Project/Area Number |
22K18696
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 13:Condensed matter physics and related fields
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
花栗 哲郎 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (40251326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
町田 理 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (60570695)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
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Keywords | 走査型トンネル顕微鏡 / 単一原子操作 / 強相関電子系 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、電子状態解析ツールである走査型トンネル顕微鏡が、単一原子操作にも用いることができる点に着目する。超伝導体やMott絶縁体など電子相関が本質的に重要な系の表面に、単一原子操作によって人工構造を作製し、非自明な「新物質」をボトムアップ的に実現する。規則配列した原子のスピンや電荷と、基板の多体効果が協奏・競合して生み出す電子状態を、走査型トンネル顕微鏡を用いた分光イメージングで解明し、新しい量子現象を探索する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、走査型トンネル顕微鏡(STM)探針を用いて単一原子・分子を操作できることと、電子分光手法として数10 μeVにも及ぶ高いエネルギー分解能を有することを利用して、電子相関が顕著となる物質表面に非自明な電子状態を人工的に作り出すとともに、そこに創発する物性を探索する。基板として利用する候補物質の一つとして、1T-TaS2を予定しているが、バルク試料表面に形成されるドメイン構造や積層パターンの多様性に起因して電子状態が非常に複雑であることが明らかになってきたので、単純化するために、分子線エピタキシー法(MBE)による1T-TaS2の単層化を構想している。MBEで硫黄を取り扱うことは難しいため、当面1T-TaS2と似た物性を示す1T-TaSe2の成長を目指している。本年度は、MBEの試験として、作製条件が比較的確立している2H-NbSe2単層膜のMBE成長を試み、作製した単層膜を可搬超高真空チャンバーによってSTMに移送して100 mK以下の超低温での原子像観察、分光イメージングが可能なことを実証した。 電子状態評価の手法として、通常のタングステン探針を用いたトンネル分光測定の技術は、ほぼ確立している。これに加え、スピンに関する情報も取得するため、超伝導体の磁性不純物が形成する100%スピン偏極したYu-Shiba-Rusinov状態を利用した高感度スピン検出を試みている。スピン検出の実証は終了しているが、超伝導探針を再現性よく作製することが難しかった。探針材料として超伝導転移温度の高いNbを利用しているが、探針先端が超伝導を示さないことが多く、探針先端の清浄化法確立が必要である。本年度はNb探針とNb単結晶基板を利用し、探針と基板の制御された衝突と電界放出を組み合わせることで、再現性よく超伝導探針を準備する方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高エネルギー分解能測定には、100 mK以下の超低温環境が不可欠である。そのため、既存の希釈冷凍機STMに加えて、新たに納品予定だったSTM用の希釈冷凍機を立ち上げ、2台のシステムで研究を遂行する予定だった。しかし、希釈冷凍機の納品が大幅に遅れ、納品後もポンプの不具合が見つかったことで、年度内の稼働ができなかった。そのため、STMの稼働時間が限られ、特に原子操作に関しては超伝導探針に鉄原子を吸着させるに留まっている。しかし、超伝導探針の調整方法にめどがついたことにより、従来のタングステン探針を用いた電子状態評価と、Yu-Shiba-Rusinov探針を用いたスピン状態評価の両方が可能になりつつある。また、薄膜試料の測定が可能になったことにより、対象となる物質の幅を増やすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2台目の希釈冷凍機の立ち上げを急ぎ、STMの稼働時間を確保して、原子操作の実験を加速する。基本的には、様々な基板に鉄原子を吸着し、原子操作で作製した人工構造の電子状態を分光イメージングSTMによって調べる。基板としては、トポロジカル超伝導体候補物質β-BiPd2とクラスターMott絶縁体1T-TaS2を計画しているが、Yu-Shiba-Rusinov探針を用いたスピン状態の評価や、MBEによる単層膜の作製が可能になりつつあるので、スピン分解しなければ検出できない、トポロジカル絶縁体上の磁性原子がもたらす準粒子干渉パターンの観測や、単層2H-NbSe2上の磁性原子がもたらす特異な電子状態の解像も試みたい。
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