Project/Area Number |
22K02309
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野々村 淑子 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (70301330)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 産み育てる身体 / 女の身体 / 助産救貧 / 医療救貧 / 助産学 / 胎児 / 産科学 / 医学 / 子ども / 産む身体 / 助産 / 科学化 / 18世紀イギリス |
Outline of Research at the Start |
本研究は、「産み育てる身体」が科学化され、女性の身体が胎児養育の「環境」と化していくプロセスを、イギリス史において解明するものである。すなわち、男性産婆、医者が、産科領域、通常分娩に携わるようになった18世紀イギリスの助産に関わる知とその教育の内容、方法等を通して、胎児の生命観、女性(妊婦)の身体イメージの変容とその意味を追究していく。 そのために、助産救貧事業の展開、そこでの助産実態と次世代訓練、さらにそれを支えた助産知の普及実態とその科学化の様相を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、基盤研究(C)「18世紀英国救貧事業の貧困児の生命・健康への配慮にみる家族・性差規範の形成」(2019~2021)の発展的形態として計画されたものである。新型コロナウィルス感染拡大のなかで当該研究の進捗が滞っているなかで、本課題が先に進んだ状況である。土屋敦・野々村淑子編著『医学が子どもを見出すとき: 孤児、貧困児、施設児と医学をめぐる子ども史』(勁草書房、2023年)を上梓、そのなかで序章および第二章「一八世紀イギリスの助産救貧をめぐる産み育てる身体の科学化――子どもの生命への配慮と女性産婆」を執筆した。この文献は、医学、医療実践が子どもを対象としたさまざまな場面にフォーカスを当てた論集である。特に、孤児、貧困児、施設児等の子どもの歴史を、保護や福祉の領域と、医療の領域が交差する地点において描く画期的な試みである。 私自身は、特に18世紀イギリスという、男性産婆(医師)が通常分娩の世界に参入し始めた時期に産婆としてその術を後世に残すために書物を書き残した女性たちの差異に注目し、産婆術を構成する知、科学と女性の身体との関係を論じた。胎児の生命が、出産の場においてなによりも重要視されていく契機を見て取ることができたことは、今後の研究の展開において特筆すべきことである。すなわち、女性たちが女性の身体を子どもの生命保護、成長の基盤、環境とし見做していく過程を解明する端緒となった。 なお、11月18日~19日に行われた九州教育学会ラウンドテーブルで行われた、先端技術の教育現場での活用に関する理論的・実践的報告をもとにその可能性と課題について議論がなされたが、そこで本研究の前提である養育・教育環境の科学化の観点から指定討論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究結果の概要に記したように、現在のところは18世紀イギリスに産婆術書、助産書を残した女性たちの知の特徴、その形成プロセスに着眼した研究を進めた。産婆の養成過程自体が変容しつつあった当時において、産婆となること、産婆として出産の場でその術を用いることの女性にとっての意味のズレを解明した。男性医師による助産科学に対する評価と、女性産婆の知識や技術への不満や鼓舞が複層しつつ、女性の身体への眼差しを科学という言葉で語り、対象化を進めていく。胎児の生命保護、維持を第一目的に据えていくことで、女性の身体は、それを可能にするための容れものとして、助産に携わる知識、技能が先鋭化されていく様相を、限定的ながら明らかにした。 延長していた基盤研究(C)「18世紀英国救貧事業の貧困児の生命・健康への配慮にみる家族・性差規範の形成」(2019~2021)との並行だったこともあり、研究の進捗としてはやや遅延状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、特にモンスターと呼ばれた‘異常’児出産に際する産婆の対応について、女性産婆、男性産婆双方の知識や技術の蓄積を精査し、それを産む女性の身体への眼差しを明らかにする。従来の研究では、出産する女性のイマジネーションとモンスターとの関係について言及されてきた。それに対して本研究では、産婆、医師が、その関係性をどのようにとらえたか、あるいはその類型化、種別化のプロセス、その仔細を明らかにする。彼ら/彼女らの議論のズレ、相違点の分析により、産む身体、女性の身体に関する知や技術の構造の解明に努める。
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