契約責任法における損害算定論――実体的規範の確立と「契約」の役割の解明
Project/Area Number |
22K13306
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05060:Civil law-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林 耕平 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (40907250)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 契約責任 / 債務不履行 / 損害賠償 / 金銭的評価 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,契約責任法において損害の金銭的評価(算定)はどのように行われるべきかという問題に取り組むものである。この問題については,従来十分な理論的検討がなく,算定に関する実体的規範の定立がわが国の民法学の課題となっている。また,種々の論点において「契約」の意義を強調する近時の契約責任法学の潮流を踏まえると,算定論において「契約」がどのような役割を果たすのかという点も同時に明らかにする必要がある。そこで,本研究は,ドイツ法を主たる比較法的素材として,わが国の契約責任法における算定論に妥当すべき実体的規範の内容と,その実体的規範との関係で「契約」が果たす役割を明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、契約責任法において損害の金銭的評価(算定)はどのように行われるべきかという問題について、損害論を分析視角とした比較法的検討を行うものである。2023年度は、前年度に引き続き、この問題をめぐるドイツ法の議論を検討した。 具体的には、仮定的瑕疵除去費用の賠償は認められるべきか(例えば、請負人や売主の給付に瑕疵がある場合に、注文者や買主は修補することなく修補費用の賠償を請求することができるか)という問題について、近時連邦通常裁判所の判例が立て続けに出たことから非常に活発化しているドイツ法の議論を調査・検討し、研究報告を行ったうえで、その成果の一部を公表した(残りの成果も、次年度前半に公表される予定である)。公表論文では、ドイツにおいては、修補費用自体を損害とみる立場と、瑕疵自体が損害にあたり、修補費用の賠償は債権者が債務者の負担においてその損害を除去することを可能にするために認められるものであるという立場の間に根本的な対立があり、この対立が仮定的瑕疵除去費用の賠償の可否という問題に一定の影響を及ぼしていることなどを指摘した。 このほか、必ずしも契約責任に直接的に関係するわけではないが、損害賠償の効果に関わる判例として、不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金を民法405条の直接適用または類推適用により元本に組み入れることの可否について判断した近時の最高裁判例について検討を行い、報告を行った(判例評釈は、次年度に公表される予定である)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度に予定していた第1の研究作業は、仮定的瑕疵除去費用の賠償をめぐるドイツ法の議論を調査・検討し、成果を公表することであったが、「研究実績の概要」欄で述べたとおり、その目標は概ね達成された。もっとも、仮定的瑕疵除去費用の賠償をめぐっては、近時、請負、売買、賃貸借の領域で立て続けにドイツ連邦通常裁判所の判例が出ており、多数の論文が今なお公表され続けているという状況にあることから、議論の調査および成果の取りまとめにはかなりの時間を要することとなった。これにより、第2の研究作業として予定していたアメリカ法の検討にはほぼ着手することができなかったことから、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、まず、2023年度中に行ったドイツ法の検討の成果を順次公表していく。 続いて、損害算定論における「契約」の役割を明らかにするため、アメリカ法における損害算定論の調査・検討に着手する。アメリカ法については必ずしもこれまで専門的な研究を行ったことがないため、当初は文献の収集や議論状況の把握に苦労することが予想されるが、ドイツ法の検討過程で、算定論に関するドイツ法とアメリカ法を比較するうえで有益な示唆をもたらすと見込まれるアメリカの論文を複数発見しているため、それらを手がかりに調査を進めていきたい。 最後に、ドイツ法・アメリカ法の検討結果を踏まえて、日本法へのフィードバックを行い、その成果を公表する。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)