Project/Area Number |
22K01250
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
香川 崇 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (80345553)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
|
Keywords | 民法 / 欧州人権条約 / スイス法 / 欧州人権裁判所 / ベルギー法 / 消滅時効 / 時効の停止 / フランス法 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「裁判所にアクセスする権利の保障(欧州人権条約6条1項)」と消滅時効制度にかかわる欧州人権裁判所判例の展開を検討し、これらの判例がフランス、スイス及びベルギーの消滅時効制度に与えた影響と新たな時効制度の解釈について調査することで、消滅時効制度の現代的な存在理由を明らかにし、わが国の解釈への示唆を得ようとするものである。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、スイス法における欧州人権裁判所判決の影響について検討した。 スイス債務法改正前第60条(以下、旧第60条という)1項は、損害賠償訴権が、被害者が損害及び加害者を知った時から1年、損害を発生させる行為をした時から10年の時効にかかるとしていた。これに対して、2006年、スイスの国民議会議員は、アスベストによる損害を考慮して、損害賠償訴権に関する消滅時効の時効期間を長期化することを提案した。2007年、スイス国民議会の司法委員会は、損害賠償請求権に関する時効期間の長期化を求める発議をした。 2013年に提出された時効法改正草案第60条1項bisは、人身損害に関する損害賠償訴権につき、短期消滅時効の時効期間を3年、長期消滅時効の時効期間を30年とするものであった。長期消滅時効の起算点は、損害を発生させる行為をした時、または、その行為が止んだ時とされていた(アスベスト等による被害を考慮して、その起算点を損害発生の時とする余地もあったが、採用されなかった)。 この改正作業期間中、欧州人権裁判所2014年3月11日判決は、アスベストの被曝によって発生した疾患に関する損害賠償訴権の消滅時効について、アスベストによる疾患が長期間の経過後にのみ診断可能となる性質を有していることから、旧第60条1項の消滅時効がアスベスト被害者の裁判に訴える可能性を奪うとして、同条同項が欧州人権条約6条1項(裁判所にアクセスする権利の保障)に反するとした。 しかし、国民議会において、改正草案第60条1項bisの長期消滅時効の時効期間は20年へと短縮され、同条同項は2018年に可決成立した。前掲の欧州人権裁判所判決は、時効制度において、人損被害者がその損害を認識しうる期間を考慮すべきであることを示すものであり、改正後第60条1項bisの長期消滅時効はこの判決に反していると解する学説もある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、裁判所にアクセスする権利の保障(欧州人権条約6条1項)と消滅時効制度にかかわる欧州人権裁判所判例の展開を検討し、これらの判例がフランス、スイス及びベルギーの消滅時効に与えた影響と新たな解釈の展開について調査することで、消滅時効制度の現代的な存在理由を明らかにし、わが国の解釈への示唆を得ようとするものである。 2023年度の研究によって、スイス法と欧州人権裁判所2014年3月11日判決の関係が明らかとなった。スイスの時効法は、改正作業中に下された同欧州人権裁判所判決を考慮することなく、改正草案第60条1項bisの30年の時効期間を20年に短縮した。この点からすれば、立法において、欧州人権裁判所の判決の影響はないものといえよう。しかし、学説においては、欧州人権裁判所2014年3月11日判決の観点からの解釈を示すものが少なくない。その中には、スイス債務法改正後第60条1項bisが欧州人権裁判所判決に反すると評価する者もおり、欧州人権裁判所2014年3月11日判決はスイス法に対してある程度の影響を及ぼしていることが明らかとなった。 したがって、2023年度の研究によって、本研究の課題の一つを明らかにすることができたといえよう。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究において、スイス法の状況を明らかにすることができた。 2024年度は、前年度に引き続いて、裁判所にアクセスする権利の保障(欧州人権条約6条1項)と消滅時効制度にかかわる欧州人権裁判所判例の展開を検討し、これらの判例がフランスの消滅時効に与えた影響と新たな解釈の展開について調査する。そして、これまでの研究を踏まえて、論文を執筆することとしたい。 文献調査方法としては、外国語文献を購入するとともに、他大学の図書館に出張して、文献を調査収集することとしたい。
|