Project/Area Number |
22K05021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井内 哲 名古屋大学, 情報学研究科, 助教 (50535060)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2025: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 遷移金属錯体 / 量子化学 / 励起状態 / モデルハミルトニアン / 励起状態ダイナミクス / 分子シミュレーション |
Outline of Research at the Start |
遷移金属錯体における光励起後の緩和過程の詳細を調べるには、励起状態の量子化学計算と無輻射遷移を考慮する非断熱動力学計算を組み合わせたシミュレーションが有用であるが、現実的な計算コストに抑える必要がある。我々は、計算コストを抑える一つの試みとして、鉄(II)のプロトタイプ錯体の励起状態を高速計算できる計算法を開発してきている。本研究では、Cr(III)錯体を主な対象にした研究を通じて、この方法の適用範囲を広げ、金属・酸化数・配位子の組合せで生じる種々の緩和過程を解明していくシミュレーションを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、鉄(Ⅱ)錯体のプロトタイプとして[Fe(bpy)3]2+錯体を対象に、励起状態を高速計算できるモデルハミルトニアンを開発してきた。本研究課題では、新たにクロム(Ⅲ)錯体を対象としてとりあげることでこのモデルハミルトニアンの適用範囲を広げる。それにより、種々の遷移金属錯体における光励起後の緩和過程を解明するための分子シミュレーションに適用できる方法へと深化させることを目標としている。 2年目である令和5年度は、前年度までの準備をもとに、研究協力者として安東秀峰准教授(山形大学)に参加していただき、アセチルアセトナトacacを配位子とするCr(acac)3に対してモデルハミルトニアンの構築を進めた。具体的には、Cr(acac)3錯体の4重項の基底状態と最低励起状態の構造を結ぶ経路に対して実行した高精度量子化学計算の結果を参照データとして、フィッティングでモデルハミルトニアン中のパラメータを決定した。次に、励起状態の安定構造やポテンシャルエネルギー曲線を計算することで、構築したモデルハミルトニアンの精度を調べた。この一連のプロセスで、モデルハミルトニアンの欠点や計算プログラムにおいて修正すべき点、フィッティングで考慮すべき点などを明らかにするとともに、これらの問題点に対する解決策を模索・適用してパラメータフィッティングと精度検証のプロセスを繰り返し実施した。 現報告時点では、4重項の基底状態と最低励起状態の構造を結ぶ経路に対して妥当なポテンシャルエネルギー曲線を計算できるモデルが構築できたが、励起状態の安定構造の再現性が不十分である問題点が解決すべき課題として残っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和5年度には、Cr(acac)3錯体のモデルハミルトニアンの構築を概ね終了させ、論文等にまとめることを目標にしていた。しかし、研究実績の概要で述べた通り、励起状態の安定構造を妥当に再現するという観点において、モデルハミルトニアンの精度が不十分と考えられるため、現状では安定構造の情報も参照データに含めた種々のフィッティングを模索し続けている。この過程では追加のプログラムの整備も伴うために想定以上の時間を費やしており、現状ではモデルハミルトニアンを構築中の段階が続いている。その結果、分子動力学シミュレーションを用いたモデルハミルトニアンの検証等も実施できていない。以上のことから、遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗は遅れているが、現時点では研究の方針自体を大きく変更するなどの検討は不要と考えている。これまでに整備した計算プログラムを用いて、安定構造の情報も参照データに含めたパラメータフィッティングによって、引き続き妥当なモデルハミルトニアンの構築を目指す。並行して、モデルハミルトニアンを用いた非断熱動力学計算の準備を進める。具体的には、鉄(Ⅱ)のプロトタイプ錯体に対して整備した非断熱動力学計算のプログラムを基盤に、金属種と配位子が異なることに伴って修正・追加しなければならない箇所を整備する。モデルハミルトニアン構築後は、新しく購入予定のワークステーションや名古屋大学のスーパコンピュータシステム等を利用して、すぐに非断熱動力学計算の実施に移る。また、クロム(Ⅲ)以外の錯体についてもモデルハミルトニアン構築を検討する。
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