Project/Area Number |
22K00944
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
杵淵 文夫 東北学院大学, 文学部, 准教授 (30637278)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | オーストリア / 中欧 / 貿易 / 通商政策 / 経済圏 / ドイツ / ナショナリズム / 通商 / 広域経済圏 / 世紀転換期 |
Outline of Research at the Start |
第一次大戦中の独墺同盟側では「中欧(Mitteleuropa)」が戦争の目的として支持を集めた。「中欧」は中欧諸国の広域経済圏構想の側面を持ち、また大戦勃発と密接に関わる政治思想と考えられている。 しかし、土台が何もないところで突如そのような思想が支持を得られるとは考えにくい。何らかの前形態の「中欧」があったのではないか、または大戦以前の「中欧」は果たしてどうであったのか、というのが本研究の問いである。 本研究は「中欧」の広域経済圏の側面に着目する。19世紀末から20世紀初めに経済諸団体が協力して推進した国際的な経済的接近の取り組みを検討し、大戦以前の「中欧」のありようを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度も研究計画に沿って19世紀から20世紀への転換期における中欧の広域経済圏構想の展開を明らかにするべく、その構想の推進に関わった工業と農業の利害を分析した。当該年度では「中欧経済協会」研究に着手する計画であったが、時系列に合わせて研究を進めるのが妥当と判断し、検討の順番をオーストリア工業と入れ替えた。 資料収集に関しては、オーストリアの資料館で一次史料の調査を行い、オーストリアの農業団体と工業団体の刊行物等を収集した。また、国内では名古屋大学で調査を行い「中欧経済協会」の関連史料を入手した。 工業については、「工業家クラブ」を対象に通商条約の更新問題をめぐる議論と中欧構想の展開過程を追究した。その結果、同団体所属の繊維・鉄鋼産業利害が貿易相手として重視するヨーロッパ諸国という意味合いで、工業利害の求める中欧の範囲や通商関係を明らかにできた。この研究成果は、2023年度東北史学会大会において発表した。 農業については、世紀転換期に農業利害を中心にたびたび主張されていた構想「中欧保護協定」の展開を追究した。中心的な提唱者のホーエンブルーム(Alfred von Hohenblum)や1898年に設立されたオーストリア農業の全国的団体「農林業利害擁護総本部」の活動を対象に分析を進めた。その構想が1896年の「ブダペスト国際農業会議」で初めて提唱されてから1901年のオーストリア農工業の合同会議「アメリカ集会」で決議されるまで、「中欧保護協定」をめぐる取り組みとそれが支持を集めていく経過をたどった。その研究成果は、2024年度日本西洋史学会大会において発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、研究対象の順番を一部入れ替えた結果、世紀転換期オーストリア工業と農業それぞれについて対照させつつ、中欧構想の展開を検討できた。 まず、工業利害については、「工業家クラブ」所属の工業代表者が、1897年に通商条約更新が問題提起されてから1901年の「アメリカ集会」に至るまで、条約の内容および更新対象国をどのように議論していたかを検討した。学会での発表内容を論文に仕上げるには至らなかったが、これは、東北史学会での発表に対する指摘を踏まえて、第一次大戦勃発を視野に入れつつオーストリア近代史上における研究意義を再点検したためである。この作業は2023年度中に完了しているため、論文は研究史上の位置づけや影響を明確化した上で再構成し、2024年度中に公表する。 次いで、農業利害に関する分析では、主要研究対象のホーエンブルームとオーストリアの農業団体「農林業利害擁護総本部」等が推進した「中欧保護協定」の展開を検討した。「研究実績の概要」で触れた1901年の「アメリカ集会」における合同決議の採択が「オーストリア中欧経済協会」の設立へ至る重要な転機と見なしうるため、その時点まで研究が到達できたことを踏まえると、こちらも順調に進展していると言える。 資料調査に関しては、名古屋大学で「中欧経済協会」の一次文献を入手できることを確認できたのは収穫であったと言える。他方、オーストリアの現地調査において「オーストリア工業家中央連盟」の関連史料の所蔵状況が想像以上に悪かった点に誤算があった。そのため、「工業家クラブ」の刊行物の入手に調査目標を切り替え、上述のように「工業家クラブ」に関わる研究成果を上げるに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の研究方針としては、オーストリアの工業利害と農業利害それぞれについての研究成果をまとめ上げることに加えて、「オーストリア中欧経済協会」の設立過程を研究対象とする予定である。 工業利害と農業利害に関しては、これまでその両利害それぞれにおける「中欧構想」の展開を追ってきた。その研究の過程で新たに浮き彫りになってきたのは、両利害の間で通商条約更新や関税率改訂をめぐる論争が1890年代後半以降に想定以上の激しさで起きていたことである。その論争は、工業が推進する「中欧」と農業のそれとの思想的な対立という側面も含んでいるため、本研究の遂行において注目したいと考えている。 「オーストリア中欧経済協会」の設立過程については、1901年の「アメリカ集会」において、アメリカの通商圧力に対抗するための中欧諸国の連合という構想が農業と工業の合同で決議されてから「中欧経済協会」結成へ至るまでの過程を明らかにする。この団体の史料に関しては、設立総会や団体規約等をすでに入手済みであり、オーストリア国立図書館のインターネットアーカイヴの新聞史料も利用可能であるため、それらの分析を通じて設立過程や組織構造をおおよそ明らかにできる見込みである。また、前述の通り、名古屋大学でも関連史料を入手できることがわかったため、必要に応じて再度の調査も視野に入れている。 以上の活動で得られた研究成果はすみやかに学会で発表し専門誌で公表する予定である。
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