〈縄文ルネサンス〉におけるモノ(複製品/アート/商品)の製作と活用の人類学的研究
Project/Area Number |
22K01077
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04030:Cultural anthropology and folklore-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古谷 嘉章 九州大学, 比較社会文化研究院, 特任研究者 (50183934)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 縄文ルネサンス / 先史文化の現代的利用 / 埋蔵文化財の修復・復元・複製 / 縄文グッズ / 考古学と現代アート / 遺跡観光 / 世界文化遺産 / 物質性の人類学 / 埋蔵文化財の修復・復元 / 考古遺物の複製品 / 縄文文化 / 先史遺物複製品 / 現代アート / 物質性 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、〈縄文ルネサンス〉すなわち「知らなかった縄文文化(のモノ)に気づかなかった価値を見出し、現代社会に生きる私たちの生活に活かす、多種多様な文化現象」のなかで「縄文時代の遺物や文化を参照してモノ(遺物の複製品/現代アート作品/縄文関連商品)を製作する行為」に注目し、そのようにして製作されたモノが様々な場面で活用されることによって縄文時代と私たち現代人の間に従来なかった種類の繋がりが生み出されている実態を、文化人類学的調査によって詳細かつ具体的に明らかにすると同時に、過去と現在の間に「新たなモノの製作とその活用」を通じて繋がりが生み出される一般的プロセスについての理論の構築をめざす。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「縄文時代の遺物や文化を参照してモノを製作する行為」および「その製作物を活用して縄文時代と現代人の間に繋がりが生み出される状況」について文化人類学的調査を通じて明らかにすることを目指す。 (1) 本年度は、〈縄文ルネサンス〉と私が名付ける社会現象の主要な一部をなす複製品・アート・商品の製作の実態について、下記の実態調査を通じて、以下の点について解像度の高い認識を得ることができた。①複製品製作を含む埋蔵文化財の修復の実態については、第一線の修復家2名に対して継続して聴き取り調査を行いつつ、彼らと共著で、縄文遺物を始めとする先史遺物の修復を焦点化した(本邦初の)単行本を出版し、それに関連するシンポジウム等による議論を通じて、修復をめぐる問題について理論的考察を深めるとともに、美術品修復など関連分野との研究交流を推進することができた。②現代縄文土器作家主宰の「縄文野焼き祭り」の実態調査を通じて、複製品製作と現代アート制作が予想以上に連続している状況について認識を深め、さらに土器製作が、太鼓演奏やコンテンポラリーダンスなどと組み合わされた祝祭として実施されている実態について詳細な理解を得た。③『縄文コンテンポラリー展inふなばし』展および『火がつくる文様絵画と土器彫刻』展などにおける展示作品の調査を通して、縄文遺物に刺激された現代アート制作の多様性を具体的に把握することができた。④商品製作に関してはデータの網羅的収集を通じて、製作されるモノの種類がますます多様化している現状を確認しており、今後の集中的調査の対象とすべきものの選別を鋭意進めている。 (2) 理論的研究としては、縄文遺物に影響されて現代アーティストが作品を制作するプロセスについて、「人間中心主義」ではなく「モノが人を介してモノを生み出す」現象として捉え、「物質性の人類学」と節合する方向へと議論を展開しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
■実態調査:3つの調査項目(複製品・アート・商品)それぞれを適宜焦点化しつつ以下の文化人類学的調査を実施した。①「猪風来美術館」(新見市)における猪風来氏(現代縄文陶芸作家)主宰の「第36回春の縄文野焼き祭り」で、複製品および縄文土器からインスピレーションを得た陶芸作品の製作活動の実態ならびに関連パフォーマンについて調査。②「農と縄文の体験実習館なじょもん」(津南町)における『松山賢展 火がつくる文様絵画と土器彫刻:縄文文化との接点』の調査と並んで、縄文中期の国指定遺跡である「沖ノ原遺跡」の発掘作業について観察。③「飛ノ台史跡公園博物館」(船橋市)の『第22回縄文コンテンポラリー展inふなばし』の展示およびワークショップ等の調査。④『Material, or』展(東京)において「マテリアル、素材、もの」の関係を主題化するアート作品について、『杉本博司 本歌取り 東下り』展(東京)において、「本歌取りの技法」によるアート制作について、過去の遺物を参照してのアート制作の多様性の観点から調査。⑤東京藝術大学主催の『文化財保存修復日本画』展(東京)において、古典絵画の修復技法の研究を通じてのアート作品制作について調査。 ■出版及び研究発表:①埋蔵文化財修復家である石原道知氏(武蔵野文化財修復研究所)および堀江武史氏(府中工房)と共著で、縄文遺物の修復および複製品製作の現状と問題点をテーマとする単行本を出版し、著者全員で実施したハイブリッド形式での講演と質疑応答を通じて「縄文遺物」への関心の実態について知ることができた。②東京藝術大学が開催した、修復と複製製作をめぐる諸問題についての国際シンポジウム『未完の修復』に登壇して本研究の成果の一端について報告し、美術の保存修復の専門家等との議論を通して、修復の比較研究(先史遺物とアート作品)の端緒を掴むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
■〈縄文ルネサンス〉における縄文イメージ形成におけるモノの役割:現代社会が新しい縄文イメージを発見するプロセスにおいて、先史遺物をとりまく複製品・アート・商品が果たしている役割について、具体的な状況を把握する実態調査を通して、モノに媒介されて形成される縄文イメージの間の相乗的関係(一定のイメージへの収斂)と相克的関係(イメージの多方向への拡散)を焦点化した理論化の端緒を掴むことに努める。 ■「縄文グッズ」の開発と流通:本年度は、遺物を活用して販売を目的として製作(ときには大量生産)されるモノを通して、縄文文化や縄文社会についてどのようなイメージが物質的な形を与えられ流通しているのか把握することを重視する予定であったが、実際には、一方で修復や複製品製作という考古学寄りの実態調査、他方で現代アートの制作と展示の実態調査に比重が置かれる結果となったので、来年度は、それらの商品化がどこまで縄文文化理解と結びついているのかについて解像度を上げて調査を進めたい。 ■ブラジル・アマゾン社会との比較研究を通じての理論構築:本研究は、「過去のモノを参照してモノを製作し、そのモノの活用を通じて過去との繋がりが生み出される、人間社会に一般的なプロセスについての理論の構築」を最終的に目指している。そのような広範囲理論の構築のためには、〈縄文ルネサンス〉と比較可能な他の社会の事例の検討は大きな価値をもつ。そうした観点から、理論の精緻化と理論の一般性を高めることを見据えつつ、私が以前から調査を続けてきた「ブラジル・アマゾン先史文化の現代的利用」の新たな展開との比較作業(特に発掘現地における先史遺物の展示を焦点として)を、現地研究者との協働をつうじて進めたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)