量子ビット応用に向けた酸化物半導体における暗励起子スピン流の研究
Project/Area Number |
22K14292
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 21050:Electric and electronic materials-related
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 尚人 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (50929669)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
|
Keywords | 酸化物半導体 / 垂直磁気異方性 / 反応性スパッタリング / スピントロニクス / 励起子 |
Outline of Research at the Start |
量子ビット応用が期待される暗励起子の生成と検出を研究する。暗励起子は固体中で電子と正孔が結びついた励起子のうち、光学遷移が禁制され消滅確率の低い長寿命な励起子である。電気的にも光学的にも直接検出不可能のため、発光デバイスおよび光電変換デバイスの研究ではほとんど触れられることのない日陰の存在だったが、その長寿命性から量子ビット応用が期待されている。研究代表者は、スピン角運動量を用いることにより暗励起子を検出可能である考えており、その基盤技術を研究する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
スピン流検出技術と励起子技術を複合して新たな量子ビットの提案を目指す本研究において、当該年度は(1)スピンの源となる強磁性半導体の開発研究(2)励起子材料となる酸化物半導体へのスピン注入の研究を実施した。 新材料・新手法の研究を立ち上げ、二つの成果を得た。 (1)強磁性半導体の開発において、強磁性転移温度を向上させる新たな方法を開発した。膜構造の不均一性を積極的に活用することによって、より高温でも半導体が強磁性を示すナノスケール不均一性に着目した実験を行った。研究室独自技術である、窒素添加結晶化法を用いることによりナノスケール不均一性を誘起することに成功し、強磁性転移温度を3倍向上させた。 (2)励起子材料として酸化亜鉛に着目し、電子スピンの注入を試みた。電気的スピン注入法の場合、スピン注入源として用いる強磁性金属が酸化物半導体と接触することにより酸化されるため、スピン偏極を維持することが困難である。そこで、代替手法として酸化物の強磁性材料に着目し、マイクロ波を用いた動力学的スピン注入法を検討した。量子ビットへの応用には薄膜表面に垂直方向に磁化を有する垂直磁化膜を用いることが望ましいため、酸化物かつ垂直磁化となる材料の作製方法を開発した。強磁性体と半導体を同一の成膜装置で作製することに初めて成功し、積層構造の作製に成功した。さらに、磁気共鳴の半値全幅を測定したところ、動力学的スピン注入法によるスピン注入が示唆される結果を得た。 最終年度となる2023年度は実験成果をまとめ、論文として発表するための追加実験を進めるとともに、励起子デバイス作製の肝となる高品質単結晶成長技術を研究する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強磁性半導体の作製および励起子材料となる直接遷移半導体へのスピン注入に必要な強磁性酸化物の開発に成功した。また、紫外線の波長を有するレーザー光源を用いた励起子発光の評価環境を立ち上げた。 励起子のスピン偏極状態を形成するために、半導体中に電子スピン流を生成する必要がある。その供給源となる強磁性半導体は強磁性転移温度が低いことが問題となっており、本研究でも電子スピン流の生成手法の開発を第一に取り組むべき課題と位置付け、二つのアプローチで研究に取り組み一定の成果を得た。 まず、窒素添加結晶化法を用い、強磁性半導体の強磁性転移温度の向上に成功した。理論的には2012年に提案された比較的新しい着眼点であるが、現実的にそのような効果を再現できるかどうか、議論が続いていた。研究室独自技術を応用することにより、ナノスケール不均一性を誘起したうえ、独自の解析方法を考案することにより、この不均一性が強磁性転移温度向上に資することを示した。強磁性転移温度が未だ液体窒素温度に届かないため、引き続き独自技術を深める研究に取り組む。 次に、垂直磁気異方性を有する強磁性酸化物薄膜を作製し励起子の媒体となる酸化物半導体とのヘテロ構造を同一装置で作製することに成功した。垂直磁気異方性をもつ酸化物材料は、従来は実験室でしか使えない特殊な装置を用いて作製されてきた。本研究の取り組みにより酸化物半導体作製に用いられるのと同じ装置を用いて作製することに初めて成功した。基板とターゲット位置に依存するものの、反応性スパッタリングにより作製した薄膜に熱処理を施すことにより、垂直磁化膜が得られることが明らかとなった。この新しい材料の磁気異方性の測定にあたり、新たな国際共同研究を行うきっかけを得た。これにより励起子へのスピン転写に必要な強磁性体/酸化物半導体の積層構造の作製が可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
スピン流の生成に必要な強磁性半導体を研究する。また、暗励起子輸送デバイス作製に向けて、肝となる高品質酸化物半導体製造技術を研究する。具体的には、反応性スパッタリングによる成膜中の内部モニタリングの技術開発に取り組む。これにより、申請者が新たに提案した結晶成長の物理モデルに即して考察を深める。 課題として、スパッタリング時のターゲット冷却が不十分のため、ターゲットの割れが起きやすいことがある。冷却されやすい構造のターゲットとカソードを設計して解決に取り組む。
|
Report
(1 results)
Research Products
(6 results)