Project/Area Number |
22K20221
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
:Education and related fields
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
田邉 尚樹 目白大学, 社会学部, 専任講師 (70963586)
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Project Period (FY) |
2022-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 教育学 / 経験 / 科学 / 元良勇次郎 / 新心理学 |
Outline of Research at the Start |
本研究の中心には、明治期日本において教育学がどのように科学的に確立したのかという問いがある。日本における教育学の科学的な確立のために、人間の経験をどのように科学的に理解するかに関する世紀転換期の議論が展開された。そこで本研究では、世紀転換期における経験に関する議論について、当時の代表的な教育学者に加えて、当時の心理学の第一人者だった元良勇次郎の著作や論稿から明らかにする。 この作業によって、経験を重視する現代の教育について、日本の教育学、ひいては教育における経験の科学的な考え方の確立プロセスから考えることが可能となることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は20世紀転換期の教育学における“経験”に関する教育思想史研究に取り組むものである。これまで、主に教育学史研究や教育学説史研究が描いてきた、教育学の科学化(「科学としての教育学」)の歴史を、“経験”をキーワードに描きなおす可能性を探ることをめざした。そのために、具体的に、次の2点を課題として遂行した。第一に、20世紀転換期の教育学において「経験」がどのような概念言説として使用されていたかを明らかにするため、当時の教育学界をリードした代表的な教育学説を対象に、理論内在的に考察した。その結果として、①「経験」が教育学の科学化のキーストーンであったことを明確にし、かつ、②これまでの教育学史研究や教育学説史研究において見落とされてきた、教育学の基底にある科学(wissenschaft)にアプローチする可能性と方途を明示した。 第二に、20世紀転換期の教育学を、「経験」という概念言説を焦点に、新心理学の視点から対象化することで、近代日本の教育学が科学化する際に選択しなかった未発の契機を浮き彫りにした。教育学の科学化は、いまだ学として存在していなかった教育学が科学として確立するプロセスである。したがって、教育学の科学化の歴史は、「教育学」がすでに存在すると仮定するわけにはいかず、教育学の前史を描き出すことが求められるのである。そのために、本研究では、教育学の前史として、新心理学と教育学の邂逅を教育学史あるいは教育学説史として描いた。具体的には、教育学の科学化を牽引した帝国大学出身の学者らに科学と実験について講じた、元良勇次郎(1858-1912)の新心理学の思想を対象に、教育学の科学化に影響を与えた「経験」の理論を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果は、論文での発表や、書籍の出版を通して公表される予定になっている。本研究課題の計画に鑑みれば、期限内で、史資料収集とその分析、考察を加えて論文や書籍として形にできる見通しが立っていることから、おおむね順調と判断した。 しかし、歴史研究の方法論をとる本研究課題にとって必要不可欠である史料収集が計画通りに進められなかったことに言及しなければならない。理由には史料の所蔵先の都合が含まれるが、それ以外に、時間的な制約などを考慮すると実現可能性が必ずしも高くない計画を組んだことにあると考えられる。延長申請を承認いただき、本研究課題は正規の期間である2年にさらに1年を加えて、現在3年目に入った。上記のように、当初の計画の一部はさまざまな形で社会に還元される予定である。 延長期間にある本年度は、いまだ完了していない史料収集とその分析を行ない、研究成果を発表することをめざしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的には大きな変更はない。だが、課題(問題)の設定を変更し、加えて、収集の必要な史料の選定を改めて精査する。その際最も大きな変更となると考えられるのは、ある一人の人物のライフヒストリーから教育思想を描き出す、教育思想史研究の方法論に忠実に則りながら対象範囲を限定化することである。これまで、本研究課題では、教育思想史研究の方法論に則りながらも、対象となる人物を一人にしぼらず、当時の論争を対象とした論争史研究・問題史研究の方法論をあわせて採ってきた。そのため、研究上の手続きが膨大化、煩雑化したことは否定しえない。 本研究課題の目的を達成することはもちろんだが、研究代表者の置かれる現実的な状況に鑑みながら、すでに発表・刊行の予定となっている研究成果をさらに進展する方向に修正する予定である。
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