Project/Area Number |
22K05347
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 37030:Chemical biology-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
金森 功吏 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (90633446)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 光増感剤 / turn-on光増感能 / GLUT / GFP色素 / 光線力学治療 / タンパク質光ノックダウン / PDT / 分子ローター |
Outline of Research at the Start |
がんの3大治療法(外科手術、化学療法、放射線治療)に変わる、または併用する治療法として、光と光増感剤をもちいる非侵襲な光線力学療法(PDT)が注目されている。既に光増感剤は医薬品として上市されているが、標的部位への集積性の課題や、 排出されずに体内に残った状態で自然光を浴びることで生じる光過敏症などの課題を有している。そこで本研究では、がん細胞で高発現するタンパク質を標的とし、これらに結合した際にのみ光増感作用を示すturn-on型光増感剤の開発を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光過敏症などを低減する低副作用な光線力学治療法や、標的タンパク質の選択的光ノックダウン法の開発を目指し、標的タンパク質に結合した際や標的環境で光増感する次世代光増感剤の開発を目的としている。筆者はこれまでに粘度応答性に優れた種々のGFP色素を開発し、リガンドとコンジュゲートした蛍光プローブ開発を行ってきた。これらの知見と高い増感能を示す色素構造を用いることで、turn-on型光増感剤の開発を進めている。用いている蛍光色素は励起状態で分子内ねじれを起こし無蛍光性となるが、この原理を応用し標的タンパク質結合時や高粘度環境で分子内ねじれを抑制し、光増感能を発現する新規分子の開発を行っている。 これまでに、分子内ねじれが抑制される高粘度溶媒(グリセロール)中において、光増感能を示す色素分子を見出していた。次年度では、高粘度環境での光増感能測定の評価系の再現性が低いことがわかったが、化合物の精製法や光照射条件等を検討し、再現性の高いデータを得ることができた。現在は、従前と異なる置換基の導入を進めている。また、筆者はこれまでに種々のがんで発現が亢進しているGLUTを標的とし、GLUTに結合した際に光るturn-on型蛍光プローブの開発を進めていたが、阻害実験や免疫染色実験から、必ずしもGLUT選択的ではないことが示唆された。再度分子設計を行い、グルコサミンとGFP色素を繋いだコンパクトな分子を用いたところ、細胞内から蛍光シグナルが得られた。阻害実験から、GLUTを介した細胞取り込みであることが示唆され、細胞内粘度等に応答して細胞内から蛍光を示したことが考えらえる。今後、この基本骨格にturn-on光増感能を付与していくべく検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度では、前年度から引き続き高性能なturn-on光増感剤開発を進めていたが、高粘度環境での光増感能測定を重ねるうちに再現性が十分ではないことが明らかになった。要因としては、GFP色素誘導体の純度や光照射条件が考えられた。今回のGFP色素誘導体は比較的不安的であり精製中に一部分解することが分かっており、精製法を詳細に検討した。順相シリカゲルカラムのシリカゲルの種類や、それ以外の分離法として逆相カラムやGPCカラム、またそれぞれの溶媒系などを詳細に検討し、順相カラムとGPCを組み合わせて、溶媒系を適切に選択することで目的物を純度よく精製する条件を見出した。一方、本研究の土台となるturn-on型蛍光プローブとして、これまではリガンド(グルコース)とGFP色素を数ペプチド残基で連結させた分子を用い、がん細胞(PC-3)の細胞膜周辺から無洗浄でturn-on蛍光シグナルを得ることに成功していたが、GLUT1の免疫染色の結果、必ずしもGLUT選択的ではないことがわかった。このような背景踏まえ、GLUTに認識されうる小型なグルコースアナログの開発を志向し、2-アミノグルコサミンにGFP色素誘導体をコンジュゲートさせたコンパクトな分子を新たに開発した。既存の蛍光グルコースアナログである2-NBDGと同様にGLUT経由で細胞内に取り込まれることを期待した。細胞内は数百cP(センチポアズ)程度の粘度があり、細胞内粘度などによるturn-on蛍光を期待した。その結果、GFP色素-グルコサミン誘導体を細胞に添加して洗浄なしで観察すると、細胞内から明瞭な蛍光シグナルを得られた。阻害実験からGLUTを介した取り込みを示唆する結果が得られ、期待した機構で取り込まれていると考えられる。既存の2-NBDGの洗浄ありの場合の1/10以下の濃度で2-NBDG以上の強度で蛍光イメージングを達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、GLUTを標的としてそのリガンドとしてグルコースとGFP色素誘導体をペプチド残基で繋いだ分子を用いていたが、今後はがん細胞への選択的な集積が期待できる新たに見出したGFP色素-グルコサミン誘導体を基本骨格に変更する予定である。このGFP色素に独自の化学修飾を導入して光増感能を付与し、がん細胞特異的にturn-on増感能を示す分子の開発を進める予定である。 一方、2023年度で検討したGFP色素とグルコースをペプチド残基で繋いだプローブは、非腫瘍細胞(RAW264.7)では蛍光シグナルをほとんど示さないことからがん細胞選択性があるかもしれないため、がん細胞添加時の蛍光応答時の標的分子の同定を検討している。 筆者らは既存の蛍光性分子ローターの中でも最も高い粘度応答性を示す分子を見出しているが、今年度は量子化学計算を行い、構造と捻れやすさの違いによって蛍光の粘度応答性をある程度説明することができた。今後はその知見を用い、化学的安定性を保ちつつturn-on光増感能を有するGFP色素誘導体を新たに設計・合成していく予定である。合わせて、膜脂溶性を調整した誘導体の合成も行っていく予定である。 また、現在光免疫療法専門家との共同研究を行っており、本研究で見出したturn-on光増感剤についてもin vivoを志向した評価系で実験していく予定である。
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