Project/Area Number |
22K05777
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40020:Wood science-related
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
阿部 充 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50734951)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | アルカリ水溶液 / イオン液体 / ピロリジニウム / ホスホニウム / スギ / ベンジル化 / エピクロロヒドリン / 架橋構造 / 木材 / 化学修飾 / エーテル化 |
Outline of Research at the Start |
木材表面を非加熱下での迅速にベンジル化する技術を、他のエーテル化反応にも展開させると共に、処理の深さ方向の制御を検討する。種々の前処理溶媒候補を調整し、置換度やその分布を評価することで、反応のメカニズムについての知見を得ると共に、ベンジル化以外の種々のエーテル化反応へと展開させるための要件を見出す。その後、異なる樹種へと展開して理論の強化と技術のさらなる一般化を図り、木材の不均質性、不均一性を克服した材料設計プロセスの構築につなげる。
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Outline of Annual Research Achievements |
ベンジル化反応がごく表面のみに留まるのは、木材中の水酸基の活性化に使用している50%テトラブチルホスホニウム水酸化物水溶液と、ベンジル化薬剤であるベンジルブロミドの相溶性が悪いためと考えられる。水溶液を濃縮して水酸化物溶液の疎水性が向上すれば親和性が改善される可能性があるが、当該アルカリ水溶液を濃縮するとカチオン構造が分解される。そこで、乾燥状態でも安定な液体として存在しうる新たな水酸化物として、アルキルピロリジニウム水酸化物に着目した。アルキル鎖長の異なるカチオン構造を有する複数のアルキルピロリジニウム水酸化物の合成を試みたが、溶液NMR測定の結果、合成に成功した溶媒はエチルピロリジニウム水酸化物のみであった。ベンジルブロミドとの親和性を確認したところ、水を含まない状態であってもベンジルブロミドと相分離し、均一な混和状態を得ることはできなかった。 他方、異なるエーテル化剤を用いるという方向性での検討も進めている。木材内部までエーテル化する大きな目的として、木材の疎水化と寸法安定化がある。そこで、木材内部にエーテル結合を介した架橋構造を形成させることを試みた。エーテル化剤に求められる条件は、①テトラブチルホスホニウム水酸化物水溶液と均一に混和すること、②反応時に架橋構造を形成することの2点である。また、より寸法安定性を高めるため、遠くの水酸基同士が結合するような、ある程度大きな架橋構造を形成し、かつ3次元網目構造による強固なネットワークが形成されることが好ましい。この条件を満たしうるエーテル化剤として、エピクロロヒドリンを選択した。テトラブチルホスホニウム水酸化物水溶液とエピクロロヒドリンの相溶性を確認したところ、両化合物は任意の割合で均一に混和した。そこで、木材をエーテル化してFT-IRを測定したところ、木材中に含まれる水酸基量が半分以下になったことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
溶媒の新規合成に予想以上の時間と労力がかかり、置換基分布を解析する段階まで研究を進めることができなかった点において、当初の予定よりも遅れていると考えている。他方、エピクロロヒドリンを用いたエーテル架橋構造の形成については、木材内部まで処理を進めることが出来た点からも、「溶媒とエーテル化剤の親和性が重要」という当初の見立てが正しいことを示す好例であったと考えられる。当該エーテル架橋木材は、疎水性と寸法安定性に期待が持てる結果となっており、当初の予定よりも進んだ点と言える。 総じて、研究の進捗状況は「想定通り~やや遅れている」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究で得られたエチルピロリジニウム水酸化物(水溶液)を用いたベンジル化を検討すると共に、さらに異なる化学構造を有する水酸化物水溶液の合成も並行して進める。溶媒種の検討を進めるにあたっては、新規合成に加え、NaOH水溶液など従来使用されてきた溶媒についても、複数の濃度や異なる処理条件を検討するなどしてベンジル化木材を作製し、処理深さや置換基分布を検討する予定である。 また、エピクロロヒドリンを用いたエーテル架橋木材については、各種分光測定を用いて化学構造を解析すると共に、疎水性と寸法安定性を評価する。また、処理木材の物性をさらに改善するため、前処理溶媒として用いるアルカリ水溶液の種類や濃度、処理プロセスの検討も併せて検討する。
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