Project/Area Number |
22K18489
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 3:History, archaeology, museology, and related fields
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
野村 陽子 沖縄科学技術大学院大学, サイエンステクノロジーグループ, サイエンス・テクノロシ゛ー・アソシエイト (90302794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 好司 沖縄科学技術大学院大学, イメージングセクション, リサーチ サポート スペシャリスト (60343563)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
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Keywords | 琉球古布 / 芭蕉布 / 苧麻布 / 原材料 / 単純反復配列 / 顕微鏡画像 / イトバショウ / 伝統布 / 琉球 / DNA判定 / 顕微鏡観察 / ディープラーニング |
Outline of Research at the Start |
文化財でもある古布の研究では、非侵襲かつ正確な判定が求められている。特に、沖縄の植物素材の古布では、他地域の布との判別に品種レベルでの判定が必要である。そこで、正確に生物種を判定できるDNA判定に、非侵襲判定を目的とした人工知能(AI、本研究ではディープラーニング)による画像処理を組み合わせた、新しい方法を開発する。 本研究で開発する方法は、天然繊維素材の布であれば判定可能になるため、その応用範囲は広く、学術的な要素だけではなく、伝統工芸の純正品の判別も可能である。また、最先端技術の伝統工芸や文化財への活用の提案になり、伝統工芸とは無関係に見える多くの分野への展開も見込まれる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の遂行には,伝統布産地で収集した原材料植物と伝統布が必要であることから,2023年度は新潟県小千谷市と沖縄県宮古市で原材料植物の苧麻(沖縄県と本土では種類が異なる)と伝統布,さらに宮古上布と類似した外観を持つと言われる能登上布を石川県で収集した.小千谷縮では国産の苧麻(青苧)を使った伝統工芸品の他に,外国産ラミー糸が使われた製品,宮古上布では宮古産の苧麻の手績みの苧麻糸が使われる伝統的な宮古上布の他に,外国産ラミー糸(宮古麻織)や綿糸との交織布(宮古織)も生産されていた. 非侵襲判定の画像収集を目的として,これらの収集した布表面をスキャナーや各種顕微鏡により撮像し,さらに2022年度に購入した画像解析用のPCを用いて各種プログラムによる解析を進めた.この時に,画像判定の重要な要素である織り密度の解析法も検討した.得られた布の表面画像では,産地間だけではなく,同じ産地でも材料の違い,加工の有無によって異なる伝統布の表面が観察された.蓄積された画像の一部は,2024年度の日本家政学会大会で発表予定であり,芭蕉布やその原材料の画像や撮像方法に関する投稿論文も準備した.この他に,大阪民芸館のイベントで芭蕉布(沖縄の伝統布)やその材料の顕微鏡観察会と関連する講演を行った. 布の正確な素材判定に関しては,2022年度に単純反復配列(SRR)の増幅条件がイトバショウ(芭蕉布の原材料植物)で得られていたことから,2023年度は芭蕉布の経糸と緯糸をできる限り注意深く分離し,それぞれから繊維を収集し,ゲノム抽出とSSR配列増幅を行った.しかし,ゲノム抽出時にコンタミネーションが生じたため,閉鎖環境の整備,より効率の良いゲノム抽出キットを使用し改善を図った.また今年度に収集した植物材料の苧麻やリュウゼツランからゲノムを抽出し,SSRのためのPCRの条件を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本来は2023年度が本事業の終了年度であったが,初年度(2022年度)に計画していた,本研究で必要となる材料(伝統布とその原材料植物)の収集がほとんど進まず,これにより昨年度の段階ですでに計画に遅れが生じていた.そのため,他大学の研究者の協力も仰ぎ,2023年度はいくつかの伝統布の産地に赴き,必要な材料をできる限り鋭意に収集し,原材植物(苧麻,リュウゼツラン,葛)のゲノム抽出や伝統布表面の微細構造の撮像を進めた.しかし初年度の材料不足に伴う計画の遅れは,今年度だけでは十分に回復できなかった. また,芭蕉布の原材料植物(イトバショウ)のゲノム抽出と単純反復配列(SSR)の増幅と同条件で,芭蕉布を構成する繊維からゲノムを抽出し,SSRを増幅させたところ,クロスコンタミネーションが生じた.そのため,閉鎖系環境の構築と,より効率の高いゲノム抽出の検討が必要となり時間を要した.そして非侵襲判定では,AIによる解析に必要なディープラーニングのために,より多数の伝統布や材料の画像が必要であり,いまだに画像を蓄積中である.このような状況から,現在までの進捗状況を遅れていると判断した.なお,本研究の目的達成には時間を要すると考え,本事業を2024年度まで延長した.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度までに概ねの材料が揃ったこと,またクロスコンタミネーションについて対処していることから,1年間の延長期間中にある程度の結果は得られるものと予想される.具体的には,植物材料(苧麻,リュウゼツラン,葛)から抽出されたゲノムを用いて, 単純反復配列(SSR)増幅のための詳細な条件を決定し,サンガーシークエンスにより配列の確認を進める.その上で,2023年度に整えた閉鎖環境内で,各種伝統布の繊維から効率の良いゲノム抽出を行い,SSRを増幅し,その配列を確認する.このときに,苧麻布と芭蕉布を優先して進める.最終的には,これまでに原材料が正確に判定できていない桐板布(沖縄の伝統布の一種)について原材料の判定を試みる.桐板布の材料の候補としてリュウゼツラン,葛,苧麻等が挙げられるが,桐板布繊維のSSRの確認と,布の微細構造の画像解析の両面から,その原材料を判定したい. また,十分な数の画像を蓄積することでディープラーニングの条件を決定し,画像から非侵襲に伝統布を判定できる,初期的な方法を提示する.さらなる画像蓄積のために,必要であれば,これまでに時間を調整できず赴くことのできなかった,近江上布や奈良晒の産地に赴き,昨年度と同様に伝統布の収集も行う予定である. さらに得られた画像については,学会等で発表していく予定である.具体的には,他の研究の結果と併せて,伝統布の撮像例を2024年度の日本家政学会大会で発表予定である.また芭蕉布,芭蕉布を構成する糸や繊維,その原材料植物の植物体にある採繊前の繊維の微細構造の画像解析やその撮像方法を専門誌へ投稿予定である.
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