Project/Area Number |
22K06019
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42020:Veterinary medical science-related
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
磯田 典和 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (80615732)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
|
Keywords | 牛ウイルス性下痢 / リスク解析 |
Outline of Research at the Start |
牛ウイルス性下痢(BVD)は畜産分野で重要な感染症である。現在まで乳用牛におけるBVDの疫学知見が集積されている一方で、肉用牛における極端に低いBVDウイルス(BVDV)の陽性率の真偽が正確な制御方策立案への大きな課題となっている。そこで申請者は、肉用牛を対象とし、1)BVDV陽性動物および抗BVDV抗体陽性動物の検出による農場内でのBVDV浸潤状況の把握を行い、2)肉用牛におけるBVD発生に与える要因の特定を分析疫学にて解明する。さらにこれら知見を総合し、3)肉用牛におけるBVD疫学モデルを樹立し、肉用牛におけるBVD疫学の詳細解明とより効果的な制御方策の立案に繋げる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
宮崎県の3市町村の7軒の肉用牛および乳肉混合飼育農家にて、221頭の耳片組織からの牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)の遺伝子検査を実施したところ、1頭が陽性となった(陽性率0.45% (95%信頼区間:0.00-1.34%))。一般的に、BVDVの感染拡大には対策未実施の動物の移動が示唆されている。生体材料採取と同時に行ったアンケート調査の結果ではこの地域における市場や公共牧場の利用はそれほど高くはないことから、BVDVの伝播は多くの農家に広がることは無いが、陽性農家では戸内陽性率が高くなることが予想される。調査した農家では半数が市場における動物の導入を行わないことから、農家内でのBVDVの動態を効率よく監視することができると考えた。 そこで、当該地域にある30の農家で飼育されていた牛、合計1,720頭から血清を採取し、血清中の抗BVDV抗体価を測定した。測定には1型BVDVを細胞で増殖させ、そのCPEの干渉による判定を行った中和反応試験と、2型BVDVに蛍光タンパク質を導入した遺伝子組換えウイルスを用い、蛍光輝度による干渉を測定した中和反応試験を行った。30以上を飼育する農家のうち、3農家(12%)では1型および2型BVDVに対する抗体価は10%未満であったが、6農家(24%)では20~50%の陽性率となった。なお、16農家では抗体陽性率が50%以上であった。全体的に2型BVDV(平均抗体陽性率:43.0%)に比べ、1型BVDVに対する抗体陽性率(51.2%)が高かったことから、地域レベルでは1型ウイルスが広く浸潤しており、2型BVDV抗体への反応の多くは1型BVDV抗体の非特異的反応かと思われる。また中和抗体価512以上を示す検体も多かったことからいくつかの農場ではBVDV持続感染牛の存在や、BVDVへの一過性感染牛の継続的な飼育が農家中で起こっていたことが推測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定では1年目に実施予定であった大規模抗体調査を2年目に実施することとなった。これは現地の研究協力者における材料採取に時間がかかったことが挙げられる。1年目は実施が遅れたが、2年目である2023年度は検体の取得も進み、その検体を用いた抗体価の即手もほぼ予定通りに実施できたことから、2年目の1年間の進捗はほぼ予定通りであった。2年総合した進捗としては、1年目の遅れの分、やや遅れているという判断になる。 しかしながら、2年目で実施した大規模抗体調査は順調に進み、当初予定よりもさらに多くの知見を得られることができた。地域全体で抗体陽性率に大きな違いがあり、今後、ワクチン接種履歴の有無などを含めた詳細を確認する必要があるものの、調査した集団における抗体陽性率の大きなばらつきは、地域レベルでのBVDVの浸潤と何かしらの関係があると思われる。引き続き当該地域の農家に起因するデータの取得について、研究協力者と現在検討を進めつつ、他地域での抗体検査を含めた同様の調査の可能性を探っている。 これらのことを勘案し、2024年度は最終年度の予定ではあるが、本研究の当初目的の実施および解析に際し得られた新たな疑問解決のために、終了年度の延長について検討し、本研究計画で掲げた目標の到達をかなえたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
他地域におけるBVDVの抗体陽性率の算出:既に実施した地域では抗体陽性率が当初予定よりも高かったことから、BVDVの発生がほとんど報告されていない、かつBVDVに対するワクチン接種が進んでいない地域を選抜し、飼養牛の抗体陽性率の算出を実施する。BVDVの検出のある地域を対象として疫学調査を進めてきたが、BVDVの浸潤は予想よりも高率であることも十分に予想される。次に行う農家内浸潤速度をより適切に推定するために、BVDV浸潤率がより低い農家に関する家畜データを集めることが本内容の背景である。 BVDVの農家内浸潤速度の推定:30農家について動物の移動やワクチン接種の有無について詳細な情報を集め、BVDVの農家内浸潤速度の推定に適している農家を選抜し、個々の農家におけるBVDVの推定浸潤速度を、動物の年齢層別の抗体陽性率から推定する。推定方法は血清疫学分野ではいくつかの手法がすでに確立しており、手法についてはいくつか検討はするものの、過去の報告を基に推定するのは十分実施可能であると考える。同様の疫学解析は他の疾病モデルですでに申請者は実施していることから、本内容の実施については予定通り遂行できると考える。 BVDVの農家内浸潤モデルの樹立:農家内におけるBVDVの一過性感染による感染率の推定値を用い、農家におけるBVDVの感染を模した疾病モデルの構築を行う。すでにRによってBVDVのコンパートメントモデルの準備は行っており、得られたモデルパラメートを外挿し、そのモデルの妥当性を評価する。 アンケート調査結果を用いたBVDV感染もしくは高い抗体陽性率の要因:地域および農場施設の異なる農家の抗体陽性率が判明したことから、高い抗体陽性率(現時点では30%)を基準としたときの、それを上回る農家について、BVDV浸潤を許してしまうような農家要因をアンケート調査の結果を用いた統計解析で実施する。
|