Project/Area Number |
22K01818
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07100:Accounting-related
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
片岡 洋人 明治大学, 会計専門職研究科, 専任教授 (40381024)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | サービタイゼーション / PBC / 価値主導型原価計算 / 待ち行列 / 混雑コスト / 顧客にとっての価値 / 戦略経営 / 中期経営計画 / 原価企画 / 顧客ライフサイクル・コスト / 差別化 / ソリューション / 収益モデル / VE / サービタイゼーション戦略 / 収益性管理 / 価値提案 / 原価計算対象 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、わが国優良企業におけるサービタイゼーション戦略(サービス化戦略)の策定・遂行に関する実務を観察することによって、適切に収益性を管理するための原価計算/管理会計システムについて検討し、理論化を試みる。 サービタイゼーション戦略における顧客への価値提供(offerings)のパターンは多様であるため、価値提供のパターンを類型化し、そのパターン別に適切な収益性管理を行うために構築された原価計算システムに焦点を当てる。その際のポイントの1つは、価値提供パターンごとに原価計算対象を設定し、「コスト<販売価格<顧客知覚価値」の関係を構築することであることを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主として、収益モデルのイノベーションを引き起こすための3つの方策について検討した。 第1には、パフォーマンス基準の契約(PBC)のあり方について検討した。PBCは顧客企業の経営課題に継続的にコミットする、顧客との長期的な関係性を重視する契約である。PBCは、顧客が実現したアウトカムないし成果に基づいて従量課金する収益モデルである。顧客にとってのアウトカムの実現を、企業にとっての収益と直接的にリンクさせることがポイントになる。これにより、顧客と企業との間の利害調整が可能になる。PBCは、新しいパラダイムのもとでの原価計算のコンセプトである「価値主導型原価計算」を具現化した収益モデルといえる。 第2には、待ち行列の理論に基づいた混雑のコストの概念をモデル化し、システムの逼迫が収益性に及ぼす悪影響について明らかにしている。伝統的には、未利用生産能力が残っている状況で収益を拡大するためには稼働率を高めることが求められていた。その場合には、貢献利益アプローチが有用である。しかし、特別注文等を受注することで稼働率が100%に近づき、生産能力のアイドルが少なくなると、そこには待ち行列が生まれることになる。この待ち行列による逸失利益こそが混雑コストであると定義する。稼働率を管理する場合には、この混雑コストを適切に理解した上で意思決定を行う必要がある。 第3には、企業経営において適切な計画を作成することは重要課題の1つであるが、戦略目標を実現するための具体的な計画へプログラム化したものが中期経営計画になる。この中期経営計画が戦略経営において果たしている役割について検討し、戦略・中期経営計画・管理会計システムが連動する必要があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度(2023年度)は、(1)サービタイゼーションの実態調査を行うとともに、サービタイゼーション戦略を実施するためのPBC、(2)待ち行列と混雑コストが及ぼす影響、および(3)戦略的視点からの計画設定と管理会計システムのあり方について検討した。 その結果、(1)から(3)については、それぞれ本年度中に研究論文として公表することができ、最終年度である2024年度の研究につながる重要な知見を得ることができた。とくに、わが国製造業者を対象に、ソリューション提供事業者への移行が必要である理由とともに、「顧客にとっての価値」を提供することこそが、企業にとってのミッションであり、収益の源泉であることを示すことができたことは大きな進展であった。とくにPBCを実施している企業の収益モデルを調査することで、レベニューマネジメントの本質は「顧客にとっての価値」の訴求に他ならないということも明示することができた。その意味で、サービタイゼーションは自社製品に付加価値を組み合わせたソリューション・サービスを提供することで差別化を図る方策であるといえる。つまり、サービタイゼーションにおいては、顧客にとっての価値を提供できるように、自社の製品とサービスとを「組み合わせる」ことが、プレミアム・プライシングのためのレベニュー・ドライバーとなる。これが、伝統的なレベニューマネジメントからサービタイゼーション(拡張されたレベニューマネジメント)へ展開した経緯となる。このような経緯を理解した上で、管理会計研究の更なる発展を促したいと考えている。 以上より、これまでの活動により、次年度に「コスト<販売価格<顧客にとっての価値」の不等式に基づく価値主導型原価計算を提唱するための準備が整ったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(2023年度)は、本プロジェクトの2年目であり、わが国を代表する優良企業で取り上げられているサービタイゼーションによる収益モデルのイノベーションの実務に関する諸問題を明らかにすることができた。とくに先行研究を詳細に分析するとともに、価値主導型原価計算を提唱するための基礎固めが完了した。 2024年度も、本年度と同様に、引き続き先行研究を詳細に分析しつつ、継続して複数企業へのインタビュー調査を進め、価値主導型原価計算の精緻化や適用可能性を検討することが重要であると考えている。価値主導型原価計算のコアである「コスト<販売価格<顧客にとっての価値」の不等式において、顧客にとっての価値を高める事例の研究を行う必要がある。 この点については、わが国における市場志向・顧客志向を強めた初期の管理会計研究である、田中隆雄編著『マーケティングの管理会計 ―製品、市場、顧客の会計測度―』(1998年)から重要な示唆を得ることができる。田中編著(1998)は、「製造のパラダイムではコストがもっとも重要な基礎概念となる。しかし、市場のパラダイムでは、レベニューがもっとも重要なキー概念になる。レベニューとコスト、プロフィットの緊張関係、この分析こそが市場パラダイムを構成することになる」(まえがきp.2)と指摘している。伝統的なレベニューマネジメントからサービタイゼーション(拡張されたレベニューマネジメント)への展開と相まって、製造のパラダイムが市場のパラダイムへ発展し、それがさらに顧客のパラダイムへと進展したことを提示したい。
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