Project/Area Number |
22K06308
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44050:Animal physiological chemistry, physiology and behavioral biology-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木股 直規 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (40822929)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 非視覚光受容 / ipRGC / メラノプシン / 磁気受容 / 光応答 / 網膜 / シグナル伝達 |
Outline of Research at the Start |
哺乳類の網膜には、光感受性を持つ網膜神経節細胞(ipRGC)が存在し、瞳孔反射や体内時計の調節など、視覚以外の光生理応答(非視覚光応答)を制御している。ipRGC内の光シグナル伝達システムとして、従来知られていたGqを介したシグナル経路に加え、Gsを介したシグナル経路の関連が最近の研究から示唆されているが、その生理機能の詳細は不明である。そこで本研究では、ipRGC内におけるGsを介したシグナル経路の機能を明らかにすることを目的とする。さらに、明らかになったGs経路の機能をGq経路の機能と総合することで、ipRGCの光受容による非視覚光応答の制御メカニズムを解明することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本計画では、ipRGC内のメラノプシンが光依存的に活性化する、Gq経路とGs経路のそれぞれの生理的な意義を解明することを目指している。前年度までに、Gq経路が体内時計の光位相シフトを引き起こし、Gs経路がGq経路をサポートする可能性を示唆する結果が得られていた。本年度は、Gs経路の詳細な機能を明らかにすることを目指した。具体的には、DREADDを活性化する薬剤であるDCZをGsDREADDマウスに投与した際の、光による行動リズム位相シフトの効率に与える影響を検証した。その結果、DCZを投与することによって、行動リズムの光位相シフト幅が減少することが明らかになった。研究代表者が所属するグループは過去に、ipRGC特異的にGsをノックアウトしたマウスにおいて非視覚光応答が減弱するという結果を得ている。これらの結果を総合すると、Gs経路は微視的には光シグナル伝達を抑制する機能を持つが、巨視的には非視覚光応答の効率を向上させるという非常に興味深いメカニズムが考えられた。 また、本年度は当初の計画に加えて、網膜の新たな環境シグナル受容機能として、視細胞による磁気受容に着目した。渡り鳥を含む一部の鳥類は地磁気を感知して定位すると考えられている。この磁気受容メカニズムには、錐体視細胞に発現する、光受容タンパク質の一種であるクリプトクロム4(CRY4)が関与していると言われている。このことから、CRY4は地磁気の方向を感知するため、錐体視物質と相互作用し、細胞内での配向を統一していると考えられた。そこで本年度は、ニワトリCRY4とニワトリ赤錐体視物質が相互作用する可能性について共免疫沈降法で検証した。その結果、CRY4は赤錐体視物質と相互作用できることが明らかになった。この結果から、CRY4が視物質と結合し細胞内における配向が均一になることで、地磁気の向きを受容している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DREADDを用いたGqおよびGs経路の機能解析については、薬剤と光刺激を組み合わせた実験より、Gs経路の機能の詳細を明らかにした。この結果から、光刺激がipRGCのシグナル伝達系を制御するメカニズムの解明に近づいた。さらに、昨年から所属する研究室で、網膜の新たな機能と考えられている磁気受容の研究を開始した。こちらについても、所属研究室の環境で共免疫沈降法の実験系を確立し、磁気受容の機能を持つとされている分子の相互作用を検出することに成功した。以上を踏まえ、本研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの結果から、体内時計の光制御についてGq経路が光位相シフトを促進し、一方でGs経路は光位相シフトを抑制するはたらきを持つことが示された。今後は、体内時計の光制御以外の非視覚光応答についても、Gq・Gs経路の機能を明らかにすることを目指す。特に、瞳孔反射は光に対する即時的な応答であるため、Gq・Gsそれぞれのシグナル伝達経路の機能について、より詳細に解明できると期待している。また、ipRGCはメラノプシン由来の光シグナルに加えて、視細胞由来の神経シグナルを処理することが知られている。そこで、視細胞の光機能のみを欠損したマウスのipRGCにGsDREADDを導入することで、ipRGC内のGs活性化が視細胞由来の神経シグナル伝達に与える影響を検証する予定である。 また、本年度は新たに網膜による地磁気受容メカニズムの解析を開始し、クリプトクロム4(CRY4)と赤錐体視物質が相互作用することを見出した。鳥類のCRY4を介した磁気受容には光依存性があると考えられているため、今後はCRY4と赤錐体視物質の相互作用に光依存性があるかについて検証する予定である。それに加えて、CRY4を介した磁気受容の細胞内シグナル伝達経路の候補として、視覚のシグナル伝達系が考えられている。そこで、今後は視覚のシグナル伝達を担うGタンパク質であるトランスデューシンに着目し、CRY4との相互作用およびCRY4による活性化の検証に着手したいと考えている。これらを統合し、CRY4による地磁気受容の分子・細胞レベルのメカニズムを解明することを目指す。
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