Project/Area Number |
22K00899
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
本多 博之 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (30268669)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 厳島神社 / 町衆 / 大内氏 / 陶氏 / 毛利氏 / 南京銭 / 銀 / 棚守房顕 / 厳島 / 大願寺 / 棚守家 |
Outline of Research at the Start |
戦国・豊臣期の厳島社の社領経営について検討し、単に経済上の問題だけでなく、いわゆる荘園制から町村制へ移行する過程、さらには領主厳島社や、相論裁定をおこなう公権力としての大名権力の判断・意識についても解明できる可能性を持つ。本研究では、戦国期から豊臣期にかけての豊富な厳島関係史料を分析することで、中近世移行期の大名権力や国人領主、そして郷村住民など多様な階層の人々の意識や行動を探る。また、厳島社の財政構造を分析することにより、厳島社を取り巻く市場構造や貨幣流通の実態に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
当面の目標であった中近世移行期の安芸厳島社関係の資料のうち、活字資料はほぼ収集し、編年に整理した。また、活字以外の古文書資料も予定通り集まってきており、山口県文書館など県外の歴史資料保存機関における史料調査が残る作業となった。 令和5年度は、4年度ほどではなかったものの、新型コロナウィルス感染予防のため予定していた出張を自粛・延期したほか、本務も多忙であったため、出張調査が計画通りに実施できず、新しい史料の入手が困難であった。その結果、これまで蓄積している史料の分析・再検討を主な作業としておこなったが、それによって、戦国・豊臣政権期の厳島社領の分布や性格の違いについて確認できた。すなわち、厳島社領は社領化した時期や地域によってその経営内容が異なり、担当者の性格にも違いが見られた。特に、出雲国朝酌(あさくみ)は山陰地方の唯一の厳島社領として貴重な事例であるが、年貢輸送を厳島町衆が担っていることなど、新たな知見を得ることができた。 そしてそれらをふまえ、中近世移行期の安芸厳島(社)について、藤原神主家から大内氏、陶氏、そして毛利氏へと続く領主・領国主の変遷と、厳島門前町と町衆の動向について、「海賊」村上氏との関係にも触れながら瀬戸内海西部の物流と、その構造的展開を明らかにした「中近世移行期の厳島門前町と町衆」と題する論文を執筆した。 なお、令和6年度は研究の最終年度なので、5年度同様、大学院生の協力を得ながら、収集した史料のデータベース作成に力を注ぎたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、4年度の史料調査を継続して実施し、必要史料については写真複製の形で入手した。そして戦国・豊臣政権期に物流を担った「人」やその経済活動に関するいくつかの事例が確認できたので、多様な商人と生業としての多面性について改めて分析し、同様の事例について資料の再検討をおこなった。 その結果、領国を越えて活動する商人やその経済活動の実態について明らかにできた。とりわけ、安芸国佐西郡に盤踞する糸賀氏・新里氏・山本氏ら厳島神主家の一族や家臣である「神領衆」の性格や動向について整理し、その重要性について再認識した。厳島神主家と安芸武田氏が相次いで滅亡した天文10年4・5月は、安芸国西南部が一時期権力の空白地帯となった画期であり、当該期における大内氏・陶氏・毛利氏の動向分析に必要な関係資料はほぼ収集したが十分ではないので、令和6年度の上半期のうちに整備したい。 また、令和5年度の下半期には、首都経済圏の歴史的展開を探るため、大坂本願寺勢力の実態や応仁・文明の乱後の京都再興の状況を確認するとともに、豊臣政権期に登場した京都・大坂を二つの核とする新たな求心的市場構造について理解するため、京・大坂における大規模普請事業の史料分析をおこない、政権主導の輸送の実態解明を試みた。そして、普請に必要な資材の搬入の具体的内容を確認した。 こうした点をふまえるならば、量的には史料分析が進まなかったものの、新たな方向性を見出した点で、予定通りの進み具合と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、研究の最終年度になるので、上半期までは基本的に令和5年度までの研究方法を引き続き実施するとともに、山口県文書館など史料保存機関への採訪調査も再開し、それを継続的に実施する。調査対象は主に「毛利家文庫」だが、毛利博物館所蔵文書など写真版(複製資料)があるものについては、文書館であわせて収集する。 内容的には、豊臣政権期の中央と地方の経済的関係を確認するために、京・大坂と各地の城下町の人的・経済的なつながりや交流、「モノ」の流れ、中世経済拠点の消滅、そして藩領域の成立によって新たに生まれた物流について、分析を進める予定である。 また、中近世移行期の貨幣動向も研究計画の重要な課題項目の一つなので、慶長・元和年間における南京銭流通の実態や銀の通貨としての通用状況についても、関連資料のさらなる発掘に努めたい。 次いで下半期には、各方面で進めていた作業の調整をはかりながら、研究総括に向けた作業に着手する。そして、中近世移行期における西国の物流の史的展開(荘園制市場構造から幕藩制市場構造への段階的推移)について、得られた成果の取りまとめをおこない、学会や公開講座、あるいは論文等において成果報告をおこないたい。 なお、令和4年度および5年度の2年間は必要な書籍や史料集を揃えることができなかったので、今後も研究書・史料集、そして自治体史(通史編・史料編)を購入して研究室の学問的環境を整えたい。当面、令和6年度には、収集史料の分析と各種データベースを作成する予定である。
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