Project/Area Number |
22K01208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05050:Criminal law-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 宜裕 九州大学, 法学研究院, 教授 (70365005)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | テロ犯罪 / テロ対策 / 刑罰 / 保安処分 |
Outline of Research at the Start |
日本のテロ対策は、極めて脆弱である。とりわけ、テロ犯罪対策は明らかに立ち遅れており、この点は、改正組織的犯罪処罰法のテロ犯罪類型の不十分さを見れば明らかである。 本研究では、「テロ犯罪に対する実効性のある抑止策とは何か」という問いに答えるべく、充実したテロ犯罪類型を有し、これに対する刑事制裁も多様であって、ヨーロッパでも特にテロ犯罪対策に積極的と思われる、フランス、ドイツ、ベルギーとの比較法分析を行う。その際、テロ犯罪の特徴を明らかにした上で、犯罪論及び制裁論(刑罰論及び保安処分論)の双方からアプローチし、テロ犯罪対策の具体的提言を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、「テロ犯罪に対する実効性のある抑止策とは何か」という問いに答えるべく、比較法的検討を通して、テロ犯罪の特徴を明らかにし、犯罪論及び制裁論(刑罰論及び保安処分論)の双方からテロ犯罪対策の具体的提言を行うものである。 2023年度は、テロ犯罪及びテロ対策をめぐる議論状況を整理するため、ヨーロッパでも特にテロ犯罪対策に積極的と思われる国の1つである、フランスの実態調査を行う予定であった。本来、この実態調査は、2022年度中に行うはずであったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止となっていた。2023年度末、何とか渡仏を実現したが、調査対象となる施設等の調査受け入れ体制が依然として整っておらず、基本的な文献の収集にとどまらざるをえなかった。 そこで、2022年度に実施した、日本の現行法制の分析、とりわけ、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」等を中心とした分析と対比して、2023年度に収集した資料に基づき、フランスにおけるテロ犯罪の定義、その射程の広さを確認した。やはり、ここでも、日本のテロ対策の脆弱性が再確認された。 上記検討を通して、テロ犯罪の精確な類型化の必要性、この点の比較法的検討の重要性を確認することができた。その上で、解釈論におけるテロ犯罪の特殊性、及び、刑罰と保安処分それぞれのテロ対策としての実効性等に射程を拡大していく必要があるが、2023年度はその基盤の一部を形成することができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、海外での実態調査ができなかったのが大きな理由である。渡仏により、最低限の仏語文献、資料の収集を行ったものの、テロ対策の運用面の情報がほとんど入手できていない。調査対象施設に連絡し、依頼するものの、ほとんどの施設で、海外からの調査を受け入れる体制は現段階ではできていないとの回答しかえられなかった。パリオリンピックを前に、現場が混乱しており、海外調査を受け入れる余裕がないというのも一因にあるのであろう。 本研究は、「テロ犯罪に対する実効性のある抑止策とは何か」という問いに答えるべく、比較法的検討を通して、テロ犯罪の特徴を明らかにし、犯罪論及び制裁論(刑罰論及び保安処分論)の双方からテロ犯罪対策の具体的提言を行うものである。日本のテロ対策のどこに欠陥があり、どのようにそれを埋めていくべきかを精査するためには、テロ対策に積極的な国との比較法的検討、とりわけ、各国の運用実態を知ることが極めて有益であるが、上述の通り、海外の実態調査が実施できておらず、本研究の要となる部分の本格的検討には至っていないのが現状である。 それ故、当初の研究計画からは、やや遅れているといわざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで実施できなかった、海外での実態調査を実施し、「テロ犯罪に対する実効性のある抑止策とは何か」という問いに答えるべく、本格的な比較法的検討に着手する予定である。このタイミングでフランスの状況を分析することには、大きな意義が見いだせる。パリオリンピックにおけるテロ対策を事後的に検証することは、本研究を実施する上で格好の素材である。さらに、少なからぬ影響を受けるであろう、隣国ベルギーの問題状況の把握にも努める。 その際、申請者のかつての留学先である、ポワチエ大学法学部を拠点として研究を遂行する。ポワチエ大学法学部には、刑事科学研究所という刑事法に特化した機関もあり、効率的な資料収集が可能である他、ここでは、物的資源のみならず、人的交流からえられる効果も期待できる。ミシェル・ダンティ-ジュアン(Michel DANTI-JUAN)教授をはじめとする同大学のスタッフの豊富な人脈を活用して、さまざまな現場スタッフから運用実態を聴取する。 また、国際的に資料収集を行うに当たり、ストラスブールにあるヨーロッパ人権裁判所図書館は非常に実用的である。同図書館館長ジュヌヴィエーヴ・ウッズ氏(Genevieve WOODS)の協力の下、同所での情報収集を進める。 上記の研究遂行に並行して、適宜、日本刑法学会九州部会、九州法学会、及び、各研究会において、進捗状況を報告し、各会員から示唆をえる。
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