Project/Area Number |
22K05035
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 32010:Fundamental physical chemistry-related
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齋藤 雅明 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (40832556)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 大規模複雑系 / 電子状態 / 電子相関 / 光化学反応 / 量子化学 / 酸素発生複合体 / 光合成 / 多参照摂動理論 / 内核X線分光法 |
Outline of Research at the Start |
酸素発生複合体 (OEC) は光合成系IIにおける活性中心であり、4核Mnクラスター化合物である。OECが触媒する水分解反応機構の詳細な理解を目的として、これまで様々な実験的・理論的研究が行われてきたが、その詳細には未解明な点も多い。そこで本研究では「高精度理論X線分光法」を用いて、その電子状態の解明を試みる。またMnクラスター周囲のタンパク場を包含した数百原子から成る実在的OECモデル分子に適用可能な、高精度かつ低スケーリングな電子励起状態理論を確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
大規模複雑系の励起状態計算のための基礎理論であるLVMO-PNO-NEVPT2法の開発を行なった[K. Uemura, M. Saitow, T. Ishimaru, T. Yanai, J. Chem. Phys. 158, 154110 (2023).]。静的電子相関のみならず動的電子相関も取り込むことができる多参照摂動理論であるNEVPT2法は、高精度である反面その計算コストの高さから100原子系程度にしか適用できなかった。本手法は、対自然軌道 (PNO) 理論を用いることでNEVPT2法のボトルネックを解消し、数百原子から成る大規模複雑系の高精度計算を可能とするものである。高精度NEVPT2法とPNO理論とを組み合わせる試みとしてはGuoらによるDLPNO-NEVPT2法[Y. Guo et al., J. Chem. Phys. 144, 094111 (2016).]がある。DLPNO-NEVPT2法では、コンパクトな仮想軌道表現であるPNOを構築する前段階の中間表現として、非直交な射影原子軌道 (PAO) を用いる。従って、PNO構築に際してPAOの直交化を行う必要があった。その一方で本手法では、PAOの代わりに正規直交基底である局在化仮想分子軌道 (LVMO) の線型結合としてPNOを構築する。従って本手法ではPAOに基づくDLPNO-NEVPT2法と比較して、プログラム実装および定式化がよりシンプルなものとなるという利点がある。歴史的には仮想分子軌道の局在化は、複雑な極値問題に帰着され、軌道局在化によく用いられる一次の軌道最適化アルゴリズムでは求解が困難であった。こういった経緯から非直交なPAOが導入された。本研究では、augmented Hessian法に基づく二次の軌道最適化ソルバーを開発し、この問題を解決することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大規模複雑系に適用可能な高精度電子論LVMO-PNO-NEVPT2法の開発を行なった。従来型の単状態(state-specific-, or SS-)NEVPT2法は、よく分離された電子状態については高精度であるが、円錐交差や擬交差といった種々の光化学反応計算では、エネルギー的に近接した状態間の相互作用の取り込みが重要となる。そこで申請者らは、大規模光化学反応計算のためのスケーラブルな電子論LVMO-PNO-QD-NEVPT2法の開発を行い、これに成功した [M. Hayashi, M. Saitow, K. Uemura, T. Yanai, J. Chem. Phys. Accecpted for publication] 。QD-NEVPT2法では、状態間の相互作用を擬縮退摂動 (QD) 理論により取り込む。QD理論は線形応答 (LR) 理論に基づく手法よりも高精度である反面、計算可能な状態数に制限があるという特徴がある。しかしながら、今回申請者らが開発したLVMO-PNO-QD-NEVPT2法であっても、大規模分子の内核励起スペクトル計算は可能である。今後はLVMO-PNO-QD-NEVPT2法を用いてOEC励起スペクトル計算を行う。更に、LR法に基づくMR-SOPPA開発も行い、この手法を用いてOECモデルに対する内核励起スペクトル計算も併せて行い、OEC電子状態の解明を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はLR理論に基づくMR-SOPPA法及び、PNO-MR-SOPPA法の開発を進めるとともに、これまでに開発したLVMO-PNO-QD-NEVPT2法を用いてOEC内核励起スペクトル計算を進める。MR-SOPPA法で解かれる固有値方程式は、数千項の複雑なテンソル縮約項からなり、これらを手動で導出しプログラム実装することは現実的ではない。そこで申請者は、MR-SOPPA固有値方程式の導出及び実装には申請者が先行研究で開発した多電子方程式の自動導出・自動実装ツールFemto [M. Saitow, T. Yanai, J. Chem. Phys. 152, 114111 (2020).] を用いる。まMR-SOPPA法を局在化対自然軌道 (PNO) 基底で展開し、大規模系にて適用可能なスケーラブルな高精度励起状態理論LVMO-PNO-MRSOPPA法へと拡張する。他の研究グループによっても、Femtoと同様な自動実装ツールは近年、盛んに開発が行われているが、PNO表現での多電子方程式の自動プログラム生成を可能とするものは申請者の知る限り、申請者らによるFemtoのみに限られる。今後は、MR-SOPPA法のみならずLVMO-PNO-MRSOPPA法の開発も自動実装ツールFemtoを用いて行う予定である。またLVMO-PNO-MRSOPPA法及びLVMO-PNO-QD-NEVPT2法を用いて酸素発生複合体 (OEC) モデル分子の内核励起スペクトル計算を行い、その電子状態の解明を目標とする。
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