ポスト・コロナ期の多文化共生の課題と難民・避難民の再定住:離散シリア難民を事例に
Project/Area Number |
22K20122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0106:Political science and related fields
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
望月 葵 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 研究員 (20962012)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 中東地域研究 / シリア難民問題 / 多文化共生 |
Outline of Research at the Start |
グローバル化が進展した現代において、国際移動がもたらす影響についての研究はその重要性を増す一方である。本研究は世界最大級の難民問題であるシリア難民問題に着目して、シリア難民の定着に関する地域間比較を行なう。その成果から、コロナ禍を経てポスト・コロナ期に突入した現代における多文化共生の在り方の議論を発展させる。そのため、中東、欧州、日本という3地域におけるシリア難民の離散と再定住の状況を、難民と受入社会のそれぞれの文化と言語の関わり合いに着目したフィールド調査によって解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、現代に至るまでの各国の難民保護制度の分析と多文化政策の比較を中心に実施した。これまで研究を進めてきたヨルダン、ドイツ、スウェーデンに加えて、今年度は特に日本の難民政策に注目した。2022年はウクライナ危機が発生したことで新たな難民問題が生じ、国際難民レジームのあり方に影響を与えた。日本も例外ではなく、これまで消極的な対応をとってきた難民受入について態度が軟化したことは注目に値する。そのため此度の難民問題をみることはシリア難民への日本政府の対応を分析する上で有用と考え、ウクライナ難民問題とシリア難民問題の比較分析を実施した。これらの研究成果については、3つの国際シンポジウム、国際ワークショップ(立命館大学アジア・日本研究所主催のThe 49th AJI Frontier Seminar、立命館アジア・太平洋大学主催のAsia Pacific Conference 2022、立命館大学アジア・日本研究所主催の AJI International Workshop From the Frontier of Asian Diaspora Studies: Perspectives on Migrants, Refugees, and Returnee Diasporas)にて英語で口頭発表を実施した。また、日本の移民・難民政策を研究する上で重要な概念である「多文化共生」について、欧米の多文化主義との比較から概念の形成過程と行政による運用について考察を行った。この多文化主義と多文化共生の比較に関する研究成果は、英語論文にまとめてJournal of the Asia-Japan Research Institute of Ritsumeikan Universityに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定していた文献調査を順調に進めることができた。これまで研究を進めてきたヨルダン、ドイツ、スウェーデンの難民政策の分析に加えて、新たに日本の難民政策の類型化を実施した。また、本年度は3回の口頭発表と1本の論文をすべて英語で発表し、本研究成果の国際発信に努めた。立命館大学アジア・日本研究所主催のThe 49th AJI Frontier Seminarでは、ウクライナ難民問題とシリア難民問題の相違点について議論を深めることができた。また、同じく立命館大学アジア・日本研究所主催の AJI International Workshop From the Frontier of Asian Diaspora Studies: Perspectives on Migrants, Refugees, and Returnee Diasporasでは、世界各国から集まった移民・難民研究者から日本の多文化共生という概念を考察するにあたって有意義なコメントをいただくことができた。これらのコメントを参考にしてさらに研究を進め、欧米の多文化主義と日本の多文化共生を比較分析し、英語論文を投稿した。 これらの理由から、本研究課題の進捗状況については、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、文献調査より得られた研究成果を国際的に発信し、本研究の内容をさらに発展させることに努めた。また、世界各国の移民・難民研究者との間で研究交流を深めることができたことは、今後の研究ネットワークの構築に寄与するものであると考える。 来年度(令和5年度)は、、文献調査に加えて、各地での現地調査を実施する予定である。現地ではシリア難民に対してコロナ禍における生活状況について聞き取り調査を行うほか、NGO団体などで言語教育、宗教教育に関する活動の参与観察と聞き取り調査を実施する。加えて、こうしたNGOの団体職員や個人の支援者がシリア難民とどのように信頼関係を構築し支援を進めているのかについて聞き取り調査を行うことで、現地の「文化的ファシリテーター」の役割を明らかにする。万が一、covid-19の状況や現地の社会情勢の悪化等により現地調査が困難となった場合は、オンラインでの聞き取り調査を実施する。 また来年度は、さらに積極的な研究成果の国際発信に励む。すでに決定している国内学会での口頭発表ではドイツの難民政策に関して報告する予定である。また、イギリス、ドイツで開催される国際学会ではそれぞれ日本の難民政策に関する報告を行う予定である。さらに、ヨルダンの難民政策に関する日本語論文を投稿するほか、本研究課題の集大成としてシリア難民の再定住の動態に関する地域間比較を行い、英語論文として発表する。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)