頭頸部扁平上皮癌の神経周囲浸潤:ゲノム編集を用いた腫瘍生物学的解析
Project/Area Number |
22K09934
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 57020:Oral pathobiological science-related
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
倉田 俊一 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任教授 (60140901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 伊陽子 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任教授 (20333297)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 頭頸部扁平上皮癌 / 神経周囲浸潤 / p63 / 浸潤 / 神経 / TP63 |
Outline of Research at the Start |
神経周囲浸潤(Perinuclear invasion, PNI)は口腔、咽頭、喉頭などの頭頸部癌で高頻度に見られ、頸部リンパ節転移の前段階とされるが、その分子機構は明らかにされていない。本研究は頭頸部癌に由来する培養細胞株を用いて、PNIを起こす分子機構の解明とそのマーカーとなる分子の検索を目的として実施する。具体的には、新しいバイオアッセイ系を作成し、ゲノム編集やRNA干渉技術と組み合わせて、特定の遺伝子発現とPNI活性の関連を解析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部扁平上皮癌の神経周辺(周囲)浸潤(PNI, perineural invasion)に関して1と2の事項の解析を行った。 1.生物学的解析 ボイデンチャンバーを用いる一般的なマトリゲル浸潤アッセイで神経系細胞を誘引細胞としてPNIアッセイを行った。被検癌細胞として高分化型扁平上皮癌FaDu細胞、および同株由来でゲノム編集(TP63の発現消失)によって得た上皮間葉転換(EMT)細胞株TA(d2/-)104(以下104と略す)を用いた。誘引細胞としてシュワン細胞株sNF96.2(ATCC, 神経線維腫1型由来)を用いた。まず、血清刺激による浸潤アッセイで、104細胞はFaDuに比べて高い浸潤能を示した。次にsNF96.2をウェルに培養して浸潤を測定したが、どちらの細胞でも浸潤能は増強されなかった。シュワン細胞が分泌するCCL2と癌細胞の受容体CCR2の相互作用によりPNIが誘導されるという報告があり、sNF96.2のCCL2発現とFaDuおよび104のCCR2発現を事項2において確認した。シュワン細胞は、離れた部位にある癌細胞を走化させる強い機能は持たないと推測された。 2.遺伝子発現の解析 FaDu、104、sNF96.2、およびLA-N-1(神経芽細胞腫)について、PNI関連遺伝子発現をマイクロアレイとRT-qPCRで解析した。Axon Guidance(神経軸索ガイダンス)因子とPNIの関連が推測されており、本研究でも104細胞ではFaDuに比べ43のAxon Guidance関連遺伝子で4 fold-change (log2)以上の発現が確認された。そのうち、分泌因子、その受容体、または接着因子であり、なおかつ癌組織PNIでの発現が報告されている遺伝子をPNI誘導の候補遺伝子として解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、一般的なマトリクス浸潤アッセイ法を応用したPNI(神経周辺浸潤)実験系で測定を実施し、研究の進展があった。まず、血清を誘引因子とする実験では、咽頭癌細胞(FaDu)とFaDu由来でゲノム編集によりEMTを起こしたTA(d2/-)104細胞を比較すると、後者に高い浸潤能が認められた。次に、報告されている結果を本実験系で確認するため、シュワン細胞株sNF96.2を誘引細胞として実験したが、血清だけを用いた場合と変わらず、sNF96.2細胞が癌細胞の浸潤を活性化する効果は検出されなかった。さらに、LA-N-1(神経芽細胞腫)細胞を誘引細胞として浸潤アッセイを開始した。 一方、この実験系では神経(系)細胞と癌細胞はフィルターとマトリゲル成分で仕切られたインサートで隔てられており、癌細胞のマトリゲル分解能が十分でないと、癌細胞が神経(系)細胞に誘引されたとしても走化性の検出が難しいことが問題点として浮上した。癌細胞‐神経系細胞の相互作用を解析するために、アッセイ系の変更を検討した。 PNIと関連する遺伝子発現に関しては、神経系細胞と癌細胞の相互作用の面から検討を進めた。癌細胞側の遺伝子発現では、EMT細胞でのAxon Guidance(神経軸索ガイダンス)関連遺伝子の高発現が認められた。臨床研究ではPNI組織でSEMA, SLIT、CXCR4、などの発現上昇が報告されており、それらの観察と一致する遺伝子発現がこの実験系でも認められた。神経系細胞側の対応する遺伝子発現の検討を始めた。このように、PNI誘導で機能する遺伝子の検索においても進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.アッセイ系の検討 PNIはマトリクス分解、走化性、遊走能、細胞間接着などの異なるプロセスからなる。これまで行ってきた一般的な浸潤アッセイの応用ではマトリクス分解能が主要条件となってしまい、他の生物活性が反映されない場合があることに気づいた。次年度には、癌細胞の神経系細胞への走化性、遊走能、細胞間接着に焦点を当て、アッセイ系の改変や更新を行う。(1)マトリクス分解能を除外して走化性を直接的に検出するため、マトリクス層を持たないインサートを用いる。(2)神経(系)細胞を均等にウェルで増殖させることが容易でないため、分泌因子を多く含む培養上清(Conditioned medium)を別途調製し、Conditioned mediumへの癌細胞移行を測定する。(3)二相のシリコンゴム製チャンバーを用いて、一方に癌細胞を、他方に神経系細胞を培養し、チャンバーを除いた後、培養基上での細胞の遊走能および細胞間接着能を検出する。 2.PNIに関与する遺伝子の検索 PNI活性が強く表れる実験系でAxon GuidanceのGO term から神経系細胞の分泌因子、癌細胞の受容体の候補遺伝子を検索する。いくつかの候補遺伝子について、遺伝子特異的なsiRNAトランスフェクションにより、実際にPNI活性が影響をうけるかどうかを検証する。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)