Project/Area Number |
22K01128
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05010:Legal theory and history-related
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 祥貴 桃山学院大学, 法学部, 教授 (20398548)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | フィンランド議会 / 憲法委員会 / 委任立法 / 行政統制 / 違憲審査 / 憲法保障 |
Outline of Research at the Start |
我が国では、憲法上、国会を「唯一の立法機関」と規定しながらも、実際には、政府への広範な立法権委任が常態化している。しかも、その委任立法に対して、通例、国会が事後的にチェックを行うという過程は存在せず、法律事項を行政府へ「丸投げ」する状況が放置されている。この点、国外の動向に目を向けてみると、20世紀以降の欧米先進諸国では、委任立法は、議会制民主主義を形骸化させる病理的現象として警戒され、事後的な議会統制の構築に向けた法制度の展開が非常に活発であり、また、その学術的議論の蓄積も豊富である。かかる先進国の法制度論に、今後、我が国もキャッチアップしていくために必要な比較法研究を実施するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、行政主導の立法過程が常態化する現代行政国家において、議会制民主主義の復興を目指し、議会による行政統制の実質化を図る制度論を構築するべく、必要な比較制度論を展開するものである。かかる文脈において、現在の主たる研究対象は、フィンランド議会が擁する憲法委員会に存する。初年度は、当該憲法委員会の形成過程と制度枠組を総論的に研究したが、2年目に該当する2023年度は、憲法委員会の運用問題、とりわけ憲法委員会で実際に審査を行うスタッフの考察を深めた。フィンランド社会における憲法委員会の評価は想像以上に高く、まさに尊敬と信頼の対象であった。そして、当該委員会制度の運用面に着目したところ、かかる高い評価を実現している要素として、専門知の活用が鍵となっており、専門知を基軸にした審査であるがゆえに、客観的かつ合理的な政府統制が実現できていることが判明した。具体的には、外部有識者である憲法学者が中心となり、また憲法委員会を構成する法律家の資格を有する議員集団の存在が指摘できる。この点、非党派的なその制度運用は、我が国の国会運営を念頭においた場合でも、参照に値するものといえる。我が国は、党派的な国会運営が目立ち、合理的な見解も党議拘束の中に埋没してゆくのが実情である。そこで、以上のフィンランド研究を踏まえて、最終年度である2024年度では、かかるフィンランドの憲法委員会をめぐる制度研究をベースに、我が国の制度改革に如何に敷衍してゆくのか、実践的な比較制度研究を展開する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、先行業績が一切ない事情の中で遂行されており、現地での調査研究が非常に重要といえる。しかしながら、本年度は、事情により、フィンランドの現地調査を実施することができなかった。その限られた研究環境の中で、現地の憲法委員会顧問との連携を失わずに保持することで、絶え間ない情報収集を心がけた。その結果、限られた環境の中でも、当該運用問題に関する調査研究はある程度まで把握することができた。なお、不十分な点に関しては、最終年度の2024年度に改めて現地調査を実施し、必要十分な情報収集によって補完する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの比較制度研究を踏まえつつ、最終年度に該当する2024年度では、我が国への制度展開を見据えて、必要な法解釈論及び法制度論の構築に専心する予定である。我が国の立法過程は、完全なる政府主導が確立・固定化しており、国会は政府への追従を余儀なくされている現実がある。かかる状況の中で、国会を「唯一の立法機関」として再構築し、併せて、二院制における参議院の憲法的定位を探りたい。就中、政府立法を実質的に統制し得るのは、政府と一体化した衆議院ではなく参議院であり、この参議院改革にこそ議会制民主主義復興の鍵があるものと考える。最終年度は、その制度改革に向けた可能性を模索し、実践的な比較制度研究を全うしたい。
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