Project/Area Number |
22K01792
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07100:Accounting-related
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
伊藤 克容 成蹊大学, 経営学部, 教授 (40296215)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 仮説指向計画法(DDP) / 心理的安全性 / 予算管理 / マネジメント・コントロール / 管理会計 / 両利きの経営 / 責任会計 / スタートアップ / 新規事業 / リーンスタートアップ / DDP / 高次学習 / リアルオプション |
Outline of Research at the Start |
全体の構造としては、①事業計画に対する役割期待の変容(業績測定標準としての目標達成のためのツール→仮説検証ツール)と②動機づけを含むコントロール・パッケージの変容の2つのサブ領域を考えている。伝統的なマネジメント・コントロールに関する理論研究では、新規事業創出は主たる守備範囲に含まれていなかった。先進実務からスタートアップ企業に適用可能な理論を抽出し、既存のマネジメント・コントロールとの比較検証、整合を試みることで、マネジメント・コントロール理論の拡張、充実を図ること、そのための探索的な調査を積み重ねることが、本研究の到達目標である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終的な目的は、スタートアップ企業におけるマネジメント・コントロールシステムの設計と運用に関する理論構築にある。令和4年度および令和5年度は、先進実務を詳細に観察すること、関連領域の理研究成果(理論)を参照することの2つを通じて、伝統的なマネジメント・コントロール理論との差異を明確にすることをマイルストーンとして考えていた。複数の学会報告を実施し、いくつかの研究成果を刊行することができ、当初の計画(スタートアップ企業におけるマネジメント・コントロール実践に特徴的な性格の抽出)は、順調に遂行できていると考えられる。 本研究では、両利きの経営(Organizational Ambidexterity)の考えかたを採用している。両利きの経営では、新しい知識分野の開拓である「知の探索」と既存分野での知識の蓄積を意味する「知の深化」の2つの領域の両立が重視される。 本研究で重要となるのは、スタートアップ企業における事業計画が、既存事業における事業計画とは、異なる性質をもっていることである。複雑性の高い状況では、試行錯誤によって仮説検証を繰り返す、テストアンドラーン(Test and Learn)によって、高い複雑性から生じる問題に対処するのが一般的である。不確実性の高い状況に適合する事業計画手法としては、仮説指向計画法(Discovery-Driven Planning、DDP)が有効である。DDPは、テストアンドラーンの性格を帯びた経営手法の代表例であり、様々なバリエーション、類似技法を確認することができる。 令和5年度の成果としては、DDPの運用にあたって、組織内のコンテクストをいかに整備するかについて検討を実施できたことがあげられる。具体的には、「心理的安全性(Psychological Safety)」とDDPの関係性についてインタビューおよび文献調査によって考察を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題(「スタートアップ企業におけるマネジメント・コントロールシステムに関する探索的研究」)を遂行するうえで、重要なインプット作業としては、実務家へのヒアリング調査とスタートアップのマネジメント・コントロール(関連領域を含む)に関する文献調査の2つが予定されている。1つめのヒアリング調査は、対面およびオンラインで、順調に継続できている。情報が多岐に及び整理するのが困難であるが、重要な研究工程であるとの認識は変わらない。もう1つの重要なインプット源である文献調査については、国内、海外(学術雑誌中心)、研究者、実務家による、著作物を参照している。出版物がふえてきているので、次年度は、カバーする範囲を効果的に制限する必要があるだろう。 研究のアウトプット面については、著作物刊行と学会発表の2つの方法が想定されている。著作物としての研究成果は、論文4編を刊行することができた。学会報告については、主要学会の全国大会で2回の研究報告を実施することができた。 令和5年度の顕著な成果としては、「両利き経営」の概念が業績管理会計論およびマネジメント・コントロール研究の理論体系にどのようなインパクトをあたえるかについての研究報告を実施できたことである。スタートアップ企業のマネジメント・コントロールを考えるうえで重要な基礎となり得ると考えている。マネジメント・コントロール研究及びその前身となる管理会計論では、その生成当初から、大規模複雑化した組織が、理論形成の前提であり、新規事業(スタートアップ)を科学的に育成する理論については、大きな関心が払われてこなかった。新規事業開発を前提としたマネジメント・コントロールでは失敗の確率が高く、仮説検証(概念実証、Proof of Concept, PoC)が前提となるため、組織構成員に対する働きかけの方向を手段がまったく異なっていることに注意が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
当面の課題としては、以下の3点があげられる。 1点めは、実務家へのヒアリング調査を継続し、情報収集に努めることである。今後注力したいのは、「両利きの経営」推進の観点から、責任会計(業績管理会計)がどのように変容するかについて、実態調査をおこないたい。「構造的両利き」によって、深化ユニットと探索ユニットが併存されている場合には、それぞれのユニットのマネジメント・コントロールと全社的な資源配分の仕組みが必要となるが、現状は、通説が定まっていない状況である。 2点めは、コントロール・パッケージのデザインという観点で、報酬算定を含めた、動機づけについて、さらに情報収集を継続したい。スタートアップを前提とする探索ユニットでは、マネジメント・コントロールに対する役割期待が高度化し、事業計画の意味合いが大きく変化している。事業計画は報酬算定の基礎となり得ない。スタートアップ企業のように、事前に正解のない問題に挑戦する、高次学習を促すマネジメント・コントロールには、莫大なモチベーションを確保しなければならない一方で、正解が事前に定まっていないということは、不確実性が高く、会計数値による業績測定が機能しない。どのように自律的な人材を確保しているのか、また、どのように事業創造に駆り立てているのかのメカニズム解明が重要となる。この点については、インタビュー調査が重要となる。 3点めとして、コントロール・パッケージの変容について、個別事例を収集し、場合分けをおこない、説明力の高い、理論モデルの構築を目指すことが課題となる。個別事例の収集は、インタビューでも、文献調査でも可能であり、それぞれに一長一短があるが、当面は、インタビュー情報の整理を優先したいと考えている。 上記の1~3に共通するが、学会、研究会などで継続的に中間的な成果発表を可能な限り実施し、フィードバックを得つつ、最終的な研究成果を充実させる。
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