『万葉集』の音仮名と訓仮名から見た表記体についての研究
Project/Area Number |
22K13131
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02070:Japanese linguistics-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
澤崎 文 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (40706644)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 万葉仮名 / 音仮名 / 訓仮名 / 万葉集 / 表記体 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、『万葉集』の音仮名と訓仮名に対する把握のしかたを捉えることを通して、『万葉集』における表記体のあり方を明らかにすることを目的とする。これは、『万葉集』が音仮名と訓仮名を区別する資料であることをふまえ、そのことが表記システムの上でどのような意味をもつのか、また表記体のあり方を考える上でどのように関連づけられるのかという問いに立脚するものである。 研究の大きな柱としては、1.『万葉集』における音・訓仮名の認定を再考する。2.各表記体に固有の音仮名について、その性格を調査・整理する。3.各表記体において許容される文字と排除される文字から、各表記体の性格を捉える。という3点をおこなう。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、万葉仮名に対する音仮名・訓仮名という認定について改めて検討をおこなった。具体的には、『万葉集』でヲの万葉仮名として使われる「呼」について、これが音仮名と呼べるものか訓仮名と呼べるものかについて検討した。 まず、「呼」という漢字そのものが『万葉集』中の用例を確認するとともに、同時代や少し降る平安時代においてこの字がどのような意味を持っていたかを字書によって確認した。 続いて『万葉集』の研究史において、「呼(ヲ)」は音仮名と見なされているか、訓仮名と見なされているかを確認し、多くの文献が音仮名としているものの、訓仮名としているものも少数ながらあって判断が揺れていることが分かった。研究論文でも音仮名・訓仮名両説あるが、辞書などにおける万葉仮名一覧表ではどれも音仮名としてこれを扱っていることも分かった。 続いて中国古代漢字音と日本漢字音の関係から見て、ヲは「呼」の字音とはなり得ないことも確認した。ただし、「呼(ヲ)」が訓仮名を排除する仮名主体表記ではほとんど見られず、訓字主体表記に偏ること、「呼」と共通する構成要素をもつ「乎」がヲの万葉仮名として多数使用され、その類推で「呼」にもヲ音を担わせている可能性も考えられることなどから、「呼(ヲ)」は文字の形を介して「乎」とつながる、イレギュラーな音仮名であり、本来の漢字音とは離れた用法であって、訓仮名に近い意識で捉えられている可能性があると結論づけた。 これとは別に純粋な訓仮名である可能性も否定しきることはできないが、いずれにせよ、現在の辞書等における万葉仮名一覧で、他の音仮名と同等に音仮名として「呼(ヲ)」が挙げられていることは、厳密さを欠くであろうことを指摘した。 この内容は「『万葉集』における万葉仮名「呼(ヲ)」の音訓認定について」というタイトルで『日本文学研究ジャーナル』第24号(2022年12月)に発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究計画として、本来は従来、音仮名もしくは訓仮名と見なされ自明の所属を与えられていた万葉仮名を対象に、その判断に再考の余地があるものすべてについて音訓の判断を見直すつもりであった。対象となりそうな万葉仮名は多くはないが、たとえば仮名主体表記ではなく訓字主体表記へ極端に用例が偏る音仮名について、どのような性格が見られるかを検討するつもりであったが、結果として「呼(ヲ)」のみしか深く検討して成果を発表するまでには至らなかった。 そのため、本来の研究計画としては現状でやや遅れていると言わざるを得ない。その理由としては新型コロナウイルスへの対応による生活上の支障で、予想以上に研究時間を削らざるを得なかったことと、その対応もあり申請者が体調を崩すことが多く、思うように課題に取り組めなかったことがある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は遅れた分を取り戻すため、まずはその他の万葉仮名で検討の対象となるものについても音訓の再検討をおこなう予定である。また、その結果にもよるが、これまで音仮名とひとくくりにされていた仮名群のそれぞれの性格を訓仮名との近似という見方で捉え直すこともおこないたいと考えている。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)