A study on the role and actual condition played by neighborhood associations as a community during World War II
Project/Area Number |
22K13192
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白木澤 涼子 北海道大学, 経済学研究院, 助教 (90912410)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 町内会 / 第二次世界大戦 / 大日本帝国憲法 / 明治地方自治体制 / 市町村 / 自治 / 衆議院議員選挙法 / 植民地 / 地域共同体 / 自然災害・人災 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、第二次世界大戦を未曽有の人災と捉え、そこでの町内会の働きをソーシャル・キャピタルの観点から捉え直し、そのポジティブとネガティブな二面性を明らかにする。ソーシャル・キャピタルの二面性を前提として、今後のわが国の自然災害・人災を問わず、災害時における人々の生活と生命を守る指針の一つとなることを目指す。 従来の研究史では、町内会は第二次大戦下、戦時国家体制を支えたとされた。仮に町内会がなければ、国民生活はより壊滅的でパニック状況に陥り、戦後の復興は遅れたであろう。 戦時下の町内会は、人々の生活と生命を守るために、地域の実情と特徴に合わせた創意工夫ある働きを行った。その全国的実態の解明を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、国立国会図書館で全国の第二次世界大戦中・後の町内会に関する資料の検索収集と、滋賀県で市町村資料の調査を行った。また戦時下の町内会は徴税機構としての機能を兼ねたので、税務大学校で資料調査を行った。国立国会図書館では、ほぼ全国に渉る資料の有無と実態をつかむことが出来た。滋賀県では、複数の市町村の文書資料を発掘することが出来た。全国的な資料の有無の確認と、滋賀県を中心とする文書資料の発掘により、町内会の全国的な動向が把握できた。その一方で本研究の主眼のひとつである、町内会は全国的には一律した命令系統下にあるものの、地方の特殊性に合わせて柔軟に対応したという仮説に対して、ある程度の確証が得られた。税務大学校にある租税資料で、戦時下の町内会における租税徴収の実態も明らかとなった。 町内会は1943年の市制町村制中改正法で市町村の下部組織となるが、この件について明治地方自治体制の枠組や帝国憲法との関連から考察を行った。 帝国憲法と明治地方自治体制との関連については、従来から指摘されていたが、具体的にはどのような関連性があるのかは明らかではなかった。1888年の市制町村制制定により市町村を公法人として創設し、そのことを前提に帝国憲法が制定された。公法人は府県・市町村の他に、水利組合・法人区・財産区などがあったが、1940年の地方税法により府県・市町村以外は全て公法人としての扱いが消滅した。その一方で1940年「部落会町内会等整備要領」で、市町村の下部組織として新たに部落会・町内会を創設した。明治地方自治体制は、ここに府県、市町村、部落会・町内会という構造的な再編を行なった。 以上を第二次世界大戦下の町内会の実態を明らかにするとともに、帝国憲法・明治地方自治体制における公法人の理論的位置づけを明確にした。研究成果については、査読論文2本として発表し、学会・研究会報告を7回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国的な町内会の動向に関しては、国立国会図書館での資料調査をはじめ、各都道府県の町内会の資料をネットや各都道府県の図書館の検索を通じて、ある程度収集することが出来た。 現地での資料調査では、特に滋賀県での資料調査が有益であった。 複数の市町村の公文書を発掘することが出来、具体的な町内会の実態が明らかとなった。 全国的な町内会の資料も収集することができ、滋賀県の事例との比較検討が可能となった。 全国的な町内会については省令などである程度の動向が明確となり、地方における地域性やまた個別住民の事情に応じた町内会の戦時下での、命と財産を守る働きが明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
第二次世界大戦下の町内会は、市町村からの防空・配給制度・徴税・国債の応募などの事務を処理していた。2022年度の研究調査により、新たに町内会と軍事・防衛との関連が明らかになった。 そこで、軍事と地方制度との関連性を明らかにする。衆議院議員選挙法では、1925年まで奄美大島・対馬・隠岐・佐渡は人口比とは関係なく独立区でかつ一人区であった。これらの島嶼が参政権で優遇される一方で、小笠原島は同じ島嶼でありながら戦後まで参政権がなかった。そこで奄美大島・対馬・隠岐・佐渡と小笠原島との、軍事・徴税面での対比を行い、明治地方自治体制においては、帝国憲法が定める「兵役ノ義務」「納税ノ義務」と参政権の間に、一定の法則があったことを示す。このことは、植民地において1945年に参政権が与えられた要因は何かを展望することにもなろう。 さらに1940年「部落会町内会等整備要領」、1943年の市制町村制中改正法によって市町村の下部組織とされた町内会の、明治地方自治体制における歴史的位置づけ、ならびに帝国憲法との関連性を見出す。具体的には、1945年に制定された義勇兵役法は、男子の兵役における年齢を大幅に拡大し、新たに女子も兵役の対象とした。義勇兵役法と、地方制度さらには町内会・部落会との関係を明らかにする。 2023年度は、町内会の、帝国憲法ならびに明治地方自治体制における理論的位置づけを行うとともに、第二次世界大戦下、町内会が人びとの命と財産を守るべく果たした役割を、従来の防空・配給制度などの他、帝国憲法が定めた「兵役ノ義務」「納税ノ義務」との関連を視野に入れながら、その実態とともに明らかにする。 以上の研究成果をもとに、今後わが国の自然災害をはじめとする「有事」の際に、人びとの命と財産を守るために町内会がどのように働くべきか、またどのようなことに留意すべきかを、戦時下の事例から提言することを目指したい。
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Report
(1 results)
Research Products
(10 results)