沖縄を題材とした戦争児童文学の課題と展望-戦中の児童雑誌の影響解明を手がかりに-
Project/Area Number |
22K02299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
斎木 喜美子 関西学院大学, 教育学部, 教授 (30387633)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 沖縄戦 / 戦争児童文学 / 児童雑誌 / ひめゆり学徒隊 / 女学生の友 / 少女 / 平和教育 / ひめゆり |
Outline of Research at the Start |
現在,反戦平和教育教材として沖縄戦の物語は夥しく出版されている。しかし,戦中の児童雑誌が南進論を展開し,愛国美談を創造した影響や,戦後の児童文学に引き継がれた子ども像は未解明のままである。 そこで本研究では,戦争児童文学に関する書誌的研究,作品研究,メディア研究の成果と手法を援用し,①戦中の児童雑誌に描かれた沖縄の南方イメージや愛国美談の実態を調査し明らかにする。②雑誌が子ども読者に示した方向性と教化性が,彼らの思想形成に影響を及ぼす仕組みと役割を解明する。③戦後,沖縄戦を題材とした児童文学作品に引き継がれた子ども像を明示し,戦争の記録や記憶の継承の在り方に新たな視座を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の第一義は、沖縄戦終結後に子どもたちに手渡されていった戦争の記憶と記録の物語、平和教育教材として取り上げられてきた沖縄戦の物語の実態を、書誌的に明らかにすることにある。加えて第二義として、その内容には戦前~戦中に発信されていた児童雑誌の内容と形式がどう引き継がれているのか、そこにはどういった子ども像が描かれてきたのか等、作品に即して解明することにある。 そこで本研究では、昨年度の課題に引き続き戦後の児童雑誌掲載作品の調査を実施した。昨年度は、沖縄戦の語り継ぎにとって重要なモチーフであった、「ひめゆり」学徒隊の戦争体験に見られる「乙女」のイメージを中心に作品研究を実施した。さらに今年度は、「ひめゆり」物語にとどまらず、少女雑誌そのものに醸し出されている「沖縄」観、雑誌社の意図や企画の内容を中心に調査を進めた。とりわけ「沖縄」の物語だけでなく、時事問題を数多く取り上げていた『女学生の友』(小学館、1950年4月刊行)に着目し、沖縄の施政権返還の年の1972年5月までに掲載した記事や作品の考察を行った。なぜなら、戦後すぐに米軍占領下におかれた沖縄の特殊性は、過去の物語だけではなく、戦中から地続きの「沖縄イメージ」を継承してきた点も、見過ごしにはできないと考えたからである。 その結果、『女学生の友』には戦争の被害によって生み出された数多くの悲劇や、本土との一体化を図りたいと願う青少年の主張が強調されいていたことが明らかになった。戦前の課題が連続している面と、新たな統治機構のもとで立ち現れた課題がないまぜになって戦後の「沖縄イメージ」が形成されたことについては、今後も考察を重ねてさらにクリアにしていきたいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究進捗状況は、以下の点で順調に進んでいるものと評価した。 ①新たに少女雑誌『女学生の友』を焦点化して資料調査を行い、当該雑誌に掲載された「沖縄」関係の記事や作品等について、書誌を完成させることができた。 ②作成した書誌と、同じく小学館が発行していた『教育技術』、小学館の社史や当時の報道などを手掛かりに、『女学生の友』が醸成した「沖縄イメージ」についての分析を行った。 ③沖縄研究の研究者たちと引き続き交流を深め、定期的に研究会を実施することで自身の研究テーマを深めることができ、新たな知見を得られた。 現在、少女雑誌に見る沖縄イメージとその功罪については論文にまとめることができたので、24年度中の刊行を目指しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策については、従来通り文献研究と作品調査・考察を中心に進めていきたい。具体的には以下の3点を柱に据えて、行う予定である。 ①少年少女向けの歴史叢書、雑誌、単行本を引き続き調査し、掲載されている作品にみられる「沖縄イメージ」の戦前から戦後の連続性と不連続性について考察する。 ②戦前の雑誌からの影響として、国内発行の雑誌を中心に構想してきたが、戦後沖縄の教育・文化復興には台湾からの引き揚げ者の文化資本の影響、ハワイをはじめ海外に移民した人々のもたらした情報、交流も重要であったことを考慮し、調査の範囲を海外発行の雑誌にも広げて資料収集を行いたい。あわせて戦後初期の教育・文化実践との関連を明らかにするため、関係者への聞き取り調査も行う。体験者の高齢化が進んでいるため、この点については優先的に実施していく予定である。 ③琉球大学を拠点に資料調査と研究者とのつながりをさらに深め、自身の研究課題に関する情報収集と交流を積極的に行いたい。 研究成果については沖縄文化協会2024年度研究大会発表会、第16回アジア児童文学大会にて発表することを目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)