資質・能力育成を志向する中等化学教育のためのグリーンケミストリー教材の開発と評価
Project/Area Number |
22K02989
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09080:Science education-related
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
今井 泉 東邦大学, 理学部, 教授 (80711390)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | グリーンケミストリー / グリーン・サステイナブル ケミストリー / 化学実験 / 教材評価 / 生分解性樹脂 / 触媒 / 中等化学教育 / 資質・能力育成 / 教材 |
Outline of Research at the Start |
本研究では, 1)東南アジアにある現実社会の課題の解決に結び付き科学的探究の必要性が実感できるグリーンケミストリー教材を選定し,2)化学の基本概念における資質・能力指向の文脈を基盤とした授業デザインをする. そして, 3)東南アジアと日本の後期中等教育段階で授業を実施し, 4)教材の評価を行うとともに探究的な学びのために理科教師に必要な知識に限定する形での国際比較調査を実施する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)生分解性樹脂であるポリ乳酸の加水分解経過を追跡するグリーンケミストリー教材を開発した。また、(2)塩化コバルトを用いた触媒作用を可視化する教材を開発し、環境負荷及び安全性を定量的に評価するための評価軸を試作した。 (1)ではポリ乳酸を分解し、その分解を予めフィルムに取り込ませた色素の溶出によって定量する方法を使用し、塩基(水酸化ナトリウム)と酵素(プロテイナーゼK)による3Dプリンタ用ポリ乳酸の反応経過を追跡した。その結果、時間とともに色素濃度が増加し、分解した質量とも相関性が見られたため、色素による追跡は可能であると判断した。そこで、タイのコンケン県にある国立の高等学校2年生を対象に、各班で小型吸光度計(ヤマト科学, PiCOEXPLORER PAS-110-YU)を用いた実験授業を実践した。その成果を日本化学会第103春季年会で口頭発表した。 (2)では、第一段階として触媒作用をもつ塩化コバルト溶液を添加しない反応として、硫酸酸性下で酒石酸溶液と二クロム酸カリウム溶液の酸化反応速度を吸光光度計(HITACHI U-5100)を用いて定量的に追跡した。この実験を環境負荷と安全性の視点から新規に構築した評価軸を用いて評価した。その結果を踏まえ、タイのバンコクにあるカセサート大学教育学部の学生対象に小型吸光度計(既述)を用い、新規に構築した評価軸を使った実験授業を実施した。その成果を日本化学会第103春季年会で口頭発表した。また、現在、日本のグリーンケミストリーであるグリーン・サステイナブル ケミストリーの概念から新規に構築した環境負荷と安全性の視点を取り入れた実験教材の評価方法について、日本科学教育学会『科学教育研究』に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリーンケミストリーは非常にグローバルなテーマで、多文化な化学教育の教材に適していることが、(1)タイの高等学校2年生への授業実践や、(2)タイの教育学部の学生への授業実践から明らかになった。 (1)に関連する実践として、既に東南アジアの材料である天然樹脂(ラックカイガラムシからの分泌液であるプラスチック)を用いた分離・抽出実験を日本とタイの大学生に試行し、実験教材としての有効性を確認している。ラックカイガラムシからの分泌液である天然樹脂(シェラック)やポリ乳酸などの生分解性樹脂を用いた実験は、高校生にとって単なる化学実験に留まらず、現実社会の課題の解決に結びつき、多くの生徒に科学的探究の必要性が実感できる内容と関連している。すなわち、発展的な内容に関して生徒が主体的に探究する学びとなる。本年度は第一段階として、人と環境にやさしく持続可能な社会の発展を支える化学であるグリーンケミストリーに関する実験教材の基盤ができた。 (2)では、実験教材そのものを評価するための評価軸の構築に向けた試作を行なった。具体的には、日本のグリーンケミストリーであるグリーン・サステイナブル ケミストリーの評価の背景にあるライスサイクルアセスメントの考え方を取り入れ、4つの評価軸を試作し、環境負荷の観点から①「地球からもらうエネルギー」、②「地球からもらう試薬量」、③「地球へ戻す廃棄量」とし、安全性の観点から④「人体への安全性」の四軸とした。そして、①から④の評価の結果よりレーダーチャートが作成され、面積が小さいほど環境負荷や安全性の観点が優れている実験教材となる。 以上の(1)(2)の成果により、東南アジアの材料も加えた生分解性樹脂に関連したグリーンケミストリー実験教材は、発展的な内容に関する探究的な学習の教材となりうることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)生分解性樹脂の分解過程を追跡するグリーンケミストリー教材については、タイの高校2年生に実施したため、次年度は日本の高校2年生または3年生に発展的な探究課題として実施し、その有効性を評価する。そして,発展的な内容に関する探究的な学習の教材として東南アジアの材料を用いたグリーンケミストリーに関する教材は,東南アジアと日本の高校生に科学的探究の必要性が実感できる内容となるのか,また,科学的な問いや実験方法を考えさせる探究的な学びを実感させることができるかなど, 探究的な学びの指導に必要な要素を解明する。 次年度後半では、ライフサイクルアセスメントの視点で、分解した生分解性樹脂を分離・精製し、元の生分解性樹脂を合成する実験教材を開発し、評価する。 (2)今年度はマイクロスケール実験をはじめ、いくつかの化学実験を環境負荷と安全性の視点から新規に構築した評価軸を用いて評価したため、次年度は、その評価軸をもとに、環境負荷と安全性に配慮したグリーンケミストリー化学実験を設計する。 また、(2)で新規に構築した評価軸を用いる評価方法について、7月28日から30日にマレーシアのクチンで開催される9th network of Inter-Asian Chemistry Educators(9NICE)Conferenceでポスター発表し、東アジア・東南アジアにおける有効性について考察する。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)