Project/Area Number |
22K12501
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64060:Environmental policy and social systems-related
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
東 愛子 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (10589534)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 再生可能エネルギー / 自治体 / 間接的経済波及効果 / バイオマス / 地域社会効果 / 地域効果 |
Outline of Research at the Start |
木質バイオマス事業は燃料調達に関わる産業の裾野が広く中山間地域への直接的な経済波及効果が期待される。また、木質バイオマス事業から派生する活動が地域ブランドの確立や、その地域に積極的に関わりたいと考える関係人口の創出にもつながっており、新たな地域の価値を間接的に創出し始めていることは軽視できない。 本研究は、木質バイオマス事業の「間接的経済波及効果」や「地域社会効果」を含めた「地域効果」を明らかにすることで、「地域づくり」におけるバイオマス事業の果たす役割を示すことを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、再生可能エネルギー事業が地域社会経済にもたらす効果に焦点をあて、この地域効果を最大限引き出す仕組みや地域アクターの関係性を解明することにある。 今年度は昨年度に引き続き、最上町の木質バイオマス熱供給事業を調査の対象とした。最上町は間伐や間伐材の引き出し等の森林整備に関しては民間事業者が行うものの、施業地の選定、交渉等は町が行う。また、施業を受け入れるかどうかの意思決定や施業の実施は団地造林組合ごとに行われる。この団地造林組合ごとの間伐が、施業の効率化、バイオマス資源の継続的利用につながっていると考えられる。今回の調査では、この団地造林組合がどのように形成されてきたのかについて地域史をもとに明らかにし、最上町の森林資源の利活用を可能としている地域コミュニティの固有性を理解することとした。 最上町は江戸期から第2次世界大戦終了時まで馬産地として栄えた地であるが、江戸期に入会利用をしていた村有牧野のほぼすべてが、明治期の官民有区分において国有林に編入され、国から牧野の貸付を受けて馬産が行われていた。このとき集落ごとに形成された牧野組合が、現在の団地造林組合の母体である。戦後、国有牧野が町に払い下げられて林業地利用が認められるまでは長い年月を要するが、1970年代に入って林業地利用が認められると、町民一戸につき1haの払い下げが行われ、集落ごと計25の造林組合が形成され協働で植林が行われた歴史がある。 このように、この地域には昭和後期まで集落ごとに協働で自然資源を管理する慣習が醸成されており、これが町有バイオマス熱供給事業の展開の素地となっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、再エネの事業形態と地域効果の関係性を比較分析することに主眼を置いている。特に、経済効果の中でも排熱を利活用した商品開発や、循環型社会構築に取り組む町の姿勢そのもののブランド化などに代表されるような再エネ事業から派生する「第1次間接効果」や、原材料搬出補助に使われた地域通貨の流通などから派生する「第2次間接効果」を示す。また、売電収入を活用し地域課題を解決する施策を導入するなどから得られる「地域社会効果」も再エネ事業が地域にもたらす効果に含めて測ることを目標としている。 再エネ事業におけるこれらの効果を引き出すためには、住民と自治体と事業者の協力体制が重要である。特に、自治体が再エネ事業を運営し、資源調達を通じて地域の資源管理を刺激したり、エネルギー供給事業を起点としてまちづくりを構想する場合は、町民の理解や合意が必要不可欠である。今回の最上町に関する文献調査では、協働で資源管理を行う慣習や組織が歴史的に醸成されており、それがバイオマス事業の上流において根幹となる資源の持続的供給につながっていることが明らかとなった。ただし、バイオマス事業の下流、すなわち、エネルギー供給事業を起点としたまちづくりに関しては、それに対する町の財政投入や得られている効果を調査しきれておらず、3年目の課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
間接経済効果や地域社会効果を把握すべく、さらに詳細に関係アクターへのヒアリングが必要である。例えば山形県最上町のバイオマス熱供給事業は、熱供給事業そのものには町の補助が入って成立している。町側は熱供給事業は赤字事業で補助がないと成立しないと捉えているが、上流の森林育成、雇用効果、熱供給住宅への移住効果等を含めた総合的な地域効果は捉えられていないのが現状である。したがって、エネルギー事業を起点として生じる効果を幅広く積み上げて地域効果を測ることによって、域内エネルギー事業への評価が変わる可能性がある。よって、今後はこの効果の積み上げに注力する。 また、東北の他のバイオマス事業のヒアリングも行う。特に、自治体が主たる事業主体ではない気仙沼の木質バイオマス事業などを候補とし、自治体と住民と民間企業の関わり方が地域効果に与える影響を積み上げ、比較検討する予定である。
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