超高真空環境と高速通電加熱を利用した高融点金属の超高温比熱と放射率の測定
Project/Area Number |
22K04679
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26010:Metallic material properties-related
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
渡辺 博道 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (10358385)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 高融点金属 / エンタルピー / 比熱 / 放射率 / 熱量法 / 発生ガス分析 / カーボンナノチューブ / 黒化膜 / 電気抵抗率 / 融点 / 高温 / 侵入型不純物 / 空孔濃度 |
Outline of Research at the Start |
Ta等の高融点金属の融点における比熱と全放射率を正確に測定するためには、試料からのガス放出の影響を排除する必要が有る。従来、この問題を克服するため超高圧環境下で試料を超高速加熱する非常に実現が難しい実験が試みられていた。本研究では、この問題を克服する手法として、超高真空環境において階段状に試料を高速通電加熱する技術を新たに開発し、高融点金属の融点近傍における比熱と全放射率を正確に測定する。
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Outline of Annual Research Achievements |
タンタル(Ta)は、非常に高い耐食性と融点を持つ耐熱金属である。さらに、タンタルは他の耐熱金属と組成全域にわたる固溶体を形成する特性を持つため、タンタルは次世代超合金の有力な候補である耐熱高エントロピー合金(RHEAs)の有力な成分元素候補と考えられている。しかしながら、固相のタンタルのエンタルピーとその温度導関数(比熱)およびに放射率は、通常の圧力条件下でも、タンタルの融点(Tm = 3293 K)の近傍においては正確に決定されていない。タンタルは、高真空・高温下において大量の気体を吸収するゲッター効果を有することが知られている。過去の融点近傍での熱物性測定は不活性雰囲気もしくは高真空環境(圧力10の-5乗 Pa以上)で行われており、加熱時に残留水蒸気/酸素の吸収/放出は避けられず、何らかの速度論的な副反応が生じた可能性がある。そこで、本研究では、残留ガスが関与する副反応による熱収支の違いを考慮して、同一試料に対して静的測定と動的測定をほぼ同時に実施できる多段階パルス通電加熱法により、1000~3230 Kにおけるタンタルのエンタルピー測定を行った。また、測定中に吸収/発生する気体分子を同定するため、新たに4重極質量分析装置(QMAS)を測定チャンバーに装備し、実験中、約1600 K以上においてH2が放出し、続いて、約1950 K以上においてCOの急激な放出が確認され、その気体放出現象が熱物性測定値に影響を与えていることを明らかにした。また、ターボ分子ポンプ2台をタンデム接続した超高真空排気系の開発を行い、真空度が10の-7乗Pa以下の超高真空環境へ測定チャンバーを到達させることに成功した。また、超高温放射温度測定に必要なカーボンナノチューブ黒化膜を金属試料表面に成長させる上で、成膜雰囲気と金属基板の酸化還元能が与える影響の評価を行い、最適な成膜条件を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、従来の高温熱物性に関する実験的研究において、考慮が十分になされていない高温金属表面での金属-気体反応の効果を明らかにした上で、その影響を排除するための超高真空環境を直接加熱熱量法に組み込み、高融点金属の融点近傍における比熱/エンタルピー/放射率を正確に測定することを技術的な目標とする。そして、このようにして得られた純粋な高融点金属の比熱等の温度依存性から、融点近傍における熱空孔の平衡濃度を決定することが学術的な主要目標である。当該技術目標に関しては、前節に提示したように順調に進展し、タンタルの測定に際して行った発生ガス分析により、試料からの水素と一酸化炭素の放出及びにそれに伴う何らかの物質・熱移動が熱物性の測定値に影響を与えていることを明らかにした。また、3000℃を超える試料の温度を正確に測定することが、高温熱物性測定の正確性向上に必須であるが、カーボンナノチューブ黒化膜を安定して金属表面に成長させる技術の確立に成功しており、今後、カーボンナノチューブ黒化膜を用いて試料温度を決定する放射温度計測の精密な校正を実施することで測定値の信頼性を更に向上させることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
既に構築した高真空環境においてQMASによる高温ガス分析を併用しつつ高温熱物性を測定するシステムを用いて、様々な金属/合金についての測定を実施して、金属-気体反応が高温熱物性に与える影響の評価を進めると共に、熱拡散率の測定機能を立ち上げて工業的なニーズが高い高温における金属/合金の熱伝導率の測定値を集積する。そして、超高真空環境での測定が可能なシステムも完成させ、最も重要な高融点金属であるWとMoについて融点近傍での比熱・放射率測定を行い、融点近傍での熱空孔の平衡濃度を決定する予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)