昭和初期国語教育実践における「読み」のあり方に関する実証的研究
Project/Area Number |
22K02557
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09040:Education on school subjects and primary/secondary education-related
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
山本 康治 東海大学, 児童教育学部, 教授 (10341934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 公美子 (北川公美子) 東海大学, 児童教育学部, 教授 (00299976)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 国語教育 / 文学教材 / 大正新教育 / ナショナリズム / 国定読本 / 口演童話 / 国定教科書 / 国語 |
Outline of Research at the Start |
大正新教育の影響を受け、子どもの自由な「想像」を尊重する「読み」が成立した。しかしながら昭和期に入ると、子どもの自由な「読み」は、次第にナショナリズムに組み込まれ、主体的で多様的な子どもの「読み」と作者重視の一元的な「読み」の対立の中、次第にナショナリズムの枠に「囲繞された主体的な読み」に変容し、ひいては戦時下の硬直化した「読み」に展開していく。本課題研究では、昭和初期国語教育の「読み」を巡る変容について、教育実践の場を対象として実証的に明らかにすることで、日本の言語文化形成の一端を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
大正新教育の影響を受け、国語教育では文学教材において、子どもの自由な「想像」を尊重する「読み」が成立した。しかしながら、昭和期に入ると、子どもの自由な「読み」は、次第にナショナリズムの枠に収められ、「囲繞された主体的な読み」に変容していった。本課題研究では、そのプロセスを実証的に捉え、日本の言語文化形成への影響を検証することを目的とする。 研究系列Aでは、昭和初期に使用された第四期国定読本所収文学教材に内包されたナショナルな視点の形成プロセスについて明らかにするため、韻文教材が同読本に収められる際に行われた改稿過程についての調査、分析を行った。そこからは原詩の持つモダニズム性が捨象され、読者のナショナリズムへの共感を誘う形での改稿が見られることが明らかにした。また、その過程で、教師用指導書が改変内容を強化する方向で、授業実践の模範を示していたことも明らかとなった、なお、これらの成果は論文として公開した。 研究系列Bでは、昭和初期の国語科における文学教材の授業実践および幼稚園における言語教育実践史料の収集・分析により、子どもの「読み」(受容)のあり方について、ナショナリズムとの関わりについて継時的に明らかにすることを目指した。当時の国語授業で使用された児童・生徒の授業ノートへの調査を行い、授業実践の場において、「子ども主体」の姿勢を持ちつつも、ナショナリズムを標榜する観点が矛盾なく教授されている実態を捉えることができた。 研究系列Cでは、課外読物や子どもが受容したメディア情報を収集し、その受容の実態について継時的かつ実証的に研究を進めた。日本童話連盟の機関誌『話方研究』の調査を行い、そこから童話の話し方について、全国の幼稚園、小学校等で講習会が開かれていたこと、また、そのことが教育内容に強い影響を与えていたことが明らかとなった。なお、これらの成果は論文として公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、前年度の新型コロナ感染症対策に伴う出張制限、訪問予定機関(大学図書館、公立図書館)の利用制限を受けた資料収集遅延により、計画よりも調査研究が遅滞した。ただし、前年度遅滞分を含め、実施された調査研究においては概ね当初の見込み通りの成果を得ることが出来た。各研究系列の進捗状況は、以下のとおりである。 研究系列Aでは、昭和初期に使用された第四期の国定読本の所収の韻文教材に内包されたナショナルな視点の生成プロセスについて明らかにした。同教材の初出形は、『満州補充読本』(昭和8年)の載せられたもので、そこではモダニズムの影響を受け、精緻な形での現実描写がなされており、特に、満州の子どもに対する親和性を読み取ることができるが、一方、第四期国定読本所収版(昭和12年)では、そのような記述は削除され、国威高揚のナショナリズムに立脚した内容に改変されている。各社から発行された教師用指導書においても、その改変を踏まえた授業実践事例が模範として挙げられており、第四期国定教科書のナショナリズムに立脚した編集方針の、教材への反映の実態を明らかにすることができた。 研究系列Bでは、国語科文学教材の授業実践における子どもの「読み」の実践記録、幼稚園の教育実践記録の収集と分析を行った。国語教育については、引き続き、鳴門教育大学附属図書館所蔵史料に対する調査を行い、当時の児童・生徒の授業ノートからナショナリズムに誘う、授業の実態を捉えることができた。また、幼稚園におけるお話し、童話会等の実践記録の収集と分析も継続的に行った。 研究系列Cにおいては、日本童話連盟機関誌『話方研究』の調査結果の分析を中心に行った。特に口演童話が、幼稚園、小学校等の教員研修を通して、童話教育に大きな影響を与えたこと、特にナショナリズムの意識形成に寄与していったことが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の各研究系列の研究計画は以下のとおりである。2023年度遅滞した訪問調査も含めて実施する予定である。 研究系列Aでは、昭和期に使用された第四期国定読本所収文学教材に内包されたナショナルな視点の形成プロセスについて明らかにするため、前年度に引き続き、同教材の言説分析、および第三期国定読本との比較研究を行う。また、これらの国定読本所収文学教材に対する同時代での評価を明らかにするため、東京高等師範学校と同附属小学校、及び各地(北海道、東京、奈良)の師範学校(附属小学校)機関誌に対する調査を行う。 研究系列Bでは、引き続き、昭和初期の国語科における文学教材の授業実践および幼稚園における言語教育実践史料の収集・分析により、該当時期の子どもの「読み」(受容)のあり方について、ナショナリズムとの関わりのプロセスを踏まえ明らかにする。国語科文学教材の授業実践の範型が示されている、各出版社による教師用指導書に対する調査を行うとともに、高等師範学校、師範学校及び同附属小学校(北海道、東京、奈良、岡山等)の機関誌、教育講習会記録等の実践記録、教案等から、子どもの「読み」の形成過程について実証的に明らかにしていく。また、幼稚園教育については、童話教育関連団体機関誌への調査、各地の公立図書館(郷土資料等)所蔵史料調査をとおして、お話し、童話会等の実践記録の収集と分析を図り、大正新教育のもたらした「児童主体」の考え方が、どのように国家主義的思想に変位していったのかについて、そのプロセスを実証的に明らかにしていく。 研究系列Cでは、課外読物や子どもが受容したメディア(少年雑誌、ラジオ放送記録)についての記録の収集を行い、その実態について継時的かつ実証的に調査を進める。特に、口演童話の全国的な展開状況と地域ごとの特徴について調査・分析を進めていく予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)