Post-transcriptional regulation system for the de-novo genes in the evolutional immature stages
Project/Area Number |
22K06342
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45020:Evolutionary biology-related
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
佐藤 壮一郎 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (00399809)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | RNA免疫沈降法 / 転写後調節 / シロイヌナズナ / ゲノム進化 / 遺伝子の獲得 / 転写後制御 / 進化 / 植物 / エピジェネティクス |
Outline of Research at the Start |
真核生物のゲノムには、進化の過程で獲得された様々な遺伝子が含まれている。このような獲得遺伝子にとって効率の良い転写や翻訳の仕組みを得ることは、遺伝子がゲノムに定着し機能を発揮する上で重要な過程である。しかし、比較ゲノム解析などの従来のアプローチでは、獲得直後の遺伝子発現の様子を十分に知ることができなかった。そこで本研究では遺伝子の転写後制御に着目し、シロイヌナズナの新旧の既存遺伝子および形質転換によって導入した外来遺伝子について、RNA免疫沈降法を基盤とした解析を行う。そして、それぞれの遺伝子について転写・翻訳の効率および転写後修飾の特徴を明らかにし、転写後制御系の進化の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のゲノムには、進化の様々な過程で獲得された遺伝子が含まれている。そのような遺伝子がゲノムに定着し機能を発揮するためには転写能の獲得と転写・翻訳制御系の最適化が必要であり、近年では、酵母や線虫、哺乳動物のスプライシングや翻訳を対象とした比較トランスクリプトーム研究などから、そのような最適化の存在を支持する結果が報告されている。本研究では、未だこのような知見が不十分な植物について、シロイヌナズナのRNA免疫沈降法や遺伝子獲得のモデル実験系を組み合わせた解析を行うことにより、植物の転写・転写後制御系の進化的成熟過程を解明することを目指している。また、本研究を通じて、遺伝子発現制御系の進化的最適化戦略を学ぶことにより、効率の良い遺伝子組換え・発現系の開発といった医学農学分野への技術的貢献も期待できる。 転写・転写後制御系の効率や状態を知るには、植物細胞内のRNAを、転写、翻訳中のものに分けて解析する必要がある。また、実験系の確立と並行して、解析対象となる遺伝子の情報整備を進める必要もある。2年目となる令和5年度では、これら解析実験系と遺伝子情報の整備という2つの項目について、初年度に引き続きそれぞれ検討を進めた。前者については、転写中のpre-mRNAを多く含むクロマチン画分の精製と評価に成功したほか、翻訳中のmRNAを精製するための形質転換植物を作製することができた。また後者についても、1,135種のシロイヌナズナ野生系統を用いたゲノム系統樹の作成とこれをベースとした大規模比較ゲノム解析により、シロイヌナズナ属の多様化に伴って獲得された遺伝子を特定し、分岐年代を基準に分類することに成功した。また、これらの遺伝子の配列的特徴から、転写や機能発現に関する遺伝子配列の最適化が、植物でも起こっていたことが明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目となる令和5年度では、転写中のmRNAの精製において明らかな進展が見られた。転写中のmRNAを精製するための手法確立のため、昨年度から引き続き、RNA-タンパク質複合体の分画とそこに含まれるDNAの分解処理の検討を進めてきたが、意外なことに、RNAポリメラーゼ抗体を用いた免疫沈降に供する段階のRNA-タンパク質複合体であっても、メッセンジャーRNA(mRNA)が高い純度で含まれており、リボソームRNAなどの他のRNA分子種がほとんど含まれていないことが明らかとなった。また、この画分のmRNAを用いて、いくつかの遺伝子について解析したところ、このmRNAサンプルが転写中のpre-mRNAを多く含んでおり、以降の解析に供するための条件を十分に満たすことがわかった。一方、翻訳中のmRNAの精製実験については、リボソームの大サブユニットを構成するRPL18タンパク質に精製用のFLAGタグを付加した人工遺伝子を導入したシロイヌナズナ形質転換植物を作製した。また、本研究で主に用いるCol-0系統だけでなく、Col-0系統の近縁・遠縁の野生系統についても同様に形質転換体を得た。以降は、これら複数の野生系統を用いることで、シロイヌナズナの進化・多様化とともに出現した遺伝子の転写後状態を、遺伝子出現後の系統と出現前の系統とで比較できるようになった。なお、上記のいずれの方法についても、一塩基レベルで転写開始点を決定できるものとなっている。 一方、これらの実験の基盤となる情報整備については、1,135系統の野生種について巨大なゲノム系統樹を構築し、この系統樹を基盤として、シロイヌナズナ属の多様化の早期段階で獲得された遺伝子と中期、後期に獲得された遺伝子を同定することができた。これらの遺伝子群の配列解析や、関連する分子機構に関する実験の結果から、遺伝子の成立から最適化への過程が少し見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
この2年間で、本研究を推進するために必要な、転写・翻訳中のmRNAを精製し次世代型DNAシーケンサーにより解析する手法を確立し、解析対象となる遺伝子情報の整備も進めることができた。また、獲得直後の遺伝子を模したレポーター遺伝子を導入した形質転換植物も作製した。今後は、これらの解析手法や形質転換植物を用いて、シロイヌナズナの進化・多様化の初期・中期・後期に獲得された遺伝子の発現様式を、転写活性(mRNA合成活性)と翻訳能(リボソーム結合効率)の2つの側面から明らかにする。 具体的には、シロイヌナズナのCol-0系統を用いて転写・翻訳中のmRNAの転写開始点を次世代シーケンス解析により網羅的に決定する。そして、新旧の各遺伝子群について、mRNAの合成や翻訳のレベルを転写開始点単位で明らかにする。この解析から、シロイヌナズナ遺伝子のプロモーター構造の進化的変遷や、獲得初期の遺伝子のプロモーターや転写領域と転写後安定性との間にどのような関係があったのかを明らかにする。また、令和5年度の解析において、私たちは、シロイヌナズナの進化的多様化において獲得された遺伝子が、塩基配列組成の変化や翻訳に必要な制御配列の獲得、エピジェネティックな制御様式の変化、タンパク質ドメイン構造の複雑化などを経て、どのように変化してきたのかを明らかにしてきた。この最終年度では、これらの結果も統合することにより、植物の進化において新たに誕生した遺伝子が、どのような過程を伴って安定的な発現能を獲得し、その機能を発揮するに至ったのかを明らかにしていきたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)