温度昇降により水溶性ホウ素を分離する親水・疎水制御型ハイブリッド機能高分子の開発
Project/Area Number |
22K05178
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34020:Analytical chemistry-related
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
岩月 聡史 甲南大学, 理工学部, 教授 (80373033)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茶山 健二 甲南大学, 理工学部, 教授 (10188493)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
|
Keywords | ホウ素 / 温度感応性高分子 / 分離技術 / 回収技術 / 検出技術 / ハイブリッド機能材料 / 分離・回収・検出技術 / 環境調和技術 |
Outline of Research at the Start |
ホウ素は、科学技術を支える主要な元素である一方、排出規制物質でもあり、特に水溶性ホウ素の分離・回収技術には未だ課題が多い。本研究では、従来の樹脂による固相分離法よりも効率的に水溶性ホウ素を分離・回収可能な『親水・疎水制御型ハイブリッド機能高分子』を開発する。この高分子は、低温で水溶性であり、溶液状態で水溶性ホウ素を高速吸脱着できる。一方、高温では高分子が固化し、ろ過で簡単に分離できるため、温度変化とろ過だけでホウ素を分離できる環境にやさしい新技術となり得る。本研究はさらに、ハイブリッド機能高分子に検出センサー部位を導入し、ホウ素の分離・回収のみならず、検出も可能な多機能高分子の開発を試みる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、水溶性ホウ素の化学吸着部位を温度感応性高分子に導入した『親水・疎水制御型ハイブリッド機能高分子』を開発し、温度昇降とろ過により水溶性ホウ素を効率的に分離回収する環境調和型分離システムを構築・提案することを主な目的とした3年間の研究課題である。具体的には、温度感応性部位となるN-イソプロピルアクリルアミド(pNIPAAm)、水溶性ホウ素の化学吸着部位となるN-メチル-D-グルカミン(NMDG)、および、NMDGの導入に伴う高分子の過度な親水化を抑制するための疎水性部位を導入したハイブリッド機能高分子の合成検討を行っている。 今年度は、ハイブリッド機能高分子のNMDG部位による親水性を顕著に抑える疎水性部位であるスチレンの導入量を変化させ、より多くのNMDG部位をもつ温度感応性高分子の合成を検討した。しかし、スチレン導入量のわずかな違いにより、高分子の下限臨界共溶温度(LCST)が大きくシフトし、再現性に乏しいことがわかった。 そこで、各機能部位として組み込むモノマーの合成を再検討した結果、NIPAAmと同じアクリル基を有するNMDGモノマーとアニリンモノマーを両方を高収率で得る方法を見出した。これらのアクリルモノマーとNIPAAmの仕込み比を変化させた共重合体を合成したところ、高分子中にホウ素捕集のためのNMDG部位を30%程度導入しても、LCSTを50℃程度に制御できるハイブリッド機能高分子を再現性良く合成することができた。なお、アクリルモノマーはいずれもNIPAAmと同様に空気中で安定な固体であるため高分子合成における秤量等が簡単であり、様々な仕込み比で様々なLCSTをもつ高分子を合成できる点は特筆に値する。 以上のように、当初の狙い通りのハイブリッド機能高分子を合成できたため、最終年度である次年度には水溶性ホウ素の吸脱着実験を集中的に行う状況が整った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の分子設計として、温度感応性部位(NIPAAm)に親水性のホウ素化学吸着部位(NMDG)を導入すると、水への溶解度が上昇する、すなわちLCSTが上昇するが、これを疎水性部位を導入することで抑制すれば、室温付近では水溶性、60℃程度以上で不溶性となるハイブリッド機能高分子となると考えていた。今年度は、最終的に狙い通りのハイブリッド機能高分子を、各機能性モノマーを特定の割合で共重合させることにより再現性良く合成できた点は大いに評価できると考える。また、今回見出したモノマー合成法では、高純度の目的物が高収率で得られており、予想を超える成果である。一方で、水溶性ホウ素の捕集に伴う高分子のLCSTへの影響や、ホウ素の化学吸着能に関しては最終年度に持ち越しとなり、やや当初の計画より遅れている。以上を総合的に評価し「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度得られたLCSTが50℃程度のハイブリッド機能高分子を用いて、水溶性ホウ素(ホウ酸)の化学吸着試験や脱着試験を行う。捕集実験は、室温付近でホウ酸溶液に高分子を溶解して均一溶液中で化学吸着後、LCST以上に昇温して熱時ろ過により分離し、高分子へのホウ素捕集率を求める。脱着実験は、化学吸着後の高分子を酸性水溶液に溶解してホウ酸として解離させ、再びLCST以上に昇温することにより、ホウ素の脱着挙動を調べる。なお、ホウ素の化学吸脱着過程は均一溶液中であるため、高分子によるホウ素の化学吸着反応、すなわち高分子中のNMDG部位とホウ酸との錯体形成反応の安定度定数や化学吸着反応速度を測定し、固相吸着の場合と比較することにより、温度感応性高分子の有用性を評価する。 なお、ホウ酸がNMDG部位と錯体形成反応すると、キレートホウ酸錯陰イオンとなり負電荷をもつため、水溶性が向上してLCSTが上昇する可能性がある。このようなホウ素の化学吸着に伴うLCSTの変化を調べることにより、最も簡単に水溶性ホウ素を分離できるLCSTを見出す。このLCSTの制御は、今年度見出した方法である疎水性アニリン部位の導入量の変化を利用する。 以上の検討を集中的に行い、ハイブリッド機能高分子を用いた温度昇降による水溶性ホウ素の分離法の評価および最適条件の確立を行う。
|
Report
(2 results)
Research Products
(1 results)