Project/Area Number |
22K06390
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
瀬戸 繭美 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (10512717)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 酸化還元 / 化学熱力学 / 微生物生態学 / 群集生態学 / 地球微生物学 / ギブスエネルギー / 生物多様性 / 生態系機能 / 微生物群集 / ネットワーク / 生体エネルギー論 / 酸化還元化学 / 個体群動態モデル / 化学合成微生物 / 物質循環 / 熱力学 / 理論生態学 |
Outline of Research at the Start |
本研究は化学反応をエネルギー源として利用する微生物の群集構造と系のエネルギーの関係性をモデル・シミュレーションで明らかにし、統合的理論を確立することを目標とする。生命は個体、個体群、群集、生態系のそれぞれの階層で、エネルギー獲得によりその機能を維持する。生物群集構造とエネルギー状態やその利用効率との間に法則性を見出すことは生態学の理論を補強するだけでなく、他階層の生命の理解をも助けるだろう。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、化学合成微生物群集とその生態系の自由エネルギーの動態に焦点を当て、Eco-geochemicalモデル(Eco-Redoxモデルに改称)を用いた数値シミュレーションを実施した。以下に成果をまとめる。 ・系の自由エネルギーと微生物群集の関係:化学合成微生物群集と系の自由エネルギーの関係性を明らかにするため、ギブスエネルギーを指標としたシミュレーションを行った。これにより、微生物の種数やリサイクル率が高いほど、ギブスエネルギー利用量が増加することが示された。この結果は、エネルギー供給量が少ない状態での微生物のエネルギー保存戦略を説明する。 ・微生物群集の相互作用とエネルギー利用効率:相利的な種間相互作用が多いほど、系の自由エネルギーの利用効率が向上することが示された。この研究では、種間相互作用のパターンがエネルギー効率に与える影響を評価することで、群集のエネルギー利用に関する法則性を読み解くことができることを明らかにした。 ・研究成果の発表と次のステップ:本研究成果をEcology Letters誌で発表した(Seto, M., & Kondoh, M. (2023). Microbial redox cycling enhances ecosystem thermodynamic efficiency and productivity. Ecology Letters, 26(10), 1714-1725.)。この論文では、エネルギー供給が少ない生態系における微生物のエネルギー保存戦略と相互作用がエネルギー利用効率を向上させることを示した。さらに、現在は窒素の反応系を対象とした反応ネットワーク研究を進めており、この結果についても論文化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、化学合成微生物群集と生態系の自由エネルギーの関係性について、当初目標以上の成果が得られた。ギブスエネルギーを指標としたシミュレーションにより、微生物の種数やリサイクル率が高いほど、ギブスエネルギー利用量が増加することを示した。この成果は、エネルギー供給量が少ない環境においても微生物生態系が維持されるメカニズムを明らかにするものである。 次に、微生物群集の相互作用とエネルギー利用効率に関する研究も目標を達成することができた。研究の結果、相利的な種間相互作用が多いほど、系の自由エネルギーの利用効率が向上することが示された。これにより、種間相互作用のパターンが群集のエネルギー利用に与える影響を明らかにすることができた。 さらに、本研究の成果を国際誌であるEcology Letters誌に発表した。この論文では、エネルギー供給が少ない生態系における微生物のエネルギー保存戦略と相互作用がエネルギー利用効率を向上させることを示した。また、論文の内容を国内外の学会やセミナーで発表した。 現在進行中の窒素反応系を対象とした反応ネットワーク研究も順調に進んでおり、この分野における新たな知見の創出が期待されている。この研究では、窒素反応系の中で特にエネルギー出力が大きい反応が微生物代謝と合致しているかどうかを調べており、既に論文化を進めている段階である。この進捗は、当初計画の時点では予測していなかったものであり、研究の発展性を示す重要な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
反応ネットワーク研究の拡張: 現状、現実の反応系を対象としたモデリングは窒素の酸化還元反応系のみを対象として実施している。今後は他の酸化還元化学種とその反応系を入力データに追加し、エネルギー出力の大きい反応と微生物代謝との合致について評価する。
自由エネルギーと微生物代謝の進化・群集の安定性の関係性: これまでの研究から、微生物多様性や群集間相互作用と自由エネルギー利用との間に法則性が存在することが明らかになった。もし、微生物群集がエネルギー利用を増加する方向に発展する傾向があるのであれば、微生物多様性や相互作用はエネルギー獲得をめぐる進化過程によって複雑化し、特に利用エネルギーが限られる場合には相利的な群集に向かうと考えられる。そこで、進化シミュレーションを実施することにより、この予測が正しいかどうかを検証する。
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