Project/Area Number |
22K03552
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13040:Biophysics, chemical physics and soft matter physics-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江端 宏之 九州大学, 理学研究院, 助教 (90723213)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 濃厚コロイド懸濁液 / マイクロレオロジー / 非熱揺らぎ / 非ニュートン流動 |
Outline of Research at the Start |
生細胞の細胞質は複雑かつ不均一であるために特定の物理量を系統的に制御することが難しく、非熱的揺らぎが細胞質のレオロジー変化を介して細胞質内の物質の輸送効率をどのように制御しているかを究明することは困難である。本研究では細胞質の無生物系でのモデルとしてガラス転移点近くの濃厚コロイド懸濁液を用い、1粒子スケールで局所的に加えられた非熱的揺らぎとガラス状物質中の粒子の輸送効率の関係を調べる。多重フィードバック機構を用いた光ピンセット法によるマイクロレオロジー計測から、細胞質などのガラス状物質の流動化メカニズムの解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
細胞質にはタンパク質などメソスケールのコロイド成分がガラス化するほど高濃度に含まれている。生細胞においては、代謝活動に伴う生体高分子が周囲に生み出す非熱揺らぎにより、ガラス様の細胞質の流動性が保たれていると考えられている。しかし、細胞質を含む高密度粒子系において、粒子に加えられた非熱的揺らぎが系のレオロジーを制御するメカニズムは明らかでない。本研究では、細胞質のモデル系として高濃度コロイド懸濁液を用い、非熱揺らぎによる高密度粒子系の流動化メカニズムを明らかにすることを目指す。本年度は、実験と数値計算を用いてガラス転移点に近い濃厚コロイド懸濁液のレオロジー測定を行った。実験・数値計算共に、濃厚コロイド懸濁液中の粒子に長時間一定の力を加えることで定常せん断粘度を測定した。実験においては、0.1~0.3 pN程度の弱い牽引力で、牽引力が上昇するほど粘性が上昇するshear thickeningが現れることが分かってきている。また、数値計算において2次元の濃厚コロイド懸濁液の粒子牽引を用いた定常せん断粘度測定を行った結果、実験と同様に非常に弱い牽引力(0.01~0.1 pN)の領域でshear thickeningが現れることが分かった。数値計算においては粒子間の流体相互作用は考慮していないため、このshear thickeningは粒子の排除体積効果により現れていると考えられる。また、数値計算において牽引力を時間と共に徐々に増加しながら粘度測定を行った。その結果、shear thickeningが起こる牽引力の領域が、一定牽引力の場合に比べて拡大することが分かった。一方で、牽引力が十分大きい条件ではshear thinningを起こし、一定牽引力による測定結果と粘性が一致することが分かった。これは、shear thickeningが強い履歴依存性を持つことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値計算により、実験で測定された弱い牽引力領域のshear thickeningを定性的に再現した。また、数値計算で現れた履歴依存的なshear thickeningは実験においても観測されている。このような弱い力に対する濃厚懸濁液のshear thickeningは実験・数値計算共にこれまで報告されていない。これまでの濃厚懸濁液におけるshear thickeningはマクロレオメーターによる測定で報告されており、せん断応力の大きい領域で観測されてきた。また、流体相互作用と粒子間摩擦により駆動されることが分かっている。一方で、今回の数値計算により弱い力に対するshear thickeningは粒子の排除体積効果により現れることが分かってきており、これまで観測されていたshear thickeningとは異なるメカニズムで現れていると考えられる。また、アクティブガラスと考えられている細胞質において、細胞内の非熱揺らぎの大きさが定常せん断粘度に与える影響についても測定を行った。薬剤により代謝を抑制し、細胞内の非熱揺らぎの大きさを系統的に変えながら粘度測定を行った結果、非熱揺らぎが小さくなるほど細胞質の粘性が上昇することを示した。これにより非熱揺らぎにより細胞質が流動化していることを直接的に示すことが出来た。次に、マクロ系濃厚粒子系における非熱揺らぎと流動性、構造形成の関係についても検討した。異なる粒径と流動性をもつ粉粒体を混合し、水平方向の周期的外力を加えると異なる粉粒体が分離し様々な時空間パターンを示すことを見出した。このような構造形成は粉粒体の流動性の履歴依存性、振動流、サイズ分離現象の相互作用により現れることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの数値計算により小さい力に対して起こるshear thickeningは排除体積効果により起こることが示されている。これは、牽引粒子周りの粒子配置(粒子集団の構造)の変化がshear thickeningを誘起していることを示唆している。そこで、実験においては粒子配置の精密な測定が難しいため、数値計算によりshear thickening時の粒子構造の変化を測定する。特に、ガラス転移点付近において濃度を変えながら粒子牽引時のinherent structureを計算し、エネルギーランドスケープ描像によるshear thickeningの説明を試みる。次に、牽引粒子に非熱揺らぎを加え、流動化が起こる条件を明らかにする。牽引力が大きくなるにつれて牽引粒子が間欠的に急激に動くホッピング運動が現れることが分かっている。このようなホッピング運動が現れると粘性が急激に低下し、shear thinningが観測される。したがって、効率的な流動化のためにはホッピング運動を誘起すればよいと考えられる。現在、数値計算においては牽引粒子に単一周波数の振動力を加えても有意な粘性の変化は観測されていない。今後は、幅広い周波数・力の振幅に対して粘度変化の相図を作成する。また、単純な単振動だけではなく、ランダムな外力や自己駆動粒子のような時間相関のあるランダム力、粒子速度の変化に対してフィードバックを持つ力など様々な非熱揺らぎに対して測定を行い、より効率的にホッピング運動と流動化を誘起する条件を明らかにする。また、無生物系のコロイド懸濁液に対応する生物系の実験として、細胞内における定常牽引実験も進める。薬剤の添加により細胞内の非熱揺らぎの大きさを変えながらレオロジー測定を行い、非熱揺らぎの大きさから実効温度を求める。実効温度により細胞内のせん断粘度、粘弾性の大きさの変化が説明できるか検証する。
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