地震災害、洪水災害にかかる私保険制度のレジリエンス向上と国家の関与の在り方
Project/Area Number |
22K01267
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
土岐 孝宏 中京大学, 法学部, 教授 (70434561)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 水災料率細分化 / 洪水保険 / 地震保険 / 巨大災害リスク / レジリエンス |
Outline of Research at the Start |
本研究は、地震災害、台風・集中豪雨による洪水災害など、国家ないし被災地域に甚大な被害をもたらす大規模災害が生じた際、社会がそこからすみやかに回復し、もとの経済生活を一日でも早く取り戻すために有益な国家のシステムとはどのようなものか、とりわけ、現在、わが国にある地震保険制度のように、その回復に保険という制度を利用する際、国家は、その仕組みにどの程度関与することが望ましいのか、また、その効果的な保険制度の仕組みはどのような内容であるべきかを、アメリカ連邦洪水保険制度、イギリスFlood Re制度、フランス等の欧州諸国の自然災害保険制度等を参照しながら、明らかにするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地震、洪水といった自然災害に対する経済社会システムの強靭性(レジリエンス)の向上を目的として、これに補償を与える私保険制度に国家がどのように、またどの程度関与するべきかを海外の諸制度比較のもとに探求するものである。 本年度は、昨年、研究初年度に比較制度研究に着手した洪水保険制度に関し、国内に重要な動きがみられたため、その制度の知見を深めるとともに、本研究の問題意識の中に、これがどのように位置づけられるのかの検討を進めた。すなわち、具体的には、2023年6月に損害保険料率算出機構は、住宅向け火災保険参考準率の水災料率を従来の一律のものから細分化する内容を金融庁に届出ており、これを受けて火災保険の料率に市町村単位の5段階の区分(保険料において1.5倍の格差)が生まれた。ここでは、公平性を確保して低リスク者の水災補償離れを回避し、過度の細分化を排して高リスク者の保険購入可能性にも配慮するという視点が重視された。当該、水災料率改定は、完全に私保険の枠組みの中のもので、それ自体、国家の関与とは直接関係がない動きではあったが、しかし、自然災害からのレジリエンス向上のためには、減災のインセンティブを自治体それ自体に働かせるリスクファイナンス(保険制度)の構築(これに国家が一定の関与を行うこと)が有用であるとの仮説の論証も目的とする本研究にとって、今回、市町村単位に水災料率が区分されたことが持つ意義は大きいとする認識に至った。すなわち、長期的視点になるが、高リスク区分自治体には、住民サービスとして域内の治水・洪水対策を実施し、もって水災リスク区分を現在より引き下げ、その市町村住民の火災保険料負担を軽減するというインセンティブが与えられたからである。また、金融庁関係者が参加する自然災害とレジリエントをテーマにした(公社)損害保険事業総合研究所主催の講演会(2月7日)にも参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究の基礎に据えた仮説の論証にあたり、あるひとつの重要な試金石となるべき国内状況の変化(火災保険水災料率の市町村単位の細分化)があり、これについての知見を深めるとともに、本研究の中でのその位置づけを明確にすることができたため。また、他方に同時並行に進めている他国の比較制度研究についても、新しい制度研究(スペイン自然災害制度の研究)に着手する準備を整えることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、国内の災害保険の制度の変化に注意しながら、引き続き、比較制度研究を継続する。イギリス洪水再保険制度のほか、スペイン国における自然災害制度(Real Decreto Legislativo 7/2004, de 29 de octubre(2004年10月29日の勅令)、Real Decreto 300/2004, de 20 de febrero<Reglamento del Seguro de Riesgos Extraordinarios>(2004年2月20日の勅令:特別<異常>危険規則)についても研究を進める方針である。この制度は、地震のみならず、広く自然災害にかかる異常危険を特別保険料を得て、公的機関が国家の支払保証の後ろ盾のもと引き受ける、強制付帯型私保険制度である。2023年11月、保険監督者国際機構(IAIS)日本会議において自然災害に関するプロテクションギャップ(経済的損失と保険による補償額の差)への対応が議論されたように、今、世界は、政治の世界を含めて、自然災害におけるプロテクションギャップをどう埋めるのかに注目する。この観点において、ひとつの注目される制度である。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)