Project/Area Number |
22K01607
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07070:Economic history-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
粕谷 誠 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (40211841)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 両替商 / 近世 / 大坂 / 三井両替店 / 金融機関 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,19世紀前半の三井大坂両替店を対象として,貸出先の管理がどのようにおこなわれていたのかを,貸出先の分散や継続をおもな指標として明らかにする。その際には,為替貸,質物貸,家質貸といった貸出の種類の相違に応じて,幕府の債権保護の程度も異なるので,これら3つで分散や継続が異なるのかも考察する。こうした分析をおこなうことで,三井両替店が金融機関としてどの程度成熟していたのかを明らかにして,近代的な銀行ができる前提がどの程度準備されていたのかを考察する手がかりとする。
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Outline of Annual Research Achievements |
明治以降に日本の銀行は急速に発達していくが,江戸時代においてもとくに大坂において両替商をはじめとする金融機関が高度に発達していたことが指摘されている。両替商は預金をあまり受け付けておらず,基本的に自己資金を資金源として,貸付や為替などの業務をおこなっていた。それではこれらの両替商はどの程度,金融機関として成熟していたのであろうか。本研究はこの問題について三井大坂両替店を素材として検討することとした。なぜなら長期にわたって勘定目録という貸借対照表と損益計算書を兼ねた帳簿がほとんど欠落することなく残されており,また総勘定元帳と仕訳帳にあたる帳簿もかなり残されており,情報が得られるためである。 成熟をどのように計るかが次に問題になるが,自己資本で営業するにせよ,一つの貸出先に集中するのはリスクが大きいことになる。そこで貸出先がどの程度分散していたのかが一つの指標になり得る。また預金がないとすると,資金源が利益の再投資の範囲に限られることになり,新規の取引先を常に開拓し続ける必要性は相対的に弱いといえるが,実際にどの程度,新しい取引先を開拓していたのであろうか。また負債がなければ,長期貸出も可能となるが,どの程度の期間にわたって貸出が継続していたのであろうか。さらに為替の形態をとって貸し出す延為替,不動産を担保とする家質貸,動産を担保とする質物貸,大名への融資である御屋敷貸では,債権保護の程度がことなるが,これら4つの貸出項目で,これらの指標にどの程度の違いが見られるであろうか。 以上の点を明らかにするため,公益財団法人三井文庫が所蔵する三井大坂両替店の帳簿を撮影し,その資産を中心に分析をおこなうため,データベースの構築をおこなってきている。またこれと同時に,近世金融の性格を理解するために,古代・中世の金融について広範なサーベイをおこなった。これが第1年目の実績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析の期間は1820年から1850年の30年間を想定している。三井大坂両替店の帳簿はその前後にも存在しており,さらに長い期間を考察の対象とすることも可能であるが,筆者が大坂の両替商名簿の分析をおこなって,両替商の浮沈がかなり激しかったことを実証した時期が1820年代から1860年代であったため,本研究ではその時期を対象とすることとした。また1850年代以降は,幕末の政治的動揺の影響がでてくることも想定されるので,その前の時期に絞り,幕末期の分析は次の分析の機会に譲ることとした。 延為替,家質貸,質物貸,御屋敷貸の4つのカテゴリーで貸出の性格が変わってくることが想定されるため,これらの4つのカテゴリー,三井両替店が不良貸出先と認識しているか否か,に加えて利率,期限などを貸出先と貸出金額とあわせて入力していくことになる。これと同時に,貸出先の名義が2名以上である場合,親類や本家・別家関係が強く推定される屋号が同じ人達なのかそういった関係が推定されにくい屋号が異なる人達なのかについても分けて分析できるようにしている。期間や利率や不良貸出先比率が4つのカテゴリーで異なるか否かも分析の対象になる。 すでに三井大坂両替店の勘定目録のうち,1819年春季(上期)から1853年秋季(下期)の帳簿の撮影を終えている。さらに撮影した帳簿の入力も進めており,資産面では1820年春季から1839年秋季までの入力作業を終えている。入力を予定している30年のうちの約3分の2の入力が終わっていることになる。こうした進捗状況はほぼ事前の予定通りのものであるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずできる限り早い時期にデータの入力を終えることとする。これが研究の進展にとって絶対的に必要なことである。データの入力が終了したあとは,当初予定していた貸出の分散状況,貸出の継続状況のデータの整理に入ることになる。分散状況では,標準偏差や上位貸出先への集中度などいくつかの指標を設けて,それが延為替・家質貸・質物貸・御屋敷貸の4つのカテゴリーで異なるのか,30年間にそれが変化しているのかといった観点から考察していく必要がある。大名貸では貸出先の分散が図りにくいと考えられるが,ほかの3つのカテゴリーとどの程度異なるのかについても考察していく。 継続性では,前の期から次の期にどの程度の継続性があるのか,継続期間の平均はどの程度なのかをやはりみていくこととする。大名貸で無利息長年賦といった貸出があったことが指摘されているが,三井大坂両替店でもそうだったのか,三井大坂両替店の御屋敷貸はほかの3つのカテゴリーと異なる特徴を持っているのかも考察していく。 さらに貸出先が勘定目録から消えた場合に,これが返済によるものなのか,貸出の消却によるものなのかは,勘定目録からは判明しない。総勘定元帳や仕訳帳が残っている期であれば,それらによって返済か否かが判明するので,可能な限りこれらも考察していくこととする。これらは一部は,大坂両替店独自の積立金である要銀積の推移からも判断可能で,その一部は勘定目録に記載されているので,まずはこの情報を最大限に利用する。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)