『魚魯愚別録』にも収載されており、小野宮流に淵源持つ故実であるものの、その後ながく語り継がれた故実であり、十世紀以来の除目故実の継承を考える上で重要な示唆となるものと考えられる。このことについて、論文にまとめて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、国文学研究資料館所蔵の三条西家旧蔵の除目関係史料の調査と考察に困難が生じたため、考察対象となる史料の方針を変更することとなった。しかし、『魚魯愚鈔』『魚魯愚別録』の本文テキストを作成するなかで、除目書・除目故実の形成過程という点に関しては当初目指していた方向性で研究を継続できると思われる。また、除目儀と除目故実の実態の分析という点について、論文にして発表することができたため、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度までの成果をふまえ、『魚魯愚鈔』『魚魯愚別録』に継承される摂関家/非摂関家の除目書の様態をさらに明確にするとともに、特徴的な除目次第に着目し、平安期の除目儀の実態の復元に注力したいと考える。 また、2022~2023年度にかけて、本研究と密接に関連する共同研究(2022年度東京大学史料編纂所一般共同研究「蒐集デジタル画像を活用した「魚魯愚鈔」の情報資源化と除目研究の基盤形成」/2023年度東京大学史料編纂所一般共同研究「蒐集デジタル画像を用いた『魚魯愚鈔』の情報資源化及び平安・鎌倉期の除目書の総合的研究」)を行った。この成果と本研究とを有機的に結び付け、古代~中世の除目研究の基盤をより確かなものとしていきたい。
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