自律を基底に据えた障害者に対する生存権保障の法理論と実践に関する比較法的研究
Project/Area Number |
22K13283
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
杉山 有沙 帝京大学, 法学部, 講師 (00705642)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2026: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
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Keywords | 自律 / 障害者 / 社会的弱者 / 関係性 / 自己決定能力 / 生存権 / 自己決定権 |
Outline of Research at the Start |
本研究課題は、個人の自律を基底に据えた障害者に対する生存権保障が、具体的にどのような規範を導き出すのか、について憲法論として研究するものである。これを検討するために、本研究課題では、「自律を基底に据えた生存権保障」という理論について、①障害者の「自律」に関する法的定義とその意味、②その「自律」を保障(または支援)する生存権保障の具体的な制度設計、そして③「自律」を組み込んだ生存権をめぐる司法審査のあり方、という3つの観点から研究する。このとき、障害法が重視する「自立生活(independent living)」理論を参考に、障害者権利条約とイギリス法を比較対象法に据えて検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題について、2022年度は、障害者を初めとする社会的弱者の自律の保障について、日本国憲法論への応用可能性について研究をした。具体的に、2022年度の研究で明らかにした内容は下記の内容である。 第1に、本研究課題では、日本国憲法における社会的弱者の人権保障をめぐる論理構成を提案することに至った。そもそも、日本国憲法が立脚している「近代立憲主義」との整合性や、社会的弱者も当然対象にするものの、そうではない者に対する権利保障が主要な問題になる思想良心の自由や表現の自由などの多くの人権が規定の存在を踏まえ、社会的弱者の人権保障の文脈であったとしても、樋口陽一のいう反結社主義的な「強い個人」を前提にすべきである。無論、事実上、存在するであろう「社会的弱者」をめぐる人権問題の存在を無視するべきだと考えているわけではない。そこで本研究は、「強い個人」論の補完原理として「弱い個人」論を据え、存在が無視される社会的弱者の存在を認識した上で、あえて目隠しをすることで、近代立憲主義に基礎づけられる日本国憲法の人権のカタログの保障の効力を堅持しつつ、社会的弱者の人権を守る手がかりにすることを提案した。 第2に、本研究課題は、日本国憲法において「自律」と「自己決定」は重なりあうが異なるものであると言うことに注目し、日本国憲法上、「自己決定(権)」に関しては「自己決定能力がない者」がいることを従来の学説にしたがって認めるものの、「自律」に関しては「自律能力がない者」は存在しないと捉えると言う帰結に至った。ただし、自己決定能力がない者を始め、事実上、自律能力の存在を疑問視せざるを得ない者を無視することもできない。そこで、本研究は、特に「自律的な生」の保障に関して、「関係性」に活路を見出し、その関係性の質の保障の憲法的な性格を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究内容・成果は、本研究課題の確信となるものと位置付けられるから。今後は、この研究成果をもとに、生存権の保障の際に、障害者を初めとする社会的弱者の自律の観点を組み込む方法を検討して行きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の概要と進捗報告に記載した通り、本研究課題の核心的なものについては、おおよそ方向性を確認することができた。しかし、当然、これは、本研究課題の「視点」と「姿勢」を明らかにすることができたに過ぎない。今後、この視点と姿勢を反影させて、制度設計のあり方や、司法審査基準、そして、「障害者」以外の社会的弱者の権利保障への応用のあり方を研究する必要がある。今後は、これらの観点を順に、そして丁寧に、研究していきたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)