近世における上ライン空間秩序の解明―アルザス史とオーバーライン史の分断を越えて
Project/Area Number |
22K13231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安酸 香織 日本大学, 国際関係学部, 助教 (00845026)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ライン上流域 / アルザス / オーバーライン / 史学史的考察 / ライン川上流域の歴史研究 / アルザスとオーバーライン / ライン航行問題 / 空間論 / 近世国家論 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近代以降の政治的影響を受けて分断されたライン川左岸のアルザス史と右岸のオーバーライン史を有機的に結び付け、近世ライン川上流域の歴史像を提示する試みである。 具体的には、ライン川の航行をめぐる問題を仏・独・ラテン語の史料を用いて総合的に分析し、諸権力が繰り広げた紛争と解決のなかで同地域の秩序を可視化する。 本研究は、越境という観点から多様な分野で注目を集めているライン川上流域の長期的理解を可能にするとともに、既存の地域史・各国史・国際関係史を横断する新しい歴史研究に道を開く。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度の研究成果は、アルザスとライン上流域の関係について史学史的考察をしたこと、またライン川の航行特権と自由航行をめぐる問題に関する先行研究と刊行史料を部分的に読み解いたことである。 まず史学史的考察という点では、伝統的なアルザス地域史研究、オーバーラインを対象とするドイツの地域史研究、そしてライン上流域という新たな視角、これら三者の関係について以下のことを明らかにした。アルザスの通史は18世紀前半にフランスにて、オーバーライン史研究は19世紀半ばにドイツにて登場した。その後フランスではライン左岸のアルザス史研究が進んだ一方、ドイツでは20世紀前半にアルザスを含めライン両岸に広がるオーバーラインの一体性の証明が試みられ、それがナチス政権により利用された。そのため戦後はオーバーラインという用語の使用は避けられるか、意識的にアルザスを除外する形で用いられるようになった。ただし近年の中世史研究では、アルザス史とオーバーライン史の分断を乗り越える試みが行われており、ライン上流域のまとまりと両岸の相互関係が明らかにされつつある。本研究課題は、近世のライン上流域の権力秩序を具体的に明らかにすることであるが、以上の史学史的考察を通して本研究の位置づけをより明確にすることができたといえる。その考察結果は、査読論文として学術雑誌に掲載された(安酸香織「アルザスとライン上流域をめぐる史学史的考察」『日仏歴史学会会報』第37号、2022年、17-30頁)。 続いてライン川の航行特権と自由航行をめぐる問題については、先行研究を整理したうえで、ウェストファリア条約史料集を用いた分析に着手した。ただし後述のように、何らかの分析結果を提示するところまでは進んでおらず、この点は来年度の課題として残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、ライン川の航行特権と自由航行をめぐる問題について、刊行史料を用いた分析を行ったうえで、令和5年3月に在外実地研究を行う予定であった。 しかし研究の過程で、具体的な分析を行う前に、地域史の史学史的考察が必要であることが明らかになった。そのため令和4年度は当該作業に取り組み、上記の研究成果が得られた。一方、計画の変更に伴い刊行史料を用いた分析の進捗状況は予定の4分の1程度にとどまり、在外実地研究も令和5年度に延期せざるを得なくなった。 本研究課題以外の研究活動、具体的には令和5年度に出版予定の図書の執筆ならびに洋書の共同翻訳に想定以上の時間がかかったことも、本研究がやや遅れている理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず「ライン川の航行特権と自由航行をめぐる問題」について、前年度に終えられなかった刊行史料を用いた分析と在外実地研究を、令和5年度前半に実施する。在外実地研究の時期は令和5年8月の一か月間を予定しており、ストラスブールのバ=ラン県文書館をはじめ、フランス、ドイツ、オーストリアの各文書館にて史料を調査・収集する。そこで入手した一次史料を用いた分析を、令和5年度後半と令和6年度春季の約9か月間で行う。 それに伴い、令和6年度前半に予定していた「周辺諸権力の介入による紛争と解決」についての刊行史料を用いた分析は、同年度夏季の3か月間に短縮する。その際に対象から除外した刊行史料については、令和6年度後半以降に適宜用いることとする。 令和6年度後半以降は、当初の研究実施計画通りに進める予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)