分子性錯体プリカーサーを用いた機能性無機材料の創成
Project/Area Number |
22K19055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 34:Inorganic/coordination chemistry, analytical chemistry, and related fields
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
張 浩徹 中央大学, 理工学部, 教授 (60335198)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | ゼオライト / 分子性プリカーサー / 水熱合成 / スピロ7型 / 多孔性材料 / 固体酸触媒 / モレキュラープリカーサー / 分子設計 / アルミノシリケート / アルミノフォスフェート / 分子修飾 / 多孔性 / 無機材料 / 分子プレカーサー / 錯体 / 機能性材料 / 合成 |
Outline of Research at the Start |
無機物質は固体酸触媒からマルチフェロイクス材料まで広く研究されている。これらの合成は、1)高い合成エネルギーコストや2)Trial-and-errorを避けられない事に加え、3)副生成物や4)欠陥の制御に困難を伴うことも事実である。従って今後新しい材料を作るためには、従来法とは一線を画す合理的で低コストな新合成法の開発が不可欠である。そこで本研究では、「新しい化学機能は、新しい元素・結合・最小単位構造とその周期的配列に宿る」という立場に立ち、高度に設計された分子プレカーサー(MP)を用いた無機物質創成の新学理を構築し、低エネルギープロセスによる高活性触媒や磁性/誘電材料を与えるための礎を築く。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、触媒活性や物性(磁性・誘電性)発現機能を担う元素・結合・特異的構造を持ち、且つ構造と組成が明確なMolecular Precursor(MP)を用いた新しい機能性無機材料合成法(以下、MP法)の確立を目的としている。本研究ではまずMP法の礎を構築しその有用性を実証すべく工業触媒としても広く活用されている多孔性アルミノシリケート型固体触媒の創成を目指しSi/Al/O系MPを用いた合成を遂行した。申請者らは、Si-O(H)-Al型の強Bronsted酸点を与える四配位Alサイトの選択的導入を指向したSi/Al/O系Spiro-7型MPからの結晶性ゼオライトの高選択合成に成功している。注目すべき事に、本手法は、従来のSiO2, Al2O3等を用いた合成よりも高い選択率で結晶性ゼオライトを与えると同時に、構造・組成が明確なSi/Al/O系MPからゼオライトを合成した初の例である。MP法によるゼオライトを合成することに成功した一方、生成したゼオライト骨格はspiro-7型構造のみでは構築できず、分子骨格が加水分解していることに着目した。そこでSi-C結合がSi-O結合より熱的安定性が低いことを利用し、単純な加熱のみでアルミノシリケートへ変換できると考え、spiro-7型分子が好気性条件下での連続昇温により全てのSi-Ph結合が活性化され、アルミノシリケートへと変換することに成功した。生成したアルミノシリケートはPh基に由来するマイクロサイズの細孔を有していたとともに、分子プリカーサー由来の構造も一部導入されていることを固体NMR法等により確認した。さらに、この構造に由来しBronsted酸性が発現し、実際に固体酸触媒として機能することも実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述のSpiro-7型MP内のPh基がKOH以外の添加物無しで脱離しゼオライトを与えることは興味深い一方、Spiro-7骨格の保持は本質的に困難である。一方申請者らは、同MPのニート加熱によりC成分をほぼ含まず(<0.35%)、Spiro-7コアの保持を示唆する多孔性アルミノシリケート合成法を見いだしそのH+交換体がスチレンオキシドの開環反応に対し良好な触媒活性能を示すことを実証した。これを実施するにあたり、新規spiro-7型分子C+[AlSi6]-(C+ = Na+,K+,Rb+,Cs+)を合成し、その加熱によるSi-Ph結合活性化とアルミノシリケート構造体構築を検討した。これらのMPはN2/O2雰囲気下、500-600℃付近にPh基の燃焼反応由来の発熱ピークを示し、生成した固体 (C+@700(O2))中の炭素残存量は0.10-1.28%であった。特筆すべきことに、これらは3 nm以下のミクロ細孔と103.1-246.3 m2/gのBET比表面積を有していた。この細孔はMPが有しているPh基に由来すると考えられ、MPの脱離基に基づく物性を有するアルミノシリケートが得られることが示唆された。アルカリカチオンを含む生成物は固体27Al MAS NMRスペクトルにおいて、四配位Alに由来する60 ppmのシグナルのみを示したことからMP構造由来のAl原子環境を導入できたことを示し、Si-Ph結合を有するMPの熱的活性化により分子構造を保持した無機材料へと変換できることが示された。 過去に多くの分子性錯体が報告されその構造と組成が明確にも関わらず無機固体材料へ応用する研究は限定的である観点から本研究成果は当該分野に一定の貢献をできると評価できる。特に非晶質生成物について固体NMR法などを用いて前駆体由来の構造の存在を実証したことは特筆すべき成果といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者らは、最近同MPのニート加熱によりC成分をほぼ含まず(< 0.35%)、Spiro-7コアの保持を強く示唆する多孔性アルミノシリケート合成法を見いだしそのH+交換体がスチレンオキシドの開環反応に対し良好な触媒活性能を示すことを実証した。本研究では、未だ達成されていない結晶性無機構造体の構築を目指すべく、最適な脱離基選定及び縮合条件探索(ニート加熱、水熱条件等)を遂行する。次に、Ph基を有するMPを用いてゼオライトや多孔性 アルミノシリケートが合成できることが明らかになった一方、Si-Ph結合の活性化には塩基や高温を要すため、より温和な条件で活性化可能な官能基をMPへ導入することが望まれる。Si-OtBu結合は140-200°Cでisobuteneガスを生じつつSi-OH結合へと熱的に変換でき、Si-Ph結合より低温で活性化できるのみならず続く縮合反応にも有利であると考えられる。そこでSi-OtBu結合を有し、spiro-7型骨格よりもSi/Al比が小さくより多くの酸点を導入できると期待される新規spiro-5型分子PyH+[AlSi4]-に着目し、その新規合成とアルミノシリケートへの変換を検証する。 最も容易に縮合し得る官能基はOH基である一方、全ての末端がAl-OHおよびSi-OH基である分子は単離が一般に困難である。[Al4Si4]はAl-O-Si結合を有する分子のうち、全ての末端がAl-OHおよびSi-OHである唯一の分子であり、40 以上のゼオライトと共通する D4R型骨格も有している。[Al4Si4]はゼオライト合成に用いるMPとして魅力的な分子であると考えられる一方、ゼオライトへ直接変換した例は無い。そこで本研究では、[Al4Si4]を用いてD4R型骨格からなるゼオライトを合成可能か検証する。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)