黒潮流域圏の枠組みからみた日治時期台湾南方澳の高知県等官・私営移住者社会の特質
Project/Area Number |
22K12516
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 80010:Area studies-related
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
吉尾 寛 高知大学, その他部局等(名誉教授), 名誉教授 (40158390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 美菜 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 准教授 (60582476)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 台湾 / 高知 / 日本統治時代 / 官営移民 / 自由移民 / 生活 / 引き揚げ / 同窓生 / 黒潮 / 日治時代 / 海洋環境 / 漁法 / 官営移住 / 漁業 / 移民 |
Outline of Research at the Start |
本研究は「黒潮流域圏」という方法的枠組みを用い、日本の植民地統治下の台湾の漁港、南方澳に形成された高知県漁民等から成る移住者社会の特質を考察する。特に(1)「同一海洋(黒潮)環境では同一漁業形態が可能」との認識をもって渡った当該漁民が、元々行っていた漁=鰹釣季節漁等を、鯖延縄漁等通年漁に最終的に転換したこと、(2)官営移住者のみならず私営漁業移住者(自由移民)も当港で活発に操業していたことに注目し、(1)’黒潮圏海洋環境の視点から見た当該移住者社会形成(安定化)の契機、片や(2)’官・私営漁業移民二つの視点より映し出される「引揚げ」後までの動向(同窓会活動等)を具体的に明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度で行うことができなかった文献調査を、2023年8月7日から同月14日にかけての台湾訪問に合わせて特に8日から10日の間台湾・台北市、宜蘭県で改めて実施した。代表者吉尾寛、分担者堀美菜に、研究協力者諸岡慶昇高知大学名誉教授(個人の事情により自費参加)に加わっていただき実施した。 台北市では国立台湾図書館、台湾国家図書館において、20世紀前半における高知・台湾間の黒潮流域圏の海洋(漁業)環境の変動に関する先行研究の成果の確認、関係資料の調査を進めた。『台湾漁業史』(1957年刊)等基本史料の原本の確認をはじめ、当時の海洋調査の報告書(1928年発行『台湾近海海洋調査報告書』等)の複写、「黒潮」や当該高知県漁業者の移住先=宜蘭県蘇澳鎮南方澳漁港をキーワードとする当時の文学作品の複写、閲覧を行った。宜蘭県では宜蘭県史館において文献調査を行った。本館は当該の研究に関して当初より学術的関心を持っていただいており、今回も日本統治時代の当県蘇澳鎮並びに南方澳漁港における小学校、国民学校に関する資料即ち官営移住者、私営移住者(自由移民)それぞれの児童が共に学び交流した場について助言いただき、関係の文献を閲覧、複写した。 また同月11、12日には、宜蘭県史館と同様、当初より本研究にご協力いただいている南方澳漁港の郷土史家の案内を得て、今日「鯖の港」として名を馳せる漁港の実態を始めて調査した。具体的には水揚げ、並びにそれに従事する東南アジア等が来ている出稼ぎ(或いは移住)漁民の就労の様子、魚市場の様子、さらに文化施設での「鯖祭」(毎年1回)の準備作業を見学させていただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度予定していた台湾での調査は、本年度ほぼその予定した内容を行うことができた。特に主たる調査対象地、宜蘭県蘇澳鎮南方澳漁港においては当地の郷土史家複数名との交流(意見交換、質疑)を吉尾のみならず、堀及び諸岡も共有できたことは今後の活動に大きなプラスとなると確信した。実際、現在はメイル等で自由に交流できるようになっている。その中で、1)日本統治時代において官・私営移住者が海洋環境の変化に対応しながら、どのように協同して鰹漁から鯖漁に転換していったのか、より具体的に追究していく条件が整ったと考える。他方、2)日本の豊後水道(大分県臼杵市、愛媛県内子町から土佐清水市に及ぶ)と、南方澳を基点とする台湾東北部の黒潮圏との海洋環境の類似性の如何についても追究していく意味が明らかになったと考える。3)この点、現在の南方澳の状況、例えば外国人の漁民の漁撈、サンマを餌とする漁などを特徴からのアプローチも考えている。 以上を理由に、本研究は現在、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】の根拠として挙げた今後の推進方策(「鯖」、「豊後水道」等のキーワード)以外に次の事も記しておく: 日治時代南方澳漁港の官営移住漁民の児童は3学年に上がると、蘇澳の駅近くに在った「蘇澳国民小学校」に移り私営移住者(自由移民)の児童と共に勉強するようになった。彼らは毎年冬には「蘇澳の金比羅神社」の前の浜から南方澳の海水浴場の間を遠泳し、多くの見物人が出たという。 そのような高知県出身の移住者は官営、私営を問わず敗戦に伴い日本に引き揚げ、その後「ナンポーの〈豊かで幸せ〉」な生活を心に収め、逆に故郷で壮絶な貧窮生活に陥い、他県に転居したものも多かった言われている。しかしながら、「蘇澳国民小学校」の卒業生は、苦労の果てに安定した生活を獲得すようになると、1980年代同窓会組織「蘇澳会」を立ち上げ、ついには蘇澳・南方澳再訪を遂げる。吉尾は本科研期間中にこの同窓生の会会長から生前関係資料(複写物)をご提供いただいた。 以上の同窓会活動の実態を明らかにすることを通して、当該蘇澳鎮南方澳漁港の官・私営移住者社会の歴史的特質に迫りたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)