マレー半島における民族の枠組みの形成:マレー民族をめぐる相互作用の研究
Project/Area Number |
22K00916
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
|
Research Institution | Meio University |
Principal Investigator |
坪井 祐司 名桜大学, 国際学部, 教授 (70565796)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
|
Keywords | マレーシア / エスニシティ / マレー語 |
Outline of Research at the Start |
イギリス領マラヤ(現在の半島部マレーシア)の多民族社会におけるマレー民族概念の形成過程について、マレー語定期刊行物のテキスト分析を通じて明らかにする。 マレー語の新聞・雑誌をとりあげ、他媒体との間の相互参照のあり方やテキストの連関を分析する。具体的には、①複数のマレー語新聞・雑誌におけるイスラム主義と民族主義の言説の比較、②マレー語紙と非マレー人の意見を代表する英語紙との論争の分析、③イギリス植民地政府の対マレー人政策に関するマレー語新聞・雑誌と行政史料を含む他の媒体の言説の比較を行う。 これを通じて、マレー民族という概念がさまざまな「他者」との相互作用により形成される過程を明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年8月にマレーシアで行われた国際学会(第13回マレーシア研究会議、MSC13)にて、英語による発表を行った。そこでは、マレー民族主義とイスラム主義との関係という視角から、1950、60年代にシンガポールで発行されたイスラム主義のマレー語月刊誌『カラム』をとりあげ、脱植民地化における国家構想のなかで「イスラム国家」という概念がどのようにとらえられていたかを分析した。同誌のイスラム国家構想は、既存の植民地行政機構をイスラムの立場から再解釈したものであり、民族主義者と近代主義的な価値観を共有しつつ論争を行っていたことを示した。発表をまとめた論文は、会議のEプロシーディングに収録され、電子公開されている。 また、マレー・ナショナリズムにおける近代性とイスラムとの関係性という視角から、19世紀のイギリス人ラッフルズの通訳兼協力者を務めたアブドゥッラー・ビン・アブドゥルカディールの著作『アブドゥッラー物語』の分析を行い、研究分担者として参加した共同研究の成果論集にて論文を執筆した。アブドゥッラーの翻訳という作業に注目し、イギリスの植民地近代性とイスラムの双方の価値観に触れた彼がそれをマレー語に翻訳することによって価値観を現地化させたことを示した。そして、民族という概念が現地社会に受容・共有されたのも翻訳・現地化の過程の一部であると論じた。 一般向けの研究成果の発表として、慶應義塾大学言語文化研究所の連続講演「東南アジアの文字」におけるアラビア系文字の回を担当した。そこでは、マレー半島地域におけるジャウィの歴史的発展と植民地時代におけるジャウィ出版活動の隆盛について紹介した。マレーシアの紹介書である『マレーシアを知る58章』では、イギリス領の植民地期の歴史に関する章を分担執筆し、多民族社会やマレー人優位の行政機構など、現代のマレーシア社会を規定する条件が整えられたことを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、英領マラヤにおけるマレー民族という概念の成立過程をさまざまな勢力との相互作用のなかで明らかにしようとするものであり、当初の構想として、①ムスリムコミュニティ内部の相互作用、②非マレー人との相互作用、③イギリスの植民地行政との相互作用を想定していた。 そのなかで、①については、2022から2023年度にかけての研究活動により、イスラム主義と民族主義が相互に影響し合いながら現在のマレー民族概念が形成されていく過程の一部を明らかにできた。前述の通り、2023年の国際学会発表および論文において、両者が近代主義という土台を共有しながら論争を行ったことを示した。また、③については、2023年に発表したアブドゥッラーに関する論文から、マレー民族主義の萌芽期において、イギリスがもたらした近代性がマラヤ社会の文脈で翻訳、再解釈される過程を示した。その後のマレー民族主義とイギリスとの関係については、今後の課題である。②については、1930年代に発行された新聞『マジュリス』の分析を通じて、マレー語紙の民族主義的主張には華人などの他民族の動向が常に織り込まれていたことを確認しており、今後研究成果として発表していく予定である。 当初の年度ごとの計画からみると未達成の部分はあるものの、全体として順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在はこれまでの活動で収集した資料の分析を進めており、それをもとに8月にアジア研究の国際学会における発表を予定している。1930年代における『マジュリス』紙において民族主義とイスラムとが交わる論点として、女性の地位をめぐる論争について分析を行う予定である。 また、当初の計画にてらして、海外での資料収集活動について十分に行えていない部分があるため、2024年度にはマレーシアおよびイギリスに出張し、資料収集を行ったうえでそれらの分析・研究を進めていく予定である。
|
Report
(2 results)
Research Products
(10 results)