Project/Area Number |
22K13063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02020:Chinese literature-related
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
石 碩 法政大学, 経済学部, 准教授 (20732689)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 李白 / 謝霊運 / 青田 / 石門 / 石刻 / 詩跡 / 詩語 / 青天 / 李白詩研究 / 六朝詩受容史研究 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、①盛唐の詩人・李白が自身の文学を形作る上で、如何に六朝詩の語彙や表現を取り入れたのか(李白詩研究)、および②李白によって受容された六朝詩の語彙や表現が、李白以降、どのように人々に理解され、解釈されてゆくのか(六朝詩受容史研究)、という二つの問題を考察する。 従来の研究と大きく異なる点は、六朝詩が李白の文学に与えた影響を分析すると同時に、李白による受容が、後世の六朝詩理解・六朝詩解釈に与えた影響をも考察することである。相互の影響関係を同時進行的に探ることにより、「李白の文学」が持つ特徴とその影響力を丁寧に記述し、中国古典詩を支える「受容と発展」の連続性を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、李白による六朝詩受容以降の関連語彙・表現に関する調査・研究を行った。具体的な調査対象として、南朝宋の謝霊運(385-433)を取り上げた。 謝霊運の詩に、会稽郡始寧県(浙江省上虞市付近)の石門山で詠じられた「石門」詩三首があり、これが唐代には縉雲郡青田県(浙江省麗水市青田県)の石門山・石門洞で詠じられた作品と誤解されるようになる。こうした誤解は、現代の唐詩の諸注にも受け継がれ、謝霊運研究者と李白・唐詩研究者の中で、解釈に分岐が生じる状態となっている。 本研究では、謝霊運「石門」詩に対する誤解が、李白を一つの契機として固定的な見方となっていくことを指摘した。具体的には、地理書、唐詩、史書などの調査・分析を通して、李白が、青田県の現地を訪れた友人・魏万からの伝聞と自身の想像に基づき、謝霊運の青田「石門」遊覧を典故化し、青田「石門」を詩跡化させたことを明らかにした。 上記の研究によって得られた成果を、国際シンポジウム「東亜漢籍整理与研究」(2023年12月15日~18日、上海復旦大学)にて「論謝霊運与石門―从始寧到青田」というタイトルで発表した。なお、上記の研究発表と同時に、論文を執筆し、2023年度中に投稿する予定であったが、論文執筆の過程で、本研究が、李白による青田「石門」の詩跡化を指摘できるのみならず、同時に、これまで研究に乏しかった、謝霊運「石門」詩の制作地点の考証、および謝霊運と青田「石門」の関係をも明らかにし得る可能性が見出された。そのため、上記研究内容をさらに全面的に整理し、相互に参照可能な成果として発表するべく、複数の論文を執筆し、2024年度に関連雑誌に投稿予定である。 同時に、2023年度は、李白晩年の文学に関する研究もすすめた。その成果として「李白と安史の乱」(アジア遊学『杜甫と安史の乱』、勉誠出版、印刷中)を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、研究課題の第二段階として、李白による六朝詩受容以降の関連語彙・表現に関する調査・研究を予定していた。研究成果の発表予定時期にズレが生じたものの、進捗はおおむね順調である。 2023年の研究では、謝霊運に関連する詩跡・典故の形成が、李白の詩に大きく依拠していることを指摘することができたが、これはまさしく本課題が最終的に明らかにしようとする、李白詩が李白以前の作品の受容に与えた影響、すなわち中国古典詩史における「李白の文学」の役割が、色濃く現れ出た事例と言える。また、本年度の研究を進める過程で、さらに六朝詩人・謝霊運に対する追加的研究も行うことができた。 あわせて、前年度からの課題である、李白の晩年の文学およびその時代背景に対する調査・整理もすすめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、研究課題の第三段階として、李白における六朝詩の受容と展開に関する研究をすすめ、さらに本研究課題全体の成果の整理・発表を行う予定である。具体的には以下の3点について順次進めていく。 ①2023年度に行った、李白と謝霊運に関する研究を深め、論文を執筆・投稿する。具体的な投稿先として、『中国詩文論叢』(第41集、2024年)および『中国文学研究』(第50期、2024年)を予定している。 ②李白と謝霊運の関係について、特に「興」に着目し、その類似点・相違点を整理する。「李白と謝チョウ(月+兆)」が古典的な研究テーマであるのに対し、李白と謝霊運の関係を論じる先行研究の多くは、李白が謝霊運から影響を受けていることを認めつつも、それが一典故の利用に過ぎないこと、もしくは謝チョウ(月+兆)と比較して、心的な共感に乏しいことなどを指摘し、李白が謝チョウ(月+兆)ほどまでには謝霊運を重視していなかったことを指摘する。一方で、李白生前に、その友人である魏顥が編纂した『李翰林集』(逸失)の序文には、李白を評して「跡類謝康楽」と見えており、また数量的に見ても、謝霊運を詠じる詩は謝チョウ(月+兆)を詠じる詩を上回り、さらに謝霊運の場合は李白の散文でも言及されている。以上の事を踏まえ、両者の関係を改めて分析したい。
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