Socio-Religious Implications of Donation: A Study of Books 13 and 14 of the Mahabharata
Project/Area Number |
22K19953
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 健二 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (30963227)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | マハーバーラタ / 馬祀祭 / 布施 / 王権 / 教説の巻 / バラモン / 馬祀祭の巻 |
Outline of Research at the Start |
古代南アジア叙事詩『マハーバーラタ』では、親戚同士の大戦争に勝利したユディシュティラは、親族殺しの罪を償うために祭官への大規模な布施を伴った馬祀祭を挙行する。第13, 14巻では、彼の布施と祭式について異なる見解が様々な登場人物によって示される。本研究では、第13, 14巻の文献学的研究によって、王による祭官への布施がどのように捉えられていたのか、さらにその諸言説が以後の南アジアの社会像にどのような影響を与えたのかを検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、古代インド叙事詩『マハーバーラタ』(以下MBh)第13、第14巻における祭官に対する布施と王権の議論を整理することで、MBhの編纂期(BC2C~AD4C頃)において、王による祭官への布施という社会行為が当時どのように捉えられていたのか、またその諸言説が以後の南アジアにおけるヒンドゥー教的世界観および社会観の形成にどのような影響を与えたのかを検証することである。 論文「Draupadi’s Polyandry Reconsidered」では、MBhにおいて難問とされてきたドラウパディーの一妻多夫婚問題について Brockingtonの議論の検証を行った。Brockingtonは、ドラウパディーは王権の繁栄を象徴するシュリー女神を象徴しており、ドラウパディーの一妻多夫婚は王権の繁栄が異なる王に移りゆくことを象徴しているとする。本論文では、第13巻の王権の議論がBrockingtonの論拠となりうることを示した上で、その文献学的限界を検証した。 論文「マハーバーラタの神話的構造をめぐって」は、沖田瑞穂著『マハーバーラタ、聖性と戦闘と豊穣』の書評論文である。本書はMBhの構造を神話学的に分析しているものの、本書が提示する神話的構造と矛盾するような記述や、本書とは異なる分析結果を提示する先行研究についての言及が不十分であることを示した。 講演「Physiological Teachings of Yoga」ではMBhに見られる身体的ヨーガの実践と医学文献との関係性を明らかにし、学会発表「Are the Teachings on Hell...」、「シヴァ教における地獄観」では、シヴァ教における地獄観の変遷を分析した。またアウトリーチ活動として、一般講座「ヨーガってなーに?」では文献学的手法がどのようなものなのかを紹介し、MBhに見られるヨーガの思想やその後の展開を解説した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、MBh第14巻(馬祀祭の巻)の翻訳および研究、およびベナレス・ヒンドゥー大学での写本調査を行った。テキストの翻訳ならびに研究についてはほぼ予定通り進んだものの、成果公表については当初の予定よりも遅れが出ており、2023年度は論考の提出に力を入れる予定である。 MBh第14巻については、冒頭部部分から『アヌギーター』部分までの翻訳を行い、第14巻の成立過程を再考し、第14巻に見られる哲学的教説とMBhの物語との関係を分析した。第14巻の成立過程については、先行研究では第14巻はMBhの編纂後期に挿入された可能性が高いとされてきたが、MBh内の相互参照やMBhの目次の分析などから、第14巻をMBhの編纂後期に位置付ける決定的な証拠はないことが判明した。第14巻の中心テーマである馬祀祭は、大戦争のあとの贖罪として位置付けられているが、大戦争に対する罪の意識の克服という点では第12巻と重なる点が多く、第12巻との比較からより正確な成立年代の考証ができることが判明した。また第14巻に見られる哲学的教説と馬祀祭の関係性については、『アヌギーター』の特に前半部分については馬祀祭における布施を、自らの財産を惜しみなく与えることで、所有欲を克服するという克己の実践として捉えること、またそれがMBhの他の部分で説かれる布施の思想とも呼応していることが判明した。 またベナレス・ヒンドゥー大学では、先行研究で用いられていないシャーラダー写本の調査を行った。先行研究ではシャーラダー写本を中心にテキストを復元しているにもかかわらず、各巻1, 2本程度しかシャーラダー写本が使われていなかった。シャーラダー写本の読みは時に非常に特殊で、特殊な写本の読みからテキストを復元してよいのかという問題があったが、今回調査を行った写本群をもとにテキスト復元に修正を施す必要性があることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に行った研究について成果発表を行うとともに、第14巻後半部分の研究、第13巻の布施に関する叙述の分析、ならびにシャーラダー写本の調査に取り組む予定である。
第14巻の後半部分では馬祀祭の挙行が語られる。特に後半部分では、馬祀祭に伴う、犠牲獣の殺害や諸国の征服などによって引き起こされる殺生や、ユディシュティラが布施を行うために古のマルッタ王の財宝を掘り起こして自らのものにしたことが妥当であったかについて異なる見解が提示される。これらの言説を不殺生ならびに財の獲得方法という観点から整理する。また第14巻については和訳を完成させる。 第13巻の研究については、特に布施、バラモンの王に対する優位、という観点から分析を行う。先行研究では、第13巻は雑多な諸教説の寄せ集めに過ぎず、MBhの本筋とは特に関係がないと考えられてきた。しかし、第13巻は第14巻において中心となる布施、およびバラモンの地位という問題について様々な教説が見られる。本研究では、第13巻は第14巻の議論に対して、一種の理論的立場を提供していると捉え、その関係性を分析するとともに、第13, 14巻の成立過程を考察する。 また2022年度に行ったシャーラダー写本の研究も継続する。写本カタログを調査すると、これまでの先行研究で用いられていなかった多くのシャーラダー写本の存在が報告されていることがわかったが、20世紀半ばに出版された批判校訂版の出版以後、MBhの写本研究はほとんど進んでいない。2023年度は、カシミールおよびインド北部の各地にある資料館や図書館を訪問し、写本の電子複写を入手するとともに、既刊の校訂版と写本の読みを比較検討することで、テキストに修正を施す。
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Report
(1 results)
Research Products
(13 results)