14~15世紀の「倭寇」の実態および「倭寇」問題生成のメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
22K00897
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
中村 翼 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (70748970)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 倭寇 / 海域アジア / 対馬 / 琉球 / 高麗 / 海禁 / 港市 / 海賊 / 中世日本 / 高麗・朝鮮 / 琉球王国 / 東アジア |
Outline of Research at the Start |
本研究は、14・15世紀を主な対象時期として、日本・朝鮮・中国・琉球の各地で活動した「倭寇」の実態を追究することを第一の課題とし、その手段として「倭寇」の史料上の痕跡を視覚化できるツールの作成を試みる。あわせて、その際に収集した史料に基づき、「倭寇」(及びその母体となりうる人々)が東アジア海域交流において、いかなる役割を果たしていたのかを考察する。 また本研究では、「倭寇」を共通の敵とみなした中国・朝鮮・日本の国家・政治権力それぞれの戦略・思惑を分析し、それらの差異と相互の連関を意識する。そして「倭寇」が問題化するメカニズムを政治的・具体的に解き明かすことを、第二の課題とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、本研究の基礎となる史料の収集・読解につとめた。 史料用語の「倭寇」は、主として朝鮮・中国に所見するため、『高麗史』『高麗史節要』『朝鮮王朝実録』及び『明実録』を中心に、14-15世紀初頭の「倭寇」に関する記事を収集・整理した。得られた件数自体は先行研究と齟齬があるが、これはカウント方法の違いによるものと考えるため、たちいった考察は来年度以降にまわし、ひとまずは事例の抽出につとめた。 日本史料に関しては、まず荒木和憲(代表)『中世日本東アジア交流史関係史料集成(稿)』を通覧し、全体状況の確認を行った。その上で、14-15世紀の「倭寇」が主として対馬や北部九州の人々と密接に関わっていることは同時代の日本・朝鮮・中国の政権の共通した見解である。そのため、対馬を対象に当該地域の人々の実態を探ることを目指した。しかし、対馬関係史料は『鎌倉遺文』『南北朝遺文』『長崎県史』史料編をはじめとする資料集に翻刻が掲載されているものの、全体を網羅したものではなく、ごく限られた研究者を除けば、その利用は限定的であった。そこで2022年度は、基礎史料収集の一環として、すでに翻刻がなされている史料にくわえ、新たに長崎歴史文化博物館「対馬の古文書」、国士舘大学・東京大学史料編纂所所蔵「対馬古文書」の調査・収取を行い、平安時代から16世紀初頭(永正年間)までを主対象に、それらの翻刻を進めている(ただし、権利関係の問題もあり、現時点では公開する予定がない)。 この他、「倭寇」と密接関わる問題として、「海賊」及びその統制に関する理論的考察を進めるべく、「海賊」研究の蓄積が豊富な近世の環大西洋世界の状況の理解につとめるとともに、最新の研究成果によりつつ、中近世の東アジア・東南アジア・インド洋世界における港市・交易者と国家・王権の関係性に関する比較史的考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、新型コロナ感染症対策などの都合もあり、長期にわたる調査旅行は見送った(国内・海外とも)。しかしながら、長崎歴史文化博物館や国士舘大学における複数回の調査を通じて対馬関係の資料を収集し、自身の研究の空白を着実に埋めることができた。また、理論面でも港市と権力の関係性に関して、しばしば説かれる〈東アジアでは、海域に対する政権・権力の介入が強い〉という命題につき、その再検討を通じ、他海域に関する研究状況を知り、自身の認識を見直すことができた点で少なくない収穫があった。ただし、成果の公表にはいたらず、来年度以降に持ち越さざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、前年度に引き続き、対馬関係史料の収集とともに『朝鮮王朝実録』をはじめとする朝鮮史資料、ならびに明朝後期に編纂された史資料にあらわれる14-16世紀初頭の「倭寇」関係記事の収集・整理を行う。 対馬史料の収集に関しては、長崎歴史文化博物館所蔵「対馬の古文書」及び国士舘大学・東京大学所蔵「対馬古文書」を収集に目処をつけることを目指し、また長崎県対馬歴史研究センターでの調査を複数回実施する予定である。なお、対馬での文献調査を実施する際には、現地踏査もあわせて実施することとする。 朝鮮・中国史料に関しては、まずは事例抽出の充実を目指すが、とくに中国史料に関しては、資料集の編纂意図を考慮する必要があるため、とくにその点を配慮しながら進めたい。 また中世日本をとりまく海域交流の担い手への認識を深めるため、貿易船の規模や航路を念頭におきつつ、その乗組員となる商人・水夫の存在形態を追究する。史料上の限界は否めないが、類似性が指摘される中国(宋元明清)の実態や、一定の研究蓄積がある環大西洋世界の状況を参考に理論的な補強を行いたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)