南半球における超高エネルギー宇宙ガンマ線観測で解明する銀河系宇宙線起源の謎
Project/Area Number |
22K03660
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15020:Experimental studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐古 崇志 東京大学, 宇宙線研究所, 特任助教 (00705022)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 宇宙線物理 / 銀河系宇宙線の起源 / 超高エネルギー宇宙ガンマ線観測 |
Outline of Research at the Start |
宇宙線(宇宙から飛来する陽子・ヘリウム等の原子核)はどこでどのようにして生まれるのか?という宇宙線物理学最大の謎を解明するには、電波、X 線から PeV (=10^15 eV)ガンマ線にわたる広範囲のエネル ギーバンドでの宇宙の観測が不可欠である。本研究では、ボリビア・チャカルタヤ山中腹に sub-PeV 領域ガンマ線の広視野連続観測を行う世界初の施設を建設する。銀河系中心、若い超新星残骸や星形成の活発な領域などからのガンマ線を極高感度で観測し、銀河宇宙線の起源の謎に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、宇宙線の発見以来100年以上未解決の謎:「銀河宇宙線はどこでどのように加速されている のか?」を解明しようとしている。そのために必要不可欠な sub-PeV 領域の超高エネルギーガンマ線観測を目的として、南半球に位置するボリビア・チャカルタヤ山中腹(標高4740 m、南緯16度、西経68度)においてALPACA実験を開始する。ALPACA実験装置は、401台のプラスチックシンチレーション検出器から成る有効面積 83,000 平米の地表空気シャワーアレイ (AS ア レイ) と、総面積 3,600 平米の地下水チェレンコフ型ミュー粒子検出器アレイ (MD アレイ)から構成される予定である。南半球で現在稼働中あるいは数年以内の将来計画で、sub-PeV 領域のガンマ線に感度を持つ 観測装置は ALPACA 実験以外に無く、ALPACA 実験は、南天における超高エネルギーガン マ線天文学・天体物 理学の開拓を目指す先駆的な実験と言える。 本年度は ALPACA 実験の前段階として前年度に建設した 1/4 スケールの ALPAQUITA AS アレイ(プラスチックシンチレーション検出器 97 台)について、すべての検出器のゲイン/タイミングの較正を実施した。現在、「600ns以内に任意の4台が0.7粒子以上検出」という条件のもと、約250Hzのトリガー頻度で順調に空気シャワーのデータを取得している。 2023年4月7日から2023年11月30日まで225日間のデータを解析した結果、月の影(地球 に向かって飛来する宇宙線が月に遮蔽された結果、月方向の宇宙線フラックスが減少する現象)が、期待値通り8シグマを超える統計的有意性で観測され、データ取得が順調に進んでいることが確認された。また、月の影から見積もられたALPAQUITA AS アレイの角度分解能は約1.0°となっている。 2024年度には MD アレイ 1 プール分を建設して ALPAQUITA AS アレイと連動させ、南天で世界初となる sub-PeV 領域での宇宙ガンマ線広視野連続観測を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AS アレイのデータ取得および解析は順調に進んでいる。宇宙線・宇宙ガンマ線は、地球の大気中で核子・電磁相互作用を連鎖的に引き起こし、多数の二次粒子を含む空気シャワ ーが地表に降り注ぐ。AS アレイ検出器に空気シャワー中の荷電二次粒子が入射すると、二次粒子はシンチレータ中でエネルギーを損失する。そのエネルギー損失の量に応じてシンチレータが発光し、放出された光子は下部に取り付けられた光電子増倍管まで直接あるいは検出器内を反射して到達し、その後光電子増倍管によって検出・増幅され、電気信号が出力される。各検出器について、信号の電荷量と検出器がヒットした時刻を記録する。 検出器間の時刻の差をもとに、宇宙線の到来方向を求め、電荷量の情報から宇宙線のエネルギーを求めることができる。到来方向・エネルギー決定精度の評価のために宇宙線フラックス中の「月の影」を観測したところ、期待通りの結果を得られた。 一方、地下水チェレンコフ型ミュー粒子検出器アレイ (MD アレイ)の建設については、ボリビア側の研究者と隔週でのオンラインミーティングを行っている。水槽内を空気シャワー中のミュー粒子が通過した時に放射されるチェレンコフ光をタイベックシートで反射させ、天井に取り付けた 20 インチ PMT で検出する。ミュー粒子は地下の水槽まで貫通してくるのに対して、空気シャワーの電磁成分は 2.5 m 厚の土壌で遮蔽される。宇宙線由来の空気シャワーはガンマ線由来のものと比べて約 50 倍ものミ ュー粒子を含むので、MD アレイを用いてミュー粒子数の少ない空気シャワーを選択するこ とで、宇宙線雑音を除去してガンマ線事象を抽出できる。 MD アレイに注入する水の確保と水質の検査は無事に完了した。MD コンクリート躯体の構造、ボリビアでの建設業者の選定等についても最終段階に入っており、2024年夏には900平米(1プール分)を建設できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024 年度夏に MD アレイ 1 プール分(面積 900 平米)を建設し、ALPAQUITA AS アレイと連動実験を開始する。過去には、米国の CASA-MIA 実験が 2,500 m2 のプラスチックシンチレータから成るミュ ーオン検出器を持っていたが、シンチレータは低エネルギー環境放射線にも反応してしまう ため、効率的に空気シャワーに付随するミューオンのみを検出することが困難であった。一 方で、低いエネルギーの環境放射線は水中でチェレンコフ光を出さないため、水チェレンコフ型ミューオン検出器を用いれば環境放射線の 影響を抑えることができる。また、シンチレー タに比べて安価なので検出器を大面積に展開でき、効率良くガンマ線に対する感度を向上さ せることができる。 2024年秋からASアレイとMDアレイの連動観測を開始する。2024年度は本研究課題の最終年度である。数ヶ月分の初期データを解析し、南天で世界初となる sub-PeV 領域での宇宙ガンマ線広視野連続観測を行う。いくつかの非常に明るいガンマ線天体、特に、sub-PeV 領域で非常に大きなフラッ クスが期待される正体不明の未同定天体 HESS J1702-420A について詳しく解析を行う。これらの天体について 10 - 1000 TeV でガンマ線のエネルギースペクトルを測定する。スペクトルと合わせて、ガンマ線放射領域の形状を調べることも助けになる。電子 由来のガンマ線の放射領域は、X 線で見られる電子のシンクロトロン放射の領域と相関する。 一方で、宇宙線由来のガンマ線を放出する中性パイオンは、宇宙線が加速源周辺の分子雲等 と衝突して作られ、分子雲の分布は電波での観測から導出できる。したがって、ガンマ線放 射領域の形状が、電波観測による分子雲の分布と一致していれば、観測されたガンマ線が中 性パイオン経由のものである可能性が高くなる。 以上の解析から PeV 銀河宇宙線加速の可能性を議論し、論文にまとめる。
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Report
(2 results)
Research Products
(34 results)