急増する小児アレルギー性鼻炎の発症リスク因子と発症機序の解明に向けた研究
Project/Area Number |
22K09740
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 56050:Otorhinolaryngology-related
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
櫻井 大樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10375636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 裕貴 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (40568250)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | アレルギー性鼻炎 / 小児 / 発症因子 / 発症機序 / 花粉症 / リスク因子 |
Outline of Research at the Start |
小児アレルギー性鼻炎について、生活環境・食習慣・地域花粉飛散量・腸内細菌・脂質代謝を多角的に調査することで発症リスク因子を明らかにする。さらにアレルギー性鼻炎の発症前後における免疫細胞の変化、変動する遺伝子および代謝物の同定から発症制御機構を明らかにする。小児アレルギー性鼻炎の発症リスク因子および発症制御機構の解析から、発症予測マーカーおよび治療ターゲットの探索を進め、小児アレルギー性鼻炎の予防対策への展開を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年の小児における花粉症の有病率増加を受け、花粉症発症の低年齢化を引き起こす要因や発症に関わる因子について調査・解析することで、発症機構を明らかにし、発症診断マーカーの確立、予防対策の確立、および新規治療法の開発への展開を目的としている。近年のアレルギー性鼻炎の全国調査の結果から、山梨県は20年前から継続してスギ花粉症有病率が全国で最も高い県であり、花粉症研究を行う地域として、また今後の花粉症の推移を予測する上で最も適した地域の一つであると考える。本研究では、山梨大学医学部社会医学講座と連携し全国出生コホート調査(エコチル調査)に参加しており、ノンバイアスな大規模集団に対し、母子を紐付けての横断的・縦断的な調査を行っている。2023年度は、8歳児に対し実施された総合健診および追加調査の項目(非特異的IgE、スギ・ダニ特異的IgE抗体検査、脂質代謝因子、糖代謝因子などを含む生化学検査)よりスギ花粉感作に関連する因子を調査した。またスギ花粉の感作に関連する腸内細菌叢の解析を行った。さらに花粉症症状に関する追加の問診調査より花粉症の発症と関連する因子の解析を進めている。山梨県内複数ヶ所でスギ・ヒノキ花粉の観測を行っており、花粉抗原への感作や症状の増悪との関連について、花粉飛散量の影響についても調査を進めている。舌下免疫療法の効果に関連する免疫学的変化について、小児ボランティアより採取した末梢血リンパ球より免疫細胞の遺伝子発現および代謝因子の解析を進めた。山梨大学医学部の学生と附属病院の職員を対象にスギ花粉症未発症者ボランティアを募集し、2022年に引き続き2023年の花粉シーズンの新規発症の有無について調査を行った。シーズン前後と1年後に発症を問う質問と血液検査を行い、新規発症者と未発症者における特異的IgE抗体値と総IgE値の比率の変動について比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アレルギー性鼻炎の発症因子の研究について、エコチル調査において現在までに2019年から2022年に行われた県内8歳児(約1500人)の総合健診および追加調査の検査結果(非特異的IgE、スギ・ダニ特異的IgE抗体検査、脂質代謝因子、糖代謝因子などを含む生化学検査)より、スギ花粉症の感作と関連する因子を解析し、先行するダニ感作および母親のスギ感作の関連が示された。総IgE値の上昇(アトピー体質)とは脂質代謝や糖代謝との関連性が明らかとなった。またスギ花粉の感作には、細菌叢の多様性との関連は明らかではなかったが、ある種の細菌の有意な増加が示された。スギ花粉症症状の有無と生化学因子、細菌叢の関連については解析中である。 2023年度も山梨県内複数ヶ所でスギ・ヒノキ花粉の観測を行っており、2023年はスギ花粉と比較しヒノキ花粉の大量飛散を確認した。花粉飛散量による地域差と症状・重症度との関連について調査を進めている。 舌下免疫療法を施行する小児ボランティアより、治療開始前、治療開始後6か月で採取した末梢血リンパ球を原因抗原で刺激したのちT細胞を回収し、免疫細胞のシングルセル遺伝子発現および代謝因子の解析を進めた。治療後に制御性T細胞の増加とともに特徴的な代謝変動を確認し、治療効果を判定するバイオマーカー候補として確認した。今後検証を進めていく。 スギ花粉感作陽性未発症者20人に対し新規発症の有無について追跡調査を行い、シーズン後に5人の発症を確認した。血清総IgE値に対するスギ特異的IgE抗体値は有意に上昇を認め、これらの比は発症を反映する可能性が示唆された。一方、発症前後の特異的T細胞の変化を解析する実験について予備実験を始めているが、シングルセル解析は2024年度行う予定である。計画した研究はやや遅れいている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
小児アレルギー性鼻炎の感作および発症の研究として行っている、エコチル調査と関連した生化学的検査および腸内細菌叢のデータについて、スギ花粉感作に関連する因子としての解析結果がまとまったところで論文化を進めていく。スギ花粉の発症を調査した追加調査項目のデータも出てきており、小児のスギ発症に関連する母子関係、脂質代謝、糖代謝、腸内細菌叢との関係についてさらに解析を進める。スギ・ヒノキ花粉飛散量と発症の関連についても、引き続き2024年度も県内複数地域での花粉飛散数観測を継続し関係解析を進めていく。舌下免疫療法で変化する制御性T細胞と関連した特徴的な代謝変動について、その機序の解析を進め、症例数を増やして結果を検証する。新規発症者の追跡研究については、得られた検体について、血清および細胞の代謝物解析の結果をまとめるとともに、発症前後の末梢血リンパ球をスギ抗原で刺激し、T細胞を回収したのちシングルセル解析によって遺伝子発現変動を調べ、T細胞サブセットの違いについても差異を調査特定し、発症機序の解明、発症マーカー候補の探索を進めていく。それぞれの研究成果について随時、学会発表や論文投稿を進めていく。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)