Project/Area Number |
22K05719
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39070:Landscape science-related
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
坂本 洋典 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 主任研究員 (70573624)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 港湾 / 外来生物 / 非意図的侵入 / 極限環境 / アリ / 外来植物 / 非意図的持ち込み / 人為的環境 / 生物多様性 / 微生物 |
Outline of Research at the Start |
港湾は人為的に構築された極限環境であり、生物の移出入の拠点であるため外来生物も多く暮らす。その一方で海浜性の希少種も同居する、極めてまれな生態系を構築している。本研究は、このような人為的生態系の構築機構および外来生物の侵入・定着が港湾の生物多様性に与えた影響を解明することで、人為的な環境における生物多様性の創出機構を明らかにする道を切り拓く。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度の結果を元に、確認された外来節足動物の種数が多かった国際港湾を中心として、粘着トラップおよび目視を用いたサンプリングを実施した。得られた節足動物のうち、代表的な分類群であるアリについて、ミトコンドリアcytochrome oxidase subunit 1 (coi) 遺伝子を用いた遺伝子解析を実施し、ヒメアリ属のアリの中に、形態的な識別が困難である隠蔽的な外来種が混在し、国内定着していることを確認した。さらに、国際港湾における目視調査においては、港湾のアスファルト舗装が経年劣化により破損し、ひび割れている環境および、排水用のU字溝に土が溜まっている環境において、木本を含む、多様な外来植物が侵入していることを複数の国際港湾において確認した。港湾敷地内に緑地が設置されている環境、および港湾に隣接している緑地がある環境では、緑地内に侵入している外来植物も多種類確認された。さらに国際港湾においては、外来植物の草体上、もしくはその劣化した腐葉土を生息環境として、ハゴロモ類およびハサミムシ類などの外来節足動物が侵入・定着していることを明らかにし、港湾の経年劣化および外来植物の侵入が、新たな外来生物が侵入・定着するために好適な環境となっていることを実証した。植物の篩管液を餌として吸うハゴロモ類は植物病原体の運搬者としても警戒すべき害虫であり、今後の被害が懸念されることからも、侵入の早期発見・防除を実施するために港湾生態系の継続的なモニタリングが重要であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度はコロナによる移動規制も大きく緩和され、2022年度に調査の実施が困難であった中国、四国、九州地方の港湾などにおいて追加の資料を得ることができ、また外来生物種の多様性が目立って確認された国際港湾における集中的な調査が実施出来たため、港湾生態系の解明に向けた基礎資料を揃えることができた。さらに目視調査を介して、港湾の歴史を経て形成された木本を含む外来植物群落が、外来節足動物の定着を助けていることが強く示唆され、本研究目的である港湾の生物相創出機構に繋がる知見を得ることに成功した。さらに、特に遺伝子解析の対象である分類群であるアリ類につき、ミトコンドリアCOI遺伝子を用いた解析結果から、形態的な同定が難しい外来種の侵入を確認でき、遺伝子による侵入経路確認の基礎情報を得ることができた。同時に、アリ類の遺伝子解析のツールとしてCOI遺伝子が好適であることを実証した。以上の理由により、異常とも言える高温のために予定していた夏季のモニタリングの一部が実施困難だったことを加味したとしても、今後の研究の進捗のために必要な基本的な情報と手段は確立し、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに基礎的なデータを集積し、とくに植物を含む外来生物相が多様であることを確認した国際港湾を主たる調査地として、粘着トラップおよび目視を中心とした季節ごとのモニタリングを実施して、港湾生態系の生物相の把握を行う。なかでも、港湾内での増殖が確認された植物について、植物種ごとにどのような節足動物が利用しているかを、叩き網調査や食痕解析などを含めた多様な手法により解析し、どのような植物が存在すると、多くの外来節足動物が侵入・定着し、港湾生態系の源となっているかの相互関係を明らかにする。特に、外来植物については利用する生物について得られている情報が乏しい種が多数であることを踏まえて、集中的な調査を実施する。さらに、モデル生物種として用いるアリ類の遺伝子解析について、2023年度に有効性が実証されたCOI遺伝子を用いて実施すると共に、共生微生物相の遺伝子解析も同時に実施することで、より精度高く、港湾に生息しているアリの種類および侵入ルートの推定を実施する。その上で、港湾周辺エリアについて、公園や緑地などの人工的な草地や、荒れ地などを中心としたモニタリングを実施し、港湾に侵入した外来節足動物の侵入状況を明らかにし、及ぼしている影響を明らかにする。これらの結果と、港湾の設立年代・物流域などの情報を合わせて総合的に解析し、港湾生態系の形成要因と、それが港湾の外側の地域へと及ぼした影響を明らかにする。
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