Project/Area Number |
22K18311
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 27:Chemical engineering and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 大知 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50447421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 真澄 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30546784)
三野 泰志 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (70709922)
稲垣 奈都子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00611419)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥26,000,000 (Direct Cost: ¥20,000,000、Indirect Cost: ¥6,000,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,450,000 (Direct Cost: ¥6,500,000、Indirect Cost: ¥1,950,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,450,000 (Direct Cost: ¥6,500,000、Indirect Cost: ¥1,950,000)
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Keywords | 人工酸素運搬体 / 赤血球 / 再生医療 / 組織工学 / 膜乳化 / コアシェル粒子 / フェーズフィールド法 / マイクロ流体デバイス / 医用化学工学 / 膜 |
Outline of Research at the Start |
人工酸素運搬体(人工赤血球)は、輸血代替物や移植臓器保存液用途に加え、将来、3次元組織工学・再生医療の細胞灌流培養プロセスにも必要不可欠であるが、未だ実用化されていない。本研究では、ヒト赤血球のサイズ・形状や力学特性を模倣し、さらに超えることで、今までのPFC(パーフロオロカーボン)酸素運搬体と全く設計思想が異なる、ヒト赤血球様のサイズと形状を持つコアシェル構造を持った第4世代PFC酸素運搬体「cDFCs (concave-shaped Deformable PFC-based Oxygen Carriers)」の開発を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
人工酸素運搬体は、将来、3次元組織工学・再生医療の細胞灌流培養プロセスにも必要不可欠である。本研究では、ヒト赤血球のサイズ・形状や力学特性を模倣した「cDFCs (concave-shaped Deformable PFC-based Oxygen Carriers)」の開発を試みている。cDFCsは、ヒト赤血球様のサイズと形状を持つコアシェル粒子で、コアのPFCは様々な溶媒の中で最大の酸素溶解度を持ち、酸素を吸収放散する。最終的に、体内で長時間循環可能な革新的なPFC酸素運搬体を実現することを目標としている。 本年度は、今まで用いていたシェル素材であるPLC(ポリ乳酸カプロラクトン共重合体)に加えて、PDMS-TPE(ポリジメチルシロキサン熱可塑性エラストマー)をシェル素材に用いた人工酸素運搬体の開発に成功した。PLCと異なって、PDMS-TPEでは、コアのPFOBに対するPDMS-TPEの比率を大きくすると、溶媒浸漬法を用いることなく、真球状から凹状形状に形状が変化し、シェルの厚みが薄くなるほど形状が赤血球に類似してくることに明らかになった。またシェル厚みの減少と形状の変化に伴って、酸素運搬体の変形能も大きくなることがわかった。さらに酸素透過性に優れたフッ化ポリイミドシェルと酸素溶解度に優れたFDC(パーフロロデカリン)をコアに持つ酸素運搬体の開発にも成功し、様々な性能の改善を達成した、異なった酸素運搬体群の創出に成功した。 さらにPLC/PFOB型酸素運搬体に、分散相にブロックコポリマーを添加するのみでPEG(ポリエチレングリコール)コーティングを施することに成功し、マクロファージの貪食を著しく抑えることに成功した。山田が開発したPDMSマイクロ流路によって、コアシェル粒子の深さ4μmの流路通過性が、コーティングの有無によって大きく変化することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進捗している。最大の課題であるより優れた変形性の獲得に向けて、PLCシェルよりも柔軟性と酸素透過性に優れた素材であるPDMS-TPEによって、新しい酸素運搬体を開発し、PLC/PFOB型よりもより柔軟性と酸素透過性に優れたcDFCsの開発に成功している。優れた酸素透過性と光透過性を利用して、プラチナ錯体であるハイポキシアで燐光を発する酸素プローブをシェル層に担持することで、酸素濃度測定と酸素運搬能を兼ね備えた酸素運搬体の開発にも成功している。さらにコーティングポリマーとして複数種類の検討を行ったが、PEGコーティングの密度を制御することによって、LPSで刺激したマクロファージ細胞株においても、ほぼファゴサイトーシスを抑えることに成功した。 酸素運搬能に関しては、今まで用いてきた低酸素でGFPを発現するhrHeLa細胞を用いて、酸素供給能の改善を図ってきたが、あらたに膵島β細胞株を用いたスフィロイド形成過程において、プレリミナリーな結果であるが本酸素運搬体の使用が効果的であることが示唆され、再生医療への応用展開に着手している。 三野らによって、相分離シミュレーションにおいても、パルスフィールズ法の改良によって、3成分系(F/O/W)液体が壁面を濡らした場合の計算により、凹状形状の形成メカニズムに迫ることも試みている。山田らによって、新たなマイクロ流路の開発も試みられており、スリット状の流路に加えて、多孔膜を組み合わせた新たな流路設計にも成功している。 以上のように、酸素運搬体の性能の進化と、評価技術の進歩に着実な進捗を見ており、動物モデルにおける評価への準備が大きく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
酸素運搬体の素材や形状の改善による変形性能の進歩、およびコーティングや形状・柔軟性等によるIn vitroでのマクロファージによるファゴサイトーシスの大幅な抑制の2つの成果は、in vivo実験において、目標とする長期滞留性の獲得に向けて、大きなアドバンテージとなる。赤血球の寿命は120日程度であり、加齢とともに柔軟性を徐々に喪失することが知られており、古い赤血球は脾臓によって捕捉され、分解される。マイクロサイズの人工酸素運搬体も毛細血管の十分な変形通過性を獲得できない場合は、in vivoでの静脈投与において、脾臓や肺などに集積するもの考えられる。 現在、本研究で開発された、もっとも柔軟性に優れているPDMS-TPE/PFOB酸素運搬体に、PLC/PFOB酸素運搬体と同様の手法で、PEGコーティングを付与すること検討する。さらに柔軟性や形状異方性とファゴサイトーシス抑制の関係についての検討をおこなう。 本研究では、最終年度の2024年度において、1,2年目の成果を基盤に、マウスあるいはラットにおいて、in vivoイメージングを行い、酸素運搬体の体内動態を研究する。蛍光色素を封入した酸素運搬体群を開発することによってIVISにより臓器分布を解析する。またPFCに由来する核種から19F MRIを用いた解析によって、in situに臓器分布の変化を測定し、IVISのデータと比較検討する。また各個体の健康状態も重要な要素であり、酸素運搬体の血管閉塞などによる副作用がないことを同時に詳細に検討する。
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